「MASCHINE JAM」を使いこなすドイツ出身の注目株
驚異的なフィンガードラムで話題沸騰のアーティスト、junk-E-cat。「MASCHINE JAM」を愛用する理由をインタビュー!
驚異的なフィンガードラムで話題沸騰のアーティスト、junk-E-cat。「MASCHINE JAM」を愛用する理由をインタビュー!
2016/11/30
8×8=64個のパッドと8本のタッチストリップを装備し、楽曲制作からライブパフォーマンスまでに活用できるNative Instruments「MASCHINE JAM」。今、この「MASCHINE JAM」を使ったパフォーマンスで、世界中からSNSを中心に注目を集めているアーティストがいるのをご存知だろうか? その名はjunk-E-cat(ジャンキーキャット)。今回、TuneGate編集部は、ドイツから来日中という彼を直撃取材することに成功した。果たして、彼はどのようなパフォーマンスを行なっているのだろうか。と、その前に、まずは彼の代表曲「Quintessence」でのパフォーマンス動画をチェックしてみてほしい。
──映像にある「Quintessence」という曲での機材のセットアップについて教えてください。
junk-E-cat:私のシステムの特徴はNative Instruments「MASCHINE JAM」を核にしていることです。エイブルトン「Live」のプラグインとして「MASCHINE」を起動し、「MASCHINE」で選んだ音色を直感的に「MASCHINE MIKRO」や「MASCHINE JAM」で演奏できるようになっています。また、サックスに関しては、マイクで音を拾ってLiveの“Looper”というプラグインでループさせていて、Liveをコントロールするためにコルグの「nanoKONTROL 2」も併用しています。ですからオーディオパート以外の私の曲の90%を占めるビート、ベース、コード感のあるサウンドは、すべて「MASCHINE JAM」で構築していると言えます。ちなみに、今日は持って来ていませんが、映像ではベリンガーのフットコントローラーも利用しましたね。
junk-E-catのパフォーマンス用セットアップ。写真右奥からNative Instruments「MASCHINE JAM」、「MASCHINE MIKRO」、コルグ「nanoKONTROL 2」。MacBookにはエイブルトン「Live」上から「MASCHINE」を起動。一番手前のサックスはKeilwerth SX90R Siver Starだ
──そもそも、junk-E-catさんはいつ頃からこのシステムを組むようになったのですか?
junk-E-cat: 発売された今年からです。実は、それまでにも「MASCHINE MIKRO」や「MASCHINE MK2」を使っていて、エイブルトンの「Push」を併用したシステムも検討していたんです。でも、実際に「MASCHINE JAM」に触れてみて非常に使い勝手が良いと感じて。
──それはどんな点でしょうか?
junk-E-cat: 一番大きなポイントは、パターンのオンとオフがすぐにできるということです。「Push」も素晴らしい製品ですが、自分が触った限りでは 「MASCHINE JAM」の方が操作性が良いと感じました。あと、色々なエフェクトが同時にかけられる「Smart Strips(スマートストリップス)」も大変気に入りましたね。(※「MASCHINE JAM」のフェーダー部分は、8つを総称して「スマートストリップス」と呼んでいる)
──では、具体的に「MASCHINE JAM」を使ったパフォーマンスの手順を教えてください。
junk-E-cat:まずはまっさらなプロジェクトを立ち上げて、パターンを入力するために「MASCHINE JAM」で空のパッドを選択します。「Quintessence」では2小節のパターンから始めていますが、私は4小節のパターンを基本とすることが多いですね。1つパターンができたら、また「MASCHINE JAM」で別のパッドを選択してレイヤーさせて追加して行きます。パターンをデュプリケート(複製)させて音色を重ねることもあるのですが、こういった操作も「MASCHINE JAM」では素早く行なえるので助かります。
まずは「MASCHINE JAM」で空のパッドを選択する
続いて、「MASCHINE MIKRO」の「REC」ボタンを押す
準備ができたら演奏をスタート
同様の手順で、パッドに様々な演奏をレイヤーしていく
──映像を拝見したところ、「MASCHINE JAM」のフェーダー部分(タッチストリップ)でも音を入力されていましたよね? あれはどうやっているのですか?(※「MASCHINE JAM」のフェーダー部分は、個別の呼称として「タッチストリップ」が用いられる)
junk-E-cat:「MASCHINE JAM」のノート機能に「Chord」というモードがあるんですよ。それを使って、タッチストリップにあらかじめ好きな和音をアサインしておいたんです。なので、フェーダーをピアノのように弾くこともできるし、なぞってコードを鳴らすこともできます。「Quintessence」の出だしでは、1度、5度などを弾いてますね。
──使用するピアノやドラムキットなど、音色に関する仕込み作業はどうされているのですか?
junk-E-cat:特にルールはないのですが、「Quintessence」ではKOMPLETEに収録されている「UNA CORDA」のピアノを使いましたね。この曲に関して言えば、「UNA CORDA」で演奏して、それに合いそうなドラムキットを事前に準備したんです。でも、パターンの内容までは細かく仕込んではいません。パターンに関しては、あくまでもその場でリアルタイムに演奏して行きます。クオンタイズもかけません。
──わかりました。プレイに関して言えば、フェーダーでフィルターなどもかけていましたよね?
junk-E-cat:そうですね。「Smart Strips」(8つのフェーダー)で「Perform FX」をかけています。私はスタッター・エフェクトが一番のお気に入りなのですが、ここで1つテクニックをご紹介しましょう。実は「MASCHINE JAM」のデフォルトの設定では、1つのグループに1つのエフェクトしかかけられないんです。なので、例えばBとCの両方のグループにエフェクトをかけたい時は、BのアウトプットをCのインプットに事前にルーティングしておくんです。これで、2つのグループに同時に「Perform FX」がかけられるようになります。
──なるほど。
junk-E-cat:あと、「Smart Strips」でエフェクトをかけた時に、「MASCHINE JAM」では指を離すとパラメーターの位置が瞬時に戻ってくれるのもありがたいです。他社の機種では、エフェクトがかかりっぱなしになることもあって、それだと困ったことになりますから。
「MASCHINE JAM」の8本の「Smart Strips」を使ってエフェクト(スタッター)を操る様子
──さて、「Quintessence」ではサックスもプレイされていますよね。
junk-E-cat:はい。今日も撮影のために持って来ていますよ。Keilwerth SX90R Siver Starというドイツのもので、本当はゴールドなのですが、私はシルバーのを使っています。
──なぜシルバーのモデルを?
junk-E-cat:音が大きくて、個人的にもよりサウンドに広がりを感じたからです。
──そうなんですね。junk-E-catさんと言えば、サックスも見事ですが、フィンガードラムの腕前もピカイチですね。
junk-E-cat:ありがとうございます。
──フィンガードラムを上手くやる“コツ”などがあれば教えて頂きたいのですが。
junk-E-cat:映像をじっくりと見てもらうとわかりますが、私の場合、ドラムの音色を縦のパッドの列にあらかじめ配置しているんですよ。一般的にドラムキットの音色は、鍵盤などで入力する場合、横に並んでいますよね。でも、私は縦の列でキットを組んでいます。もし、横の列でしか演奏できない製品の場合は、グルッと90度回転させて使えばいいし(笑)。
──相当昔からフィンガードラムをしているのですか?
junk-E-cat:いえ、3年間です。皆さんも練習すればできるようになりますよ。
──わかりました。では最後に、今後「MASCHINE JAM」を使ってどのようなパフォーマンスをしていきたいか。あらためて抱負を教えてください。
junk-E-cat:「MASCHINE JAM」を中心にしたセットアップは非常にコンパクトです。なので、ストリートやクラブなど、どこにでも持ち運びしやすいですよね。今回は日本にシステムを持って来ましたが、他の国にも行ってみたいですし。junk-E-catとしては、今は小さい子が玩具屋さんで遊んでいるような感覚なので、最終的にどんなことになるかわかりません。でも、目指しているのは色んな方にインスピレーションを与えたり、楽しんでもらうことです。なので、ぜひ私の今後の活動に注目してください。
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