新たに4つの機種を追加! シンセコレクションの決定版ソフト音源
【動画付き】ARTURIA「V Collection 6」徹底レビュー
【動画付き】ARTURIA「V Collection 6」徹底レビュー
2018/02/01
シンセの名機や定番キーボードの数々を独自のモデリング技術で再現し、シンセコレクションとして絶大な人気を誇るARTURIA「V Collection」。今回、この「V Collection」がバージョン「6」となり、新しく「DX7 V」、「CMI V」、「Buchla Easel V」、「Clavinet V」の4機種が追加されました(全21種類のソフト音源としてバージョンアップ)。ここでは、新搭載された4つの音源を中心に、「V Collection 6」の魅力を紹介していきましょう。
文:平沢栄司
「V Collection 6」ってどんなソフト音源?
「V Collection 6」に収録されるソフト音源は、大きくはシンセ系、ピアノ系、オルガン系に分類されます。シンセ系は、ムーグやアープ、ブックラ、オーバーハイムやプロフェットといった海外勢やCS-80やJupter8などの国産勢を含むアナログ・シンセと、シンクラビアやフェアライト、DX7などの黎明期のデジタル・シンセ。そして、ストリングス・キーボードのソリーナを含みます。またピアノ系はアコピ(グランド、アップライト)とエレピ(ローズ、ウーリッツァ)、クラビネットを、オルガン系はハモンド、VOX、ファルフィッサの3種をカバーし、合計で21種類(Analog Lab 3を含む)のソフト音源が収録されています。つまり、70〜80年代前半を代表するシンセ/キーボードがほぼ網羅されているわけです。
しかも、モデリング技術により忠実にサウンドやパラメーター群を再現するだけではなく、現代のミュージックシーンに対応するためのモディファイも加えられ、実機を超える音作りやパフォーマンスが可能となっています。
- ▶全機種のプリセットサウンドが演奏できる「Analog Lab 3」
まずは、すべての音源のプリセット音色が演奏できる「Analog Lab 3」に注目です。ブラウザ画面から機種や音色の傾向などで音色を絞り込めるので、初めての人は「Analog Lab 3」で「V Collection 6」の世界を覗いてみるといいでしょう。また、簡易エディット機能も用意されているので、必要に応じて音色の微調整も可能です。
画面左側のブラウザ機能を利用すれば、希望するサウンドに素早くアクセスすることが可能だ。ここで機種を選ばずにBASSなど音色タイプで絞り込めば、全シンセのベース音色が聴き比べられるなど、個別の音源を利用するときとは違ったメリットもある
画面下部には簡易エディットのためのコントローラーが並び、選択した音色に応じて主要なパラメーターが割り当てられる。同社のMIDIキーボード「Key Lab」シリーズを利用すれば、先の音色選びも含めてKey Lab側のボタンやツマミ、スライダーでAnalog Lab 3を操作することも可能だ
新規追加された4種類の音源をチェック!
続いて、「6」で新規に追加された4つのソフト音源を紹介しましょう。
- ▶一世を風靡したFMサウンドを完全に再現する「DX7 V」
「DX7 V」は、フルデジタルのFM音源を搭載し、エッジの効いたきらびやかなサウンドで80年代に大ヒットしたシンセ「DX7」をモデリングしたソフト音源です。近年、EDMなどのジャンルで再評価されているFM音源なので、気になっている人も多いでしょう。データ・レベルでDX7と完全な互換性があり当時のサウンドを再現できるのはもちろんのこと、大画面とマウス操作を活かしたインターフェイスによって難しいといわれていたFM音源の音作りもスムーズに進めることができます。また、機能の拡張によって、新しいFMサウンドを作り出すことが可能です。
メイン画面は実機よりもシンプルだが、パネルを開くと左側のエリアで操作したいオペレーターを切り替えながらパラメーターを一覧しつつ音作りが進められる。数値だけでなく、エンベロープ・カーブやレベル・スケーリングの様子、さらには出力される波形までも目視できる
オペレーターの波形は、DX7の正弦波に加えて後継のFMシンセやFM音源チップの波形も網羅されDX7を超えたFM変調が可能となっている。また、各オペレーターごとにフィルターが追加されている点にも注目。キャリア側で使えば減算式のアナログシンセ的な音作りが、モジュレーター側で使えば更なる変調用の波形バリエーションが作れる
強力なモジュレーション・マトリックスを搭載。追加されたエンベロープ・ジェネレーターやステップシーケンサーなどでFM音源の各種パラメーターを刻々と変化させれば新しいFMサウンドが創造できる
- ▶あの“オーケストラヒット”の元祖「CMI V」
