“未来=Future” は「バンドであり続けること」
橘高文彦(筋肉少女帯)『Future!』インタビュー
橘高文彦(筋肉少女帯)『Future!』インタビュー
2017/11/06
──今回のレコーディングではどのギターを使われたんですか?
橘高:ずーっと使っているGibsonのフライングVです。67年の再生産モデルっていうのかな。ラージヘッドのやつです。アコギはTakemineの12弦やガットギター、6弦のフォークギターだったり。
──橘高さん=フライングVというのは強くイメージがあります。
橘高:エレキギターに関してはフライングVだけなんで、これまで何十枚とアルバムを出してきていますけど、それ以外を使ったことってほとんどないんじゃないかな。
──ところでフライングVっていつ頃から使われているんですか?
橘高:このギターは筋肉少女帯に入る直前で、買ったのは1988年かな。さらに遡ると俺がAROUGEというバンドででデビューしたのは1984年なんだけど、その時はKEY楽器さんによるグレコ「AK1400」というスルーネックのフライングVを使っていました。このギターは1978年にキッスが来日をした時にKEY楽器さんがエース・フレイリーにプレゼントしたギターと同じモデルで、俺はそれにフロイドローズを付けてたんです。買った当時の1981~82年はマイケル・シェンカー・ブームで、みんな真っ白なフライングVを使ってて。ただ、やっぱり俺は筋少に入る人間だなと思うんですけど、人と同じが嫌で(笑)。そこでKEYにあったナチュラルな木目のモデルを見つけて買ったんです。それとGibsonのレスポールカスタムもデビューあたりまで使ってたかな。
──正直、橘高さんがレスポールってイメージできないです。
橘高:当時からライブではフライングV使ってて、アマチュアの時からフライングVのイメージなんだよね。レスポールカスタムに関してはただ単に高校生の時にランディ・ローズが好きで買ったものを、レコーディングで使っていただけです。デビュー以降はフェルナンデスさんからエンドースさせてもらっていたBSVという一回り小さいモデルとか使っていました。
──今も使われているギターを購入されたんですね。
橘高:元々はジャパメタ育ちだったので、アーミングやタッピングばかりするギタリストだったんです。でもブルースに影響を受けた、70年代ハードロックの王道系プレイヤーにもともと憧れていて。それでGibsonのフライングVを購入したんだけど、このモデルにはアームが付いてたんだよね(笑)。それでGibsonのフライングVを購入したんだけど、アーム使わない宣言をしていたから外してもらいました。
──ちなみに橘高さんに憧れてフライングVを使っているプレイヤーに向けて、筋少の楽曲をコピーするときのアドバイスはありますか?
橘高:その前に筋少の一つの反省点があってね。例えばパンクバンドはみんなが学祭で弾けるようなフレーズがあったりするじゃない。一方で筋少は「弾けるもんなら弾いてみろ!」って未だに思って作ってるので(笑)。
──まさにロックですね!
橘高:でも、俺は昔、バッキングは拾ったけど、完コピ派ではなかったの。好きなギタリストのアドリブパートをレコードやCDで流して、さらにアドリブで弾くという。もちろんギター雑誌を見て「あそこのフレーズカッコいいな」って拾ってみたり、耳コピすることもあったけど、ギターを弾いて楽しむ時は、曲を流しっぱなしにして弾いていました。だから、俺がそうだったように、自分で楽しく弾いてくれるのが一番良いんじゃないかな。他にもキーボディストがいないバンドでデビューしたことが影響してか、コードなんかでもギターにしては指5本分の弦を押さえたりする厄介なコードを弾くタイプだったりするのもダメなのかも(笑)。とにかく「面白いな」という部分を見つけてもらって、そこからフレーズを拾って遊んでもらえたらな、と。
──難しいフレーズがあればあるほど、それを「だからこそ挑戦してやる!」という気持ちが強くなると思います。
橘高:そうそう(笑)。難しいフレーズを弾けない時、悔しくて悔しくて。それで練習して弾けるようになったら気持ち良いのよ。そうすると、また弾けないのを探すという。だからどんどん弾けない曲を探して欲しい。
──その中でも橘高さんのプレイを完コピしようと挑む人がいるでしょうね。
橘高:橘高イズムを引き継ぐのであれば、フレーズよりも「こういう風にきたのに、何でこんな間奏に行くの?」というような一筋縄ではいかないようなアンバランスさという部分にチャレンジしてみると良いかも。もちろんハードロックだけではなく、ジャンルレスでね。そういった意味では、筋少ファンであるPOLYSICSのハヤシ君は、筋少と僕のイズムを引き継いでくれている1人だと思います(笑)。
──続いてエフェクターは?
