──二人は曲を聴いてどのような印象を受けましたか？

莎奈：デモと完成形とではだいぶ印象が変わりました。デモは未緒さんが言った通り、ワンコーラスだけでラップがなかったし。でも、最初に出来上がったフルもラップがないバージョンもありませんでした？

未緒：そうだっけ？

莎奈：俺、曲を聴いた時「違うな」って思った記憶があるんですよ。記憶違いかな（笑）。後はアウトロが短くなったりだとか、他にも色々な変化がありました。今こうやって聴くと、「だいぶ派手になったな」という感じがして。本当はもっとシンプルで、リズムの変化もそこまでなかったんです。楽曲のリズムなどで、ダイナミクスを付けるとかではなく、本当に演奏でやっていくしかない、誤魔化しが効かない大人な感じだなと（笑）。

──LiNさんは？

LiN：みんなが候補曲をたくさん作ってデモを出している時、俺もメチャクチャ忙しいわけじゃないですか。だから他のメンバーのデモは聴いていないです。

莎奈：LiNさんは本当に人の曲を聴かないんです（笑）。

LiN：選曲会の朝に流し聴きする程度で、ちゃんとは聴かないんです、俺。選曲会の時に初めてちゃんと聴くという。そんなに深くは曲に入り込まないんです。

全員：（笑）

──それで大丈夫なのでしょうか？

LiN：何と言うか、1曲1曲に情が湧いちゃうので。

未緒：初見の新鮮な気持ちに大事にしたいと？

LiN：そうです！　ペットショップの猫って触れられないじゃないですか。基本は、ガラス越しに「あー可愛い、可愛いな」って見るだけ。それを実際に手で触れてしまったら、そりゃあ、その猫が一番可愛く見えちゃう。全部触るのも良いんだけど、それは選曲会の時で良いという考え。

莎奈：曲を猫に例えるって変な感じするなぁ（笑）。未緒さんと俺は割と聴くんですよ、曲を覚えるくらい。

未緒：うん、俺はDropbox（データの共有が行なえるオンライン・ストレージ・サービス）の通知が来たら、すぐ聴く。

LiN：俺は逆に、バンドって5人でやってるじゃないですか。「多分これだろうな」っていう4人の会話が聞こえたりもするんですけど、その会話には入らない（笑）。

莎奈：デモ曲って、それぞれの名前や仮タイトルに加えてナンバリングがされているんです。それで選曲会の時に「誰々の何番が良い」とか会話をするんですけど、LiNさんは聴かないから良い曲が何番なのかがわからないという。まず、それの説明から入るんですよ。

LiN：よりゴージャスになったり、アレンジが複雑になったりとは思うんですけど、曲自体の形が変わったとかは俺わかんないんですよ。ちなみに、一つ良いですか？

──どうぞ。

LiN：俺、未緒さんの真似をして “LiN00（数字）” っていうナンバリングをしているんです。それと、変な仮タイトルばかりを付けていて。だから、番号だと分からないけど、仮タイトルだと分かるんです。その影響かみんな仮タイトル付け始めたでしょ？

未緒：俺も自分の曲かどうかが分からなくなってきたんですよ。

莎奈：俺も元々仮タイトルは付けていましたよ。

LiN：でも、俺の真似して変なの付け始めたのは最近でしょ？

莎奈：アフロの話ですか（笑）。

LiN：おかしいんですよ。今回の選曲会に「アフロ」が付く曲が3曲入っていて。

──分かりづらいですね。

莎奈：「チュリップ」の仮タイトルは「アフロなのに繊細」。

LiN：「A Little Picture」もありましたよね。

未緒：「アメリカに自分探しの旅に行くヤツ」。

LiN：「くじらのゆめ」は「君の瞳にレッドブル」でした。「瞼に残光、」は何だっけ？

莎奈：「夕立」でした。

──それぞれ思い思いの仮タイトルを付けられたのですね。では、レコーディングで心掛けた点は？

未緒：俺はほとんど何も気にかけていないんです。ドラムが気持ち良く一定のリズムを叩いてくれて、ベースはベチベチずっと言ってるみたいな。ギターに関してはオシャレな感じで。例えると80年代のAOR、さらに言えば “杉山清貴&オメガトライブ“ といった日本のAORのヴィジュアル系バージョンを意識しました。というのも、最初からギターがそんなに前に出ちゃダメな曲だと思ったので。だから「隙間を埋めるようなチャキチャキとした音が両サイドにあればいいや」ぐらいでした。

──LiNさんに対しての要望は？

未緒：LiNさんは元々そういうクランチを使ったフレーズが得意なので、ある程度だけ弾いておいた状態で渡して。カッコ良くしてくれるだろうと。

LiN：でも、未緒さんが弾いてくれたフレーズをもとにしていて、ちょっとだけいじった程度です。未緒さんも言っていましたが、曲調的に目立たない方が良いかなと。なので今回はバッキングに徹しました。

──莎奈さんは？

莎奈：結構シンプルだったので、自分の中にリズムを入れることが大事だと。とにかく同じパターンが続くので、体になじむように練習でひたすら叩き続けていました。最近、なじませてから叩くのと、譜面見ながら叩くのとでは違うなというのをやっと気付いたりもして。