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Bluetoothでハイレゾ並みの高音質を実現、他とは違うJVCの「K2テクノロジー」搭載ヘッドホン
Bluetoothでハイレゾ並みの高音質を実現、他とは違うJVCの「K2テクノロジー」搭載ヘッドホン
2017/12/15
簡単な設定とワイヤレスの便利さが魅力のBluetoothヘッドホンだが、その手軽さとは裏腹に今まで音質にあまり満足できずにいたという人も多いはずだ。しかし、この問題をJVCがついに解決! 同社が誇るデジタル高音質化技術「K2テクノロジー」を利用し、Bluetoothでありながらハイレゾ並みの高音質を実現。ここでは超注目のヘッドホン3機種と、MMCX採用のヘッドホンと組み合わせて「K2テクノロジー」による高音質ワイヤレス化が楽しめるネックバンドスタイルのBluetoothレシーバーを紹介しよう。
文:布施雄一郎 撮影:小貝和夫
◉ワイヤレスで便利になる一方で犠牲になっていた音質
ワイヤレスで信号を送る方法には「WiFi」と「Bluetooth」がある。WiFiはやり取りできるデータ通信量が大きいために高音質で、通信距離も長いというメリットがある一方で、通信の設定が面倒というデメリットがある。これに対して、Bluetoothは、スマートホンやDAPと1対1で“ペアリング”するだけですぐに使えるなど、セットアップがとても簡単だ。ただし、Bluetoothで伝送できるデータ通信量は小さいことから音質面で制約があった。
しかし今回、JVCから発売された新製品4モデルを試聴し、その音の良さに驚くと共に、これまで持っていた「ワイヤレス=音が悪い」という認識は過去のものであることを痛感。それと同時に、ワイヤレスの便利さを改めて実感した。では、どのようにしてJVCは、ワイヤレスでありながらも高音質化を実現できたのだろうか。
◉Bluetoothでハイレゾ並みの高音質を可能にしたK2テクノロジー
K2テクノロジーとは、1987年に、当時の日本ビクターとビクタースタジオが共同開発した技術。スタジオでのデジタルレコーディングの際の音質劣化を改善することを目的に開発された技術で、その後、MP3などの圧縮音源をマスター音源のサウンドに近づけるなど、30年間に渡って進化してきた。
そのK2テクノロジーを、今回の新製品でBluetooth伝送に最適化。圧縮してイヤホン/ヘッドホンに送られてきた音楽信号を、受信側で圧縮前の状態に戻すだけでなく、さらに原音に近いハイレゾ相当(192kHz/24bit)の状態まで復元してくれるのだ。
K2テクノロジーの仕組み
ここで、新製品4モデルに共通した技術的な仕様について触れておこう。
Bluetooth伝送時の圧縮方法(コーデック)は、Bluetooth機器標準の「SBC」、iOSデバイスやiTunesで採用されている「AAC」、そして高音質伝送可能な「apt-X」に対応しており、これらの信号を受けると、イヤホン/ヘッドホン側で自動的に、各方式に対して最良の状態となるように個別のK2テクノロジー処理が行われる。また、いずれのモデルもK2テクノロジーのON/OFFボタンが用意されているので、その効果を聴き較べられるだけでなく、楽曲によって、好みのサウンドを選ぶことが可能になっている。なお、Bluetoothレシーバーの「SU-ARX01BT」を除く3モデルにつては、専用ヘッドホンケーブルが付属されており、ワイヤード接続での使用が可能なほか、ハンズフリー通話が可能な、マイク&リモコンが搭載されている。
◉K2テクノロジーの効果を試してみた
では、K2テクノロジーが搭載されている全4モデルについて、普段、筆者が聴いているMP3(192kbps)ファイルを中心に試聴した際の印象や使い勝手、特色をレポートしよう。
●お気に入りのヘッドホンをK2で高品位にワイヤレス化する「SU-ARX01BT」
▲「HA-FW01」
K2テクノロジーを搭載し、手持ちのMMCX(イヤホンとケーブルの接続部などに使われている端子の規格)採用イヤホンを高品位にワイヤレス化するBluetoothレシーバー。例えば、ウッドドームユニットを搭載した「HA-FW01」や最新の「HA-FD01」など、好みのMMCX採用イヤホンを取り付けて、そのサウンドをワイヤレスで楽しめるというモデルだ。今回は、「HA-FW01」を装着して試聴した。
同社ハイクラス《CLASS-S》シリーズのMMCX採用イヤホンでの使用に対応しているだけあり、さすが納得のサウンド。そもそもが、K2テクノロジーの有無に関わらず、「これでBluetoothか」と思うほど高音質であった。そのうえでK2テクノロジーをONにすると、さらにサウンドの印象が大きく変わった。イメージで言うと、少々ボヤけてコントラストが平坦な画像が、ピントがシャープになり、色合いの表現力が鮮明になった印象。具体的には、中域のモコついた成分がクリアになり、低域はタイトに、そして高域の伸びがよくなった。中域のモコつきというのは、宅録をやっている人であれば、ミックス時の処理で一番苦労する部分だろう。そこがすっきりとするため、歌とキック、ベース、ギターとの分離がよくなり、さらに高域の聴こえやピアノやシンバルの響きも明瞭となり、結果、各楽器が立体的に聴こえるようになった。一度、このサウンドを体感すると、K2テクノロジーをOFFにする機会は、あまりなさそうだ。
音だけでなく、質感の高い布巻ケーブルやソフトレザー仕上げ素材のネックバンドなど、上質な仕上げにもこだわっている。基本は同社ハイクラスシリーズのイヤホン対応だが、手持ちのMMCX採用ヘッドホンで試してみるのも楽しみが広がる。
▲ネックバンドはソフトレザー仕上げ
▲「K2」機能のON/OFFスイッチ
まず、耳への装着感は極めてライトで、「イヤホンをはめている」という圧迫感や重量感は、ほとんど感じない。また、ネックバンド自体がとても軽量で、ソフトレザー仕上げのため、首や洋服にまつわるような感触もない。さらにイヤホンまでのケーブルの長さが、適度な余裕はありつつも“余る”ことがないため、首を動かしても身体や服にケーブルが擦れず、使用感は快適だ。
肝心のサウンドは、K2テクノロジーがOFFの状態でも、ワイヤード並みのシャープなサウンドが楽しめ、ONにすると、さらに音の解像度がアップした。その変化は、「SU-ARX01BT+HA-FD01」ほど劇的ではなかったものの、中域がクリアになるという傾向は共通しており、特に128kbpsのMP3ファイルなど、再生する音楽ファイルのクオリティが低いほど、K2テクノロジーの威力を強く感じることができた。
●密度の濃い中低音と鮮やかな高音を聴かせる「HA-SD70BT-A/B」
▲スピン加工されたユニット部分
▲「K2」のON/OFFスイッチ
K2テクノロジーOFFでのサウンドは、当然ながらドライバーが大きな分、中低音の密度感がしっかりとしており、高域も鮮やかに再生してくれる。ワイヤレスで、これほどの音質で音楽が聴けるのであれば、それだけで満足感は大きい。そのうえで、K2テクノロジーをONにした際の効果は、「HA-FD70BT-A/B」のそれと極めて近い印象だった。スマートに、かついい音で音楽を楽しみたい人にはイヤホン・タイプ、しっかりと音楽を聴きつつ、フレキシブルに行動したい人には、このヘッドホン・タイプがオススメ。
また、スイーベル(折りたたみ)機構が採用されているのでコンパクトなサイズで持ち運べることや約20時間という長い連続再生時間もこの製品の大きな魅力だ。
●ガッツのあるサウンドをワイヤレスで楽しめる「HA-FX99XBT」
▲ゴールドの「XX」が印象的なアルミ切削のボディ
▲「SOUND」ボタン
このモデルの特長は、SOUNDボタンを押すことで、サウンドを「ノーマル」、「バスブースト」、「K2テクノロジー」の3タイプに切り替えられる点。なお、K2テクノロジーは、基本的に原音復元を目指す技術なため、バスブースト時には、自動的にK2テクノロジーはOFFとなる仕様となっている。
ノーマルの状態で、コンセプト通りにガッツのあるサウンドで、《N_W(エヌダブ)》シリーズがナチュラル派だとすれば、《XX》シリーズは力強いサウンドが魅力のパワー派と言える。さらにバスブーストをONにすることで、ダンス・ミュージックやロックの聴き応えが増した。一方、K2テクノロジーをONにすると、EQ的な低音の持ち上げ方とはひと味違う、低音楽器の存在感が増す印象。ノーマルを含め、どの音がいいと思うかは好みの範疇であり、曲によって好きなサウンドを切り替えて使い分けられる点も魅力だ。
プロフィール=布施雄一郎(フセユウイチロウ)
音楽テクニカルライター。大学・大学院で音響工学/音響心理生理学など「音」について多彩な視点で学び、電子楽器メーカーでシンセサイザーの開発・設計業務を手がけた後、ライターに転身。音楽関連誌を中心に執筆活動を行なっている。
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