橘高:ボスのOD-1とCry Babyぐらいです。ライブになったらそれにワイヤレスが入るくらいで。もちろんアンプはマーシャル。
──これも以前から使用されているものなんですか?
橘高:劣化した部品を取り替えたりして使い続けています。OD-1に関してはボスの方が基盤を2回ほど送ってくれたんですけど、「本当にもう部品が無いので、これで最後ですよ」って言われたのを覚えている(笑)。だからギターテックが相当苦労していると思います。ワウは足のゴム一つで全然違うし、個体差がある中で気に入ったものを選んでいるから、同じCry Baby、そしてOD-1も予備で持っているんです。でも全部違うんじゃないかってくらい変わるんです。マーシャルアンプも同様で、あれは74年のモデルでずっとメインなんですけど、真空管を変えたり色々トラブルを乗り越えながら使っていて。それを正常な状態に戻してもらったことがあったんですけど、そうしたらサウンドが全然違ってて。部品一つ一つが今のベストな状態を作り上げているみたいで。マーシャルは日によって音が違うし、ギターテックが可哀想です(笑)。これからもこのギター達と長く付き合っていきたいです。
──たくさんアルバムのことや機材についてお聞きしてきましたが、11月11日からはリリースツアーがスタートします。意気込みをお聞かせください。
橘高:今作は18枚目のアルバムなんですけど、これまでもアルバムの中から新曲を何曲やろうかって話になるんです。でも今回は「全曲やってもいいんじゃない?」っていうぐらい、ライブ面を考えても良いアルバムが出来上がったと自負しています。プラスそれ以外の過去の楽曲を選んで一本のライブとして成立させたいと思っています。当たり前ですけど、そりゃアルバム聴いてきてもらった方が楽しめるよ(笑)。もちろんライブで初めて聴くのも良いけどね。
──それでは改めて今作の聴きどころをひと言お願します。
橘高:世の中に “はびこっていない” 音楽が11曲パッケージングされています。なので初めて聴いた人が「こういうバンドもあるんだ。こんな歌詞や演奏の仕方もあるんだな」という独自性に気づいてもらえたならば筋肉少女帯が存在する意味もあります。またずっと応援してくれているファンには色々な新機軸にチャレンジしていますが、どこを切っても筋肉少女帯になっているので存分に楽しんで貰えたら嬉しいです。タイトルにもある通り、これからの未来もますます突き進んで行くという覚悟を表したアルバムなので、ぜひ聴き込んでライブ会場に足を箱んでください。
──最後になりますが、ロックギタリスト橘高さんにとって「ロック」とは何でしょうか?
橘高:うーん、難しいですね。それを俺が答えるにはまだ早いかな!。それは人生最後のインタビューだよね(笑)。でもそのぐらい、俺にとっては生きるために必要なものだと思います。不登校だった学生時代に楽器と出会い、大阪から東京に出てきてギターとロックに救われて生きてきたんです。そうでなかったら生きている意味を見出せなかっただろうし。今考えればどうなっていたろうと考えるだけで怖いです。ひとえに今生きているのはロックに出会ったおかげで、そして自分自身がロックになろうと思ってきた人生なので。だから「ロックとは “俺だ!”」と言えるまでになりたいです。でも、そんな生易しいものじゃないので、ギタリスト人生最後のインタビューでの質問まで取っておきます。
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