坂本龍一 8年ぶり新作の全貌がここで明らかに

ワタリウム美術館で『坂本龍一 | 設置音楽展』が本日(4月4日)スタート!

ワタリウム美術館で『坂本龍一 | 設置音楽展』が本日(4月4日)スタート!

2017/04/04


東京・ワタリウム美術館で4月4日から一般公開される企画展『坂本龍一 | 設置音楽展』のプレス向け内覧会が1日(土)同美術館にて開催された。この展覧会は、坂本龍一の8年ぶりの新作アルバム『async』(3月29日日本先行発売:4月28日世界発売)の世界を音と映像、インスタレーションで多角的に紹介するもの。

まず、坂本龍一自身が制作・監修した、アルバム『async』の5.1チャンネル・サラウンドの特別ミックスに、坂本龍一と長年に渡るコラボレートを行なってきた芸術家の高谷史郎による映像を付加した試聴室「drowning」(同美術館2F)に加え、ニューヨークの新進気鋭の若手映像チーム“Zakkubalan”が、アルバムの制作環境を坂本龍一のプライベート空間の映像とそこに響く音で仮想的に再現した「volume」(3F)、そして世界的に注目されるタイ出身の映画監督、映像作家のアピチャッポン・ウィーラセタクンがアルバム『async』からイメージした映像(音は坂本龍一によるこの映像のためのリミックス・ヴァージョン)を上映する「first light」(4F)と、さまざまな角度からアルバムを紹介している。

内覧会では質疑応答の時間も設けられ、坂本龍一は8年ぶりの新作『async』について自身の言葉で多くを語った。

2014年、中咽頭ガンを患い、その療養の過程で、それまで作り貯めていた新作アルバムの素材を破棄し、構想も一度ゼロに戻したこと。

2015~2016年の、山田洋次監督の『母と暮せば』、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の『レヴェナント:蘇えりし者』、李相日監督の『怒り』の3本の映画のサウンドトラック音楽の制作で見えてきたもの。

アルバム・タイトルの『async』=『非同期』に表れているよう、あえてリズムやテンポを「同期」させず、ズレを重視することによって、音楽や社会が本来持つ多様性を表現できるのではないかという以前からの考えを反映させたこと。

ニューヨークや東京の街中、あるいは自然の中で採集した現実音やノイズを多用することで、さらに人間という存在や世界の多様性をも音楽に取り込みたかったこと。

2011年の東日本大震災や自身の病気によって得た衝撃や死生観と、新作へのその影響のこと。

これら、新作にまつわる考えや過程を質問に答えるという形で丁寧に答えていき、最新の作品の誕生に至るストーリーと背景をつまびらかにしていった。

会場内では、その新作『async』の制作に影響を与えたもの、ヒントになったものである書籍や映画DVD、そして自筆の楽譜や落書きも含むメモなども展示され、各階で音楽を聴いた後に見るとさらに楽しめる構成となっている。

そして、ただ自身の世界を一方的に展示するだけでなく、1Fの受付脇には聴き手との双方向のコミュニケーションのための「コミュニケーション・ウォール」を設置。来場者は会場の展示で感じた『async』に対する感想や質問を自由に用紙に書き込み、その場に貼り付けられる。それらの感想や質問はニューヨークの坂本龍一のもとへ送られ、坂本龍一からの返答もまたそのウォールに貼り付けられ、公式サイト(http://www.skmtcommmons.com)でも紹介される予定になっている。

人生初という大病によっていったんリセットされ、その療養を経て2016年4月から再スタートした8年ぶりの新作ソロ・アルバム『async』は坂本龍一にとって特別な作品となった。

マスコミや関係者にも事前に音を聴かせないという手法はプロモーションとして異例すぎるという声もあった。

だが、「最愛の存在は気軽に人に紹介したくないというような気持ちで、発表まで誰にも聴かせなかった」と語る坂本龍一は、だからこそ、こういう特別な方法で「最愛の存在」を特別にお披露目したかったとも言う。

「聴かせたくなかった」という事前の手法と真逆の、アーティストの制作過程の内面が丸裸になっているとも言えるこの『坂本龍一 | 設置音楽展』は、最新作『async』のみならず、音楽家・坂本龍一自身がいま内に抱えるすべてを全公開した異例の展覧会となった。


<坂本龍一 | 設置音楽展>
会期:2017年4月4日(火)~5月28日(日)
休館日:月曜日
開館時間:11:00~19:00(毎週水曜日は21時まで延長)
入場料:大人 1,000円/学生[25歳以下] 500円/ペア券:大人2人 1,600円
会場:ワタリウム美術館


 

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