ヒップホップ界の超大物ルーキー、トラヴィス・スコットのNY最新ライブレポート

ヒップホップ界の超大物ルーキー、トラヴィス・スコットのNY最新ライブレポート

2015/11/23


トラヴィス・スコット



 

 今年9月4日に満を持して発表されたデビュー・アルバム『ロデオ』がビルボード・ラップ・アルバム・チャートで1位(9月26日付)を獲得するなど世界各国で大ヒットを飛ばし、今最も熱い視線が注がれているヒップホップ界の超大型ルーキー=トラヴィス・スコット。アルバム発売後に発表されたシングル「アンチドート」のMV(https://www.youtube.com/watch?v=KnZ8h3MRuYg)は、ダークかつスタイリッシュなトラヴィス・スコットらしい世界観が見事に表現された作品となっており、既にYouTubeでは2000万回以上再生され、リリース後間もなく開催されたリリース・パーティーでは友人のジャスティン・ビーバーが飛び入り参加するなど各地でのライヴは大盛況を見せている。更に、人気トーク番組「ジミー・キンメル・ライヴ」への出演、さらにカニエ・ウェストとのMV共演やリアーナとの恋仲がゴシップ誌で騒がれるなど、常に話題を振りまいてきたトラヴィスだが、現在彼は「キャント・フィール・マイ・フェイス」「ザ・ヒルズ」といったシングル・ヒットを連発し、今最も注目を浴びている全米No.1シンガー、ザ・ウィークエンドとのジョイント・ツアー『ザ・マッドネス・フォール・ツアー』を絶賛敢行中だ。本ツアー最大のハイライトといっても過言ではないNYのマジソン・スクエア・ガーデンでの大盛況に終わったショーのレポートを早速お届けする。

「アンチドート」MV試聴リンク

https://www.youtube.com/watch?v=KnZ8h3MRuYg  


 ディアンジェロにケンドリック・ラマー。2015年は黒い音楽が高い評価を受け、かつ商業的にも成功したブラック・ミュージック・ファンにとっては嬉しい年だった。新人に近い枠では、夏の終わりに出した最新作『ビューティー・ビハインド・マッドネス』でダークなR&Bという持ち味からポップに振り切り、チャートとセールスでぶっちぎりの強さを見せたカナダのザ・ウィークエンドがいる。その彼が、アリーナ・ツアー『マッドネス・フォール・ツアー』を敢行中、ニューヨークはマディソン・スクエア・ガーデン1日とブルックリンのバークレー・センター2日間、計3日間をソールドアウトにした。オープニング・アクトは、やはり今年の顔のひとり、トラヴィス・スコット。DJブースを頂上に設置した巨大な岩とサボテンを配した面白いセットの間で、最新作の『ロデオ』からの曲を中心に30分、得意のエネルギー全開スタイルでラップを炸裂させた。厭世的で少し退廃的、きれいなメロディーにストリートの生々しい言葉を載せるところがトラヴィスとザ・ウィークエンドの共通点。それが、会場を埋め尽くした20代のファンの心に響くようで、みんなが言葉を重ねる。トラヴィスは今回、ニューヨークいる間に人気のテレビ番組『レイト・ショウ・セス・メイヤー』にも出演、ヒット中の「アンチドート」とザ・ウィークエンドをフィーチャーした「プレイ・4・ラヴ」をパフォームして話題に。

 ツアーの主役、ザ・ウィークエンドことエイベル・テスファイの快進撃には理由がいくつかある。中でも、よく指摘されるのがマイケル・ジャクソンとの類似性だ。ライヴで聞くと、予想以上に近い歌声を出してくる。鼻から抜けるフェイク など、やはり最新作『アンブレイカブル』でところどころそっくりの歌い回しを紛れ込ませた妹のジャネットに肉薄する近さだ。エチオピアの血を引き、ミステリアスな雰囲気をまとい、自分のダメ人間ぶりを自嘲気味にリリックで吐露するけれど、歌声は張りがあって力強く、「マディソン・スクエア・ガーデンの次はヤンキース・スタジアムかな!」と強気な宣言するタイプ。思い切って書けば、ザ・ウィークエンドとは、メンタル面が強くなったMJの再来なのだ。たぶん、ムーンウォークはできないけれど。コンサートの終盤に「DD/イン・ザ・ナイト」と「キャント・フィール・マイ・フェイス」とMJ度が高いダンサブルな曲を持って来て、ガーッと盛り上げてから最大のヒット「ザ・ヒルズ」で締めるあたり、確信犯だろう。そして、そこで我を忘れて大合唱する気持ち良さといったら。トラヴィスもザ・ウィークエンドも人工的な恍惚をテーマにしつつ、音楽だけでそれをもたらす術を持っている。「マッドネス・フォール・ツアー」は、ダークネスも大勢で一緒に共有し、発散させることで救いに昇華させる、今年らしいツアーだった。
池城美菜子

 

リリース情報

デビューアルバム
『ロデオ』
発売中
●CD日本盤
¥2,200(+税)SICP- 4577
日本盤ボーナス・トラック収録

1. Pornography/ポルノグラフィー
2. Oh My Dis Side feat. Quavo/オー・マイ・ディス・サイド feat. クェーヴォ
3. 3500 feat. Future & 2 Chainz/3500 feat. フューチャー & 2チェインズ
4. Wasted feat. Juicy J/ウェイステッド feat. ジューシー・J
5. 90210/90210
6. Pray 4 Love feat. The Weeknd/プレイ・4・ラヴ feat. ザ・ウィークエンド
7. Nightcrawler feat. Swae Lee & Chief Keef/ナイトクローラー feat. スワエ・リー & チーフ・キーフ
8. Piss On Your Grave feat. Kanye West/ピス・オン・ユア・グレイヴ feat. カニエ・ウェスト
9. Antidote/アンチドート
10. Impossible/インポッシブル
11. Maria I’m Drunk feat. Justin Bieber & Young Thug/マリア・アイム・ドランク feat. ジャスティン・ビーバー&ヤング・サグ
12. Flying High feat. Toro y Moi/フライング・ハイ feat. トロ・イ・モア
13. I Can Tell/アイ・キャン・テル
14. Apple Pie/アップル・パイ
日本盤ボーナス・トラック
15. Ok Alright feat. ScHoolboy Q/オーケー・オールライト feat. スクールボーイQ
16. Never Catch Me/ネヴァー・キャッチ・ミー

●配信/輸入盤(全14曲)
発売/配信中
iTunes購入リンク
https://itunes.apple.com/jp/album/rodeo-deluxe/id1031530485?app=itunes&ls=1 
*iTunes、iTunes Storeは、Apple Inc.の商標です。

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