──では、自分でも曲作りを行っているクリエイターに向けて、最後にメッセージをお願いします。

土岐：今回の制作で、私もトオミさんも、1曲ごとに明確なゴールみたいなものを見据えながら曲を作っていったんです。でも同時に、そうはならない面白さも楽しんでいました。たとえば、「Fancy Time」は、私の中でいわゆる往年のシティ・ポップに通じるサウンド感をイメージしていたので、生ドラムにしたいと思っていたんです。でも、トオミさんが最初に打ち込んだリズムが、人では叩けないような、打ち込みならではの面白いグルーヴがあって、これはこれで貴重なリズム感だよねということで、結局、打ち込みにしました。こういうことって、1人で作っていたら起きないことですよね。

──そうかもしれないですね。

土岐：「脂肪」という曲も、最初にG.RINAさんから届いたデモが、私が書いた歌詞にメロディとコードを乗せただけの、とてもシンプルなものだったんです。じゃあ、アレンジをどういう方向性にしようかと考えて、マイケル・ジャクソンの「Rock With You」みたいな感じがいいなと、トオミさんと話したんです。でも後日、トオミさんから「全然違うものになりました」と、今のアレンジが届いて（笑）。

──ある程度方向性はあるけれども、それだけには縛られない自由度があったんですね。

土岐：はい、そうやって「何風なんだか分からないけど、面白い」というものを追求したのが、今回のアルバムです。今まで “シティ・ポップ” と言うと、サウンド的なオマージュとして “シティ・ポップ風” に仕上げるといったイメージがありましたけど、今回はそこに拘らずに、好きだと思えるものを作った結果、リスナーから支持していただける “シティ・ポップ” を作れたと思っています。音楽を作っている皆さんにも、そういった部分を楽しんでいただけたら嬉しいですね。

──まさに “今” という時代に土岐さんが開拓した “今のシティ・ポップ” ですね。

土岐：以前、武部聡志（作編曲家／プロデューサー）さんがおっしゃっていたんですが、かつてミュージシャンは、皆がスタジオで制作をしていて、すると必ず隣のスタジオに誰か知り合いがいて、「じゃあ1曲参加してよ」とギターを録ったり、セッション的に音楽を作っていたらしくて。それがスタジオ黄金期の醍醐味だったわけですが、今では形が変わって、皆が自宅で作業をするようになりました。でも、今回のアルバムではそうした宅録的な環境の中で、昔のようなセッションができたんじゃないかなって、そう思っています。

──とても興味深いお話、ありがとうございました。4月から始まる全国ツアー「TOKI ASAKO LIVE TOUR 2017“ POP UP PINK！”」も楽しみにしています。

土岐：今回のアルバムは、ライブでの再現性といったところはまったく考えずに作ったんですが、次のライブでは、このサウンドを同期なしで、すべて生演奏でやろうと思っていて。私自身、どんな感じになるのか、とても楽しみにしています。