10種類の攻撃的なアナログサウンドを搭載したドラムマシン
Watusi(COLDFEET)がArturia「DrumBrute Impact」を徹底チェック!
Watusi(COLDFEET)がArturia「DrumBrute Impact」を徹底チェック!
2018/10/26
完全アナログ音源のドラムマシンとして人気のDrumBruteに兄弟機「DrumBrute Impact」が登場しました。一回り小さくなって取り回しがよくなったボディには、新しいサウンドを生み出す新機能として「FMドラム」、「カラー」、「ディストーション」を搭載。音楽制作からライブ・パフォーマンスまで、インパクトのあるサウンドで力強いグルーヴを奏でます。ここでは、この「DrumBrute Impact」のサウンドと操作性をダンスミュージック界の重鎮Watusiさんが徹底チェック。製品の印象や音作り〜ビート・メイクのポイントを解説してくれました。
文:平沢栄司 撮影:小貝和夫
◆兄弟機とは違うキャラクターを生み出す新設計の音源部
DrumBrute Impactは、10種類の完全アナログ音源によるキック、スネア×2、ハイタム/ロータム、シンバル/カウベル、ハイハット(オープン、クローズ)、そして、FMドラムの10種類のサウンドを内蔵したドラムマシンです。各音色は、ピッチとディケイのコントロールができ、アナログ音源ならではの自然なサウンドメイクが可能。中でも注目は新規搭載のFMドラムで、FM変調のパラメーターによって個性的なパーカッション・サウンドが作り出せます。
また、DrumBrute Impactで特筆したいのが、新機能「カラー」です。これは、ステップ単位で各音色ごとに用意されている別レイヤーのサウンドに差し替えるもので、通常のアクセントとは異なるアグレッシブな音色を得ることができ、リズムにダイナミックな動きを加えることができます。さらに、アウトプット部にディストーションが搭載されたことで、外部エフェクトを使わずに歪みによる力強く荒々しいサウンドが得られます。リズムの打ち込みについては、定評のあるDrumBrute譲りの操作性をそのまま継承。パッドによるリアルタイム入力とボタンによるステップ入力をシームレスに使い分けながら入力できるようになっています。その他、打ち込んだリズムに変化を加えるランダム機能や任意のステップを連打するリピート/ルーパーも健在で、リアルタイムのパフォーマンスでも威力を発揮します。
▲兄弟機のDrumBruteよりも一回り小さな筐体に新しいFMドラムを含む10種のアナログドラムを搭載。ツマミによる音作りや使い勝手のいいシーケンサーなど、基本的なレイアウトと操作は兄弟機を踏襲している
◉Watusi氏インタビュー
──第一印象はどうでしたか?
僕は、Arturiaの製品は以前から気に入って使ってるんです。DUBFORCEっていうバンドでベースを担当しているんですが、ベースギターだけではなくライブで弾けるシンセベースが欲しかったんですよ。ジャンル的にアナログ機材がいいと思って試奏した中で気に入ったのが、Arturiaの「MicroBrute」だったんですね。そのArturiaからドラムマシンが出ているのは知ってましたが、今回、試奏する機会を得て鳴らしてみると、やっぱり「MicroBrute」と同じ印象なんですよ。とにかく、音がいい。「音の良さ」の要素はいろいろありますが、僕はダンスミュージックを基本にしているので、アナログの質感…いわゆる太い音が大好きなんです。往年の名機と呼ばれるアナログのドラムマシンも持ってますが、それらを使う場合、プラグインなどを駆使して時代にマッチしたサウンドを作っていく必要があるんです。ところが、「DrumBrute Impact」は、アナログ特有の太さやヤバさを持ちながらも、プラグインで処理したような今日的なエッジの立ち方をしてるので興奮しましたね。それが僕の第一印象です。
──特に気に入った点は?
やっぱり、操作性の良さ…特にピッチとディケイの調整がスムーズな点ですね。基本的に、実機のドラムマシンでいじるのはその2つだったりするんですよ。でも、サンプリングした音源だと、ピッチを可変すると音が濁るんです。そこが面白さでもあるんだけど、例えば、キックをベースラインとして使おうってときは、ピッチが変わるたびに質感が変わってしまうと曲の土台として使いづらいものになってしまいます。ところが、「DrumBrute Impact」は、アナログの音源だからピッチを変えても質感が変化することはないし、さらにディケイで減衰を調整してあげれば、あたかもシンセベースを弾いているような感じで、ものすごくベースラインが作りやすかったんです。同じく、ロータム/フロアタムなんかもベースラインに使ったり、2ndキックにしたり、そんな使い方ができるピッチの可変幅に音楽性があって、そこに魅かれました。
▲キックやタムに用意されているDecayとPitchのツマミで、音程と減衰をスムーズに調整することができる
──使い勝手はいかがでしょうか?
ドラムマシンのパターン制作法には、リアルタイム入力…クリックに合わせてリズムを叩きながら自分で打ったリズムにインスパイアされつつパターンを作っていくのと、叩いて入力したのでは間に合わないような細かなダララッてところを打ち込んでいくステップ入力っていう2種類の方式があります。この「DrumBrute Impact」は、リアルタイムとステップの切り替えがボタン1つでできるところがいいですね。また、アクセントはもちろん、カラーやディストーションといった音の質感を変える機能もステップ単位で簡単に設定できるから、自分が最初に思っていた以上のリズム・パターンが作れてしまう。そういった方向に上手に導いてくれる使い勝手の良さを持っています。
▲Ptnボタンが赤く点灯しているときは、各音色のパッドを叩いてリズムを作っていくリアルタイム入力モードとなる
▲Stepボタンを押して点灯させると、その下に並ぶ16個のボタンを使ってパッドで選択している音色をステップ入力できる
そして、DJをやってる身としてウレシイのが、「ランダム」と「リピート」という機能。前者は、作ったパターンに対してランダムで音を加えるもので、オカズ的、Bメロ的なバリエーションを提示