5年ぶりとなるオリジナルソロアルバム
デーモン閣下『EXISTENCE』インタビュー
デーモン閣下『EXISTENCE』インタビュー
2017/03/27
──日本語の文章ではあるけれども、内容も符割も何もかもデタラメな状態で?
デーモン閣下:いや、符割とメロディはなるべく合わせる。ただし内容のつじつまは超テキトーだ。するとな、だんだんと仮歌でウケを狙うようになってくるんだな(笑)。みんなを笑わそうと、本チャンでは絶対に歌わないような卑猥な言葉を入れてみたり(爆笑)。そうなると、「これじゃ曲の善し悪しを判断できない」と、これまた不評で、「もっと真面目に仮歌を歌え!」っていうことになってだな(笑)、それ以降は、仮歌と言えども、ちゃんとメロディに対して言葉の数を勘定して、曲の最終形が見えるように、一応は文章的にも繋がっている仮歌を作るようになって、今もそれが続いているというわけだ。あとは、「ここがカタカナ単語ならどう聴こえるかな?」とか、「ここに英語が乗ったらどうなるかな?」といったことも試したり、非常に建設的な仮歌だな(笑)。「明るいメロディに暗い言葉を乗せるとどう聴こえるか?」といった実験や、サビで印象に残る短いセンテンスを探したりと、仮歌と言えども、吾輩は真剣に考えて取り組んでいる。仮歌は、とても大事だからね。
──一方で、本作には閣下以外にも、熱心な聖飢魔II“信者”として知られる芥川賞作家の羽田圭介氏、コラムニストのブルボン小林氏、マンガ「テラフォーマーズ」の原作者である貴家悠氏が、それぞれ詞を書いていますが、彼らの詞はいかがでしたか?
デーモン閣下:3人とも個性的な詞で、とても面白かったな。この企画、やってよかったと思っているし、最初に歌詞だけがあって、そこにゼロからメロディを付けるという作業を本格的にやったのは、ひょっとしたら初めてかもしれない。ただ、人が書いた歌詞に鼻歌的にメロディを付けていっても、やっぱり自分が歌を作る時の癖というか、メロディやコードの進み方なんていうのは、自然と出てくるもんだな。
──そうやって作り上げた曲を歌う際、ヴォーカリストとして、どういった点に重きを置いているのかを教えてください。
デーモン閣下:当然、音程とリズムが正しいという最低限のことができている前提だと、言葉がきちんと聴こえるかどうか。何を歌っているのか分かるように歌うことだな。吾輩は、たぶん子音が強いはずなんだ。だから、ライヴの時は、すごく唾が飛ぶし(笑)。
──なるほど。子音の発声が重要なんですね。
デーモン閣下:聖飢魔IIのような、ハードロック/ヘヴィメタルといった音楽では、大音量に負けないようにパワフルに歌うことはもちろん大事なんだけれども、その時に陥りがちなことが、喉や腹の底から“うぉーっ!”と太い声を出すことを重視しすぎて、何を言っているのか分からない歌になってしまうこと。たぶん、吾輩もそういった時期があったんだと思うが、ライヴの録音を聴いて、「もっとはっきり発音しないと、大音量の中では言葉が聴こえない」と感じたんだろうな。そこは年々意識するようになったし、ハードロック/ヘヴィメタルバンドで歌うが故の工夫だったんだと思う。母音を中心に歌って、ガラガラ声になってしまうアマチュアは多いからね。
──そのように歌うには、どういう練習をすればいいのでしょうか?
デーモン閣下:口(の開け方)だろうね。いかに口を大きく開けて歌うか。静かな曲でも、大きく口を開けて歌うと、随分と歌の聴こえ方が変わってくる。吾輩も、リハーサルではしばしば、すごく静かな曲でも意識的に口を大きく動かして歌うようにしている。ステージで、すぐに明日からできることではないから、そういう日々のトレーニングは必要だ。
──それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。
デーモン閣下:音楽が、曲単位で手軽にダウンロードをして聴ける時代になったけれども、「EXISTENCE」はそんな時代になっても、1曲目から、この曲順で聴くと面白いよということにこだわって作ってたアルバムだから、可能であれば、提示された曲順で聴いてもらえると嬉しいな。もうひとつは、音楽制作には、曲を作る、詞を書く、アレンジを考えるといったいろんな作業があるけれども、そこに“自分らしさ”を盛り込む作業って、すごく難しい。だけれども、一所懸命に考えて作っていけば、“自分らしさ”“自分ならでは”という部分は自然と曲に出てくるものだから、個性的な音楽を作りたいと思っているクリエイター諸君は、「一所懸命に考えて作ればいいんだ」ということが、このアルバムを聴いてもらえれば分かると思う。吾輩も、キャリアに関係なく、一曲ごとに時間と能力の許す限りとことん工夫し、考えて作っているから、「こんな音が入っている」「こういう手があるのか」っていうヒントが、このアルバムにはたくさん転がっているんじゃないかな。
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