「CMI V」は、オーケストラヒットに代表されるサンプリングによる新しいサウンドのスタンダードを生み出した「CMI」をモデリングしたソフト音源です。1000万円を遥かに超える高額な機材でしたが、いまなら手が届く価格でパソコンの中に用意できます。当時は憧れだった音色ライブリは完全収録されており、現代の高品位なPCMサウンドとは違う8bit&低容量ならではの荒々しく個性あるサウンドは刺激的です。また、波形を周波数解析し倍音加算合成で再現/エディットする機能なども備え、単なるPCMサウンドのプレイバックだけではない新しいサウンドを生み出すためのシンセサイザーとしても魅力ある音源です。
波形編集や音色エディットなどの各種操作は、CMIのディスプレイ部分をクローズアップしたような画面の中で行なう。実機よりも多い10パートのスロットを持ち、選択した音色を鍵盤に振り分けてレイヤーやスプリットで演奏したり、内蔵のシーケンサーで各スロットの音色を別パートとして演奏することも可能だ
波形を再生するSAMPLINGモードに加えて、その波形を解析して倍音加算で再現/エディットするTIME SYNTHモード、各倍音ごとにレベルやエンベロープを設定しながら音作りを行うSPECTRAL SYNTHモードを備える。サンプラーだけでなく、倍音加算式のシンセとしても強力なのだ
ワークステーション・タイプの楽器の先駆けとして「ページR」と呼ばれる打ち込み画面が用意されていたのもCMIの特徴の1つ。CMI Vもシーケンサーを内蔵しているので、DAWを使わなくても単独でパターンを組んで演奏することができる
- ▶音作りにハマれるセミモジュラーシンセ「Buchla Easel V」
シンセ黎明期に、演奏よりも実験的なサウンド作りで個性を発揮したのがBuchlaでした。モデリングされたEaselはセミモジュラータイプの小型シンセで、用意されている各種モジュールをパッチケーブルで結線して自由に音源を構成できるのが特徴です。ほぼ実機通りのデザインで操作もそのままですが、こちらも追加された新機能によって実機を超える音作りができます。プリセットを選んでフレーズを演奏するよりも、音を鳴らしながら即興的に新たなサウンドを作ることが面白いシンセですね。また、Buchla Easel Vでモジュラーシンセの面白さを知ったなら、「V Collection」に含まれるmoogやArpの大型モジュラーシンセに挑戦してみるといいでしょう。
実機通りのパネルデザインだが、なじみのあるアナログシンセとはパラメーターやパネルの様子が違うので戸惑うかも。しかし、様子が解れば操作性はいい。ケーブルによるパッチはスパゲッティ状にならないよう工夫されているので信号の流れがつかみやすく、モジュラーシンセの音作りを知るのに適した音源だ
パネルを開くと追加された機能にアクセスできる。任意のパラメーターにパッチできるエンベロープ・ジェネレーターやステップシーケンサーに加えて、秀逸なのが画面上を動くボールの座標に合わせてパラメーターを変化させる「グラビティ・ユニバース」だ。画面内に障害物を置くことでボールの軌跡を変えることができ、通常のコントローラーの操作では得られないような滑らかで不規則な音程や音色の変化が作り出せる
- ▶物理モデル音源として再現されたクラビ「Clavinet V」
ファンキーな曲に欠かせないベーシックなキーボードの1つ「クラビネット」を物理モデルで再現したのが「Clavinet V」です。サンプリングされたPCMシンセのプリセットと違い、発音の仕組みから再現されているのでベロシティやパネル上の操作による音色の変化がリアルかつスムーズな点が特徴といえます。また、下段にギター用のペダルが並び、さらにはギターアンプも用意されるなど、クラビならではの音作りを存分に楽しめます。
実機と同じように操作できる点もPCMシンセのクラビにはない特徴だ。左に並ぶタブレットでは、4バンドEQの各帯域のON/OFFや2機あるピックアップの使い方や位相の反転を組み合わせることで様々なサウンドが得られる。また、右側のMUTEスライダーによる減衰の調整もスムーズだ
蓋を開ける(パネルを開く)と、物理モデルのパラメーターにアクセスできる。ここでは、発生する倍音の特徴を変更したり、弦を叩くハンマーのへたり具合を調整したり、各種ノイズの量をコントロールすることでコンディションの違いや好みのクラビサウンドを作ることができる
「V Collection 6」に収録されているソフト音源は、単独で使用できるスタンドアローン版とDAWソフトから呼び出すプラグイン版が用意されています。もちろん、Win/Macの64bit環境で使用可能です。パソコンを楽器に見立ててMIDIキーボードでリアルタイム演奏したり、DAWのトラックから音源として打ち込みで演奏するなど、キーボード系サウンドのメイン音源として活躍すること間違いありません。
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