“未来=Future” は「バンドであり続けること」
橘高文彦(筋肉少女帯)『Future!』インタビュー
橘高文彦(筋肉少女帯)『Future!』インタビュー
2017/11/06
──今作では橘高さん作曲による楽曲が3曲収録されていますが、どのようにアプローチしていったのでしょうか?
橘高:まず「わけあり物件」は、これから出るパチスロ「闇芝居」のテーマソングで、テレビアニメとしても人気の作品なんですよ。パチスロメーカーのプロデューサーさんから「テーマソングを書き下ろしてくれないか」というお話をいただいて作った楽曲なんです。実はそのプロデューサーさんが “橘高メタル信者” みたいな方で、「橘高さんのあの曲とあの曲、それとあの曲のこんな感じで...」という忌憚のないオファー内容でした(笑)。実際、本人的には一曲一曲ベクトルが違ったりするんだけど、「なるほど、分かりました」と返事をして。それからアニメ作品の映像を送ってもらったりしながら、自分の中でホラーメタルみたいなものを、海外をイメージして。それから「闇芝居」なので “ジャパニーズ・ホラーメタル” みたいな感じで置き換えて作り始めました。
──歌詞と曲のどちらを先に作るのでしょうか?
橘高:筋少の楽曲は基本的に曲先行なんです。大槻君は物書きの人だから歌詞先行に思われがちなんですけど、9割5分ぐらいは曲が先かな。だから曲のイメージをもとに歌詞を書いているから上手くリンクするし。逆に歌詞が上がってきたら、それに応える形で後からダビングしたりもします。
──曲作りの時はギターを弾きながら作るのですか?
橘高:実はギターを持って曲を書かないようにしているんです。というのも、俺みたいないわゆる様式的スタイルをやる人って、楽器を持ってしまうと視野が本当に狭くなってしまうんですよね。だからギターを持たずに、頭の中でイメージした楽曲が流れるのを待つ。それから実際にギターを持ってコピーするという作業をします。頭の中だとメチャクチャ難しいことやってて、いつも困ってるんだけどね(笑)。
──その時、頭の中でどのようなイメージを描かれているのでしょうか?
橘高:歌詞も何もない曲が流れるんだけど、各メンバーをイメージしているね。大槻ケンヂが歌って、本城聡章と俺がギターを弾いて、内田雄一郎がベース。もちろんピアノは三柴理で、ドラムは長谷川浩二。サポートしてくれているメンバーもいるんです。それがライブ風景だったり、時にはまったく風景がないこともあったり。僕はアレンジャーでもあるので間奏が流れたりもしますよ。
──橘高さんの頭の中にDAW(作曲)ソフトが内蔵されているみたいですね。
橘高:誰でも頭の中に流れて「あ!良い曲できそう!」ということがあると思うんだけど、それを形にできるからプロになれたのかもね。ただ、それをひたすら待つから、待ちが長い。それからアレンジしていく段階で多少フレーズが変わっていくんだよね。
──その時は曲の構成通りに流れてくるんですか?
橘高:そうやって完成形で綺麗に流れる時もあるし、断片的に流れてくることもあったり。「わけあり物件」に関しては頭サビの「わけありですよ~」が最初に流れてきて。その後に、イントロパートや間奏はスロットの台で当たった時にこの曲が流れるのをイメージしました。間奏が出てこない時には、ギターを持って長年のキャリアと知識で「ここは転調してこういう感じにしたら良いな」とか考えたりもします。でもやっぱりイメージしてできたフレーズの方がスムーズに感じるかな。
──個人的に、おどろおどろしい部分やエスニックな要素、そして橘高さんのたまらないギターソロが「バーン!」と炸裂したりと、色々楽しめる楽曲だと感じました。
橘高:自分の中で二面性な部分があって、それが楽曲に表現されるんです。例えば、暗〜い雰囲気の中にどこか一瞬希望を入れたくなるクセがあって。間奏ぐらいで一旦希望を入れて、でも「その希望はなかったんだ」って崩れてダークに変化させるとか。多分なかなか一筋縄でいかないような人生を送ってきたからだと思います(笑)。
──ギターソロはどのようにして作られたのでしょうか?
橘高:ギターソロに関しては作曲をしないで、スタジオで作るタイプなんです。だからアドリブで弾いたソロなんですけど、最終的には大抵1テイク目か3テイク目ぐらいのものを採用します。でも直後は納得しないので15テイクぐらい録り直すんだけど、聴き直してみると最初の方が良いんですよね。やっぱり楽曲に対する初期衝動があるので、良い意味でまとまりがなかったり、加えて「弾きたい」という欲が溢れているというか。で、3テイク目あたりで少しまとまる。4テイク目以降はなぞったり計算しちゃうから良くないのかな。
──この曲は本城さんとのツインリードもありますよね。
橘高:基本的に筋少はリードとリズムで分かれているので、あれも俺がダビングして一人で弾いてハモってます。ツインパートの作り方は、まず、一度テイクを録りながらアドリブでメロディアスなソロを弾く。そして、一度聴いて、また弾いて、という作業を繰り返し作りこんでいく。それからハモりを付けてという流れだね。作曲で作るハーモニーパートとアドリブソロパートで対比を設けるんです。
──鍵盤に関しては?
橘高:頭の中で鳴ったイメージを伝えてコード進行譜面を渡したら、あとは三柴君にお任せ。オーケストラアレンジをお任せするようなもので、彼はスコアを書くタイプ。だからレコーディングでは譜面を持ってくる。俺とは正反対(笑)。ただ、三柴君も「ここアドリブで弾いて」と頼めばスコアがなくてもパッと弾けちゃう。
──三柴さんの鍵盤があることによって筋少の楽曲がさらに盛り上がりますよね。何よりも橘高さんは三柴さんとバンドがやりたくて筋少に加入されたわけですし。
橘高:こういうハードロック聴いたことがなかったもん(笑)。だから、それをやってみたくて入ったわけで、今自分達が出来ていることが誇らしいと思います。他のバンドが「わけあり物件」をやっていたら本当に悔しいと思ってたと思う。
──他のパートもお任せなのですか?
橘高:デモの段階では最初に話した現代の便利な部分は使っていて、俺がコンピュータに繋げてベースを弾いているよ。設計図となるデモに関しては多重録音だね。ドラムは打ち込みだし。その後にメンバーで集まってプリプロをする時にアレンジをする段階では、切り貼りをするし新たにプレイして足すこともある。だから筋少は最新技術と生バンドを上手く使い分けてるね。最終的に生でやる本番のレコーディング時はひたすらアナログイズムだし。
──いいとこ取りですね。
橘高:メンバー各自がやりたいことをデモで説明して、各意見を聞いてアレンジを加えたりしながらプリプロを進める。例えば俺が「ここ直そうよ」って修正もするし。それから「よし、じゃあドラム録ろうか」って本番のレコーディングがスタートします。
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