人気のシンセサイザー2モデルの違いを公認インストラクターが動画で解説
ローランド「FA-06」VS「JUNO-DS」
あなたにピッタリのモデルはコレだ!【動画解説付き】
ローランド「FA-06」VS「JUNO-DS」あなたにピッタリのモデルはコレだ!
2016/09/29
ローランドの人気シンセサイザー「FA-06」と「JUNO-DS」。シンセを購入したい人にとって、両者の違いはかなり気になるところでしょう。実際に楽器店などでは「見た目以外に何が違うの?」と質問されるケースも多いようです。そこで今回、ローランドの公認インストラクター宇都圭輝さんをお招きし、「音色」、「操作性」、「各種機能」という切り口で、実際に各モデルのデモ演奏を行なって頂きました。この記事&動画を見れば、きっとあなたにピッタリなモデルが見えてくるはずです。
文:平沢栄司
比較ポイント:音色について
●音色
動画でも確認できるように、FA-06とJUNO-DSにはどちらも即戦力として使える定番のプリセットが数多く内蔵されています。
まず、FA-06ではJUNO-DSにはない「SuperNATURAL」音源による各種トーンの存在がアドバンテージです。動画にもあったように、例えば、ピアノならば立ち上がりでハンマーがヒットしたときのニュアンス、オルガンならばドローバーによる本格的な音作りや回転スピーカーの効果、ギターであればコードを弾いたときに自動的に6本の弦がズレて発音して「ジャラン」と鳴るニュアンスなども簡単に再現可能です。
一方、両機に内蔵されるPCM音源によるピアノ、シンセ、ブラス、ドラム、SEなど、ライブパフォーマンスで威力を発揮するサウンドはJUNO-DSも負けてはいません。中でも、新規に追加された高品位なアコースティックピアノのサウンドは、FA-06とは異なる魅力的な音色の1つです。また、JUNO-DSでは、ボコーダーやオートピッチなど内蔵のボーカル・エフェクトがボタン1つですぐに呼び出せる点はライブに向いているポイントです。
FA-06でオルガンのハーモニックバーを調整しているところ。FA-06の「SuperNATURAL」音源では、このようにかなり細かなサウンドのニュアンスまで表現できるのが特徴だ。
★まとめ
ライブなどで使うにはJUNO-DSの音色もかなり良いが、音色の細かな表現にまでこだわりたい人にはFA-06がオススメ!
比較ポイント:音色の呼び出し方、操作性などについて
●音色の選び方
続いて、FA-06とJUNO-DSの音色の選び方を見ていきましょう。実は両モデルともにパネルに並んでいるカテゴリーボタンで音色を素早く呼び出せる点は同じです。各モデルとも音色をリスト表示することができるのですが、強いて言えば、FA-06では “大画面で一度に多くの情報が確認できる点” がアドバンテージと言えるでしょう。
JUNO-DSの音色カテゴリー。DRUMS/PERCUSSIONからSAMPLEまで、9つのカテゴリーボタンが用意されている。
こちらはFA-06の音色カテゴリーボタン。JUNO-DS同様、DRUMS/PERCUSSIONからFX/OTHERまで9つのカテゴリーが用意されている。
●演奏モード
どちらのモデルも、本体の「DUAL/SPLIT」ボタンを押せば、いま呼び出している音色に2つめのトーンやパッチを重ねたり、鍵盤の高域/低域に音色を振り分けることが可能です。
また、2つ以上の音色を組み合わせることもできます。例えば、FA-06では「DUAL/SPLIT」ボタンを同時押しして「マルチ・モード」に切り換えると、最大16パート分の音色を自由に鍵盤へ割り当てることが可能です。同じ音色や異なる音色を重ねたりスプリットしながらきめ細かなセッティングが行なえます。
一方、JUNO-DSでは、「DUAL/SPLIT」ボタンの隣にある「SUPER LAYER」ボタンに注目です。スーパーレイヤーは選んでいる音色をいくつも重ねて厚みを出す機能で、簡単な操作でライブ向きの重厚なサウンドが演奏できます。なお、パフォーマンス・モード時に、DUAL、SPLIT、SUPER LAYERが選択されていない場合は、FA-06のマルチ・モードと同様の「16パート・モード」となり、きめ細かな設定も可能です。
●フェイバリット
気に入った音色やDUAL/SPLITで組み合わせた音色は、「フェイバリット」として保存して、いつでもワンタッチで呼び出すことができます(1バンクにつき10個のお気に入りを登録でき、10バンクあるので最大で100個の音色を登録することが可能)。
なお、FA-06では「スタジオ・セット」として保存した音色の組み合わせをパネル右側のパッドを使って瞬時に切り換えることもできます。しかもこのとき、発音中の音色の余韻などは残したまま次の音色に切り換わるので、素早い音色チェンジが必要な曲でも音が途切れることがありません。ライブで様々な音色を使いこなしたいなら、FA-06 の「スタジオ・セット」は欠かせない機能と言えるでしょう。
★まとめ
カテゴリー別のボタンから素早く目的の音色にアクセスし、そこから、DUAL/SPLITボタンを押せばもう1つの音色を重ねたりそれぞれを鍵盤に振り分けることも可能。また、それらの音色の組み合わせを保存するスタジオセットやパフォーマンスモード、そして、好みの音色やライブで使う音色をピックアップできるフェイバリットなど、JUNO-DS、FA-06の違いはさほどなく膨大な音色をスムーズに使いこなせるように考えられています。しかし、FA-06の画面はカラーでサイズも大きいので、音色選びなどの操作の際に表示される情報量が多く、ワンランク上の操作感が得られるのがアドバンテージと言えます。
比較ポイント:各種機能について
●音色のエディット
まずは音色のエディットに関して見ていきましょう。JUNO-DSは、オーソドックスなシンセパラメーターなので比較的初心者でもエディットに挑戦しやすい印象です。ただし、モノクロの画面はやや見にくいかもしれません。それに対して、FA-06はカラー大画面の威力は絶大です。視認性の良さ、同時に表示されるパラメーター数など、非常にエディットしやすいです。
●演奏中の音色モディファイ
今度は、FA-06とJUNO-DSの演奏中の操作性に関して比較してみましょう。
まず、FA-06には6つのツマミがあり、可変できるパラメーターのグループが4つあるので合計24種類のパラメーターをモディファイできます。JUNO-DSが4つのツマミ×3グループで12種類なので、モディファイ可能なパラメーター数は2倍となっています。エフェクト関係の調整パラメーターが増えていて、割り当てるパラメーターが選べるアサイナブル用のツマミも2つ多い点がアドバンテージです。
一方のJUNO-DSは、音色モディファイの4つのツマミとは別に4つのスライダーがあり、アッパー、ロワー、フレーズ・パッド、マイクのレベル調整が素早くできるのがポイントです。ライブ演奏などでは、瞬間的に音量を調整したいこともあるため、あらかじめアサインしなくてもすぐに調整できる点がJUNO-DSのアドバンテージとなるでしょう。
●エフェクト
エフェクトに関しては、下記を見比べてみるとわかるように圧倒的にFA-06がエフェクト数が多く、かつ高品質なものが用意されています。もちろん、JUNO-DSのエフェクトのクオリティも高いのですが、例えばドラム・パート用のコンプやEQ、マスターEQ、トータル・エフェクトなど、FA-06には最終的なサウンドのクオリティを高めるエフェクトが装備されている印象です。ライブでパッと使えて簡単に調整したいならJUNO-DS、音作りや曲作りで凝ったセッティングをしたいならFA-06といった感じです。
【FA-06】
・マルチエフェクト:16系統、68種類
(Vocoderはパート1のみで使用可能)
・パートEQ:16系統
・ドラム・パート用COMP+EQ:6系統
・コーラス:3種類
・リバーブ:6種類
・マスター・コンプレッサー
(インサート・エフェクト(78種類)に変更可能)
・マスターEQ
・トータル・エフェクト(TFX):29種類
・マイク・インプット・リバーブ:8種類
【JUNO-DS】
・マルチエフェクト:3系統、80種類
・コーラス:3種類
・リバーブ:5種類
・マイク・インプット・リバーブ:8種類
●オーディオ・ファイルの再生、サンプラー機能、カラーパッド
JUNO-DSとFA-06には、いずれもオーディオ・ファイルを再生する機能が用意されています。FA-06はSDカードを波形メモリーとして使用し、16パッド×4バンクにサウンドを割り当てる仕様。一方、JUNO-DSはUSBメモリを使用し、8つのパッドに割り当てて再生する仕様となっています。
ちょっとしたフレーズやSEなどを読み込んで鳴らす程度ならJUNO-DSでも十分に対応でき、FA-06はパッド数が多く編集の自由度も高いので、オーディオを使ってリアルタイムでパフォーマンスしたり、本格的に曲作りにサンプルを活用したい人に向いています。
なお、JUNO-DSの8つのパッドは、サンプルを再生するだけではなく、鍵盤を弾いた際のベロシティに応じてカラフルに点灯するのもポイントです。カラーのバリエーションは13種類から選択することができ、ライブパフォーマンスでもひと際目を引くこと間違いなしです。
比較ポイント:サイズ、重量、ボディカラーなどについて
●サイズ、重量、ボディカラー
FA-06とJUNO-DSは大きく重いというシンセの常識を覆した軽量ボディが自慢です。そして、それぞれを細かく比較すると下記のようになります。
・FA-06:1008 x 300 x 101(mm)= 5.7(kg)
・JUNO-DS:1008 x 300 x 97(mm)=5.3(kg)
●実売価格
最後に両モデルの価格についてです。いずれもオープンプライスですが、市場の相場を調べてみると、おおよそFA-06が13万円前後、JUNO-DSが8万円前後です。FA-06はJUNO-DSの約1.5倍のお値段ということですね。「SuperNATURAL」音源、カラーの大画面、ワークステーション機能(シーケンサー)、サンプラー機能、この辺りがFA-06とJUNO-DSの大きな違いですが、機能的にはどれも魅力的です。
★「あなたにぴったりのモデルはこれだ」
最後に各モデルがどんな人に向いているのか、個人的な見解も書いておきたいと思います。ここまで紹介してきた通り、スペック的にも価格的にもFA-06の方が上ですが、JUNO-DSにも魅力的な機能が数多く用意されています。
ずばり、あなたがライブ演奏のみの目的でシンセが欲しいのであればJUNO-DSがオススメです。ただし、曲作りをしたり、レコーディングをする可能性がある人は、FA-06の購入を検討するべきです。「SuperNATURAL」音源、サンプラー、シーケンサーなど、FA-06には将来的に可能性が広がる機能がJUNO-DSよりも搭載されています。
JUNO-DSが向いている人
・よりシンプルな操作で演奏を楽しむ
・バンド演奏のために予め作り込まれた音色をダウンロードで手に入れられる
・電池駆動でどこでも弾ける
・音色拡張スロットを装備(1つ)
・USBケーブルでPCと接続、オーディオ/MIDIインターフェースとDAWコントロール機能
FA-06が向いている人
・シンプル操作でありながらも、複雑なアプリケーションにも対応できる
・完全プロ仕様、深くエディットも可能なRolandシンセ最高峰のSuperNATURALサウンド
・DAWに匹敵するトラックメイクをFA本体だけで実現
・音色拡張スロットを装備(2つ)
・USBケーブルでPCと接続、オーディオ/MIDIインターフェースとDAWコントロール機能
・みんな持ってる”JUNO"よりワンランク上のキーボードで注目されたい
「FA-06」と「JUNO-DS」の主なスペックの比較表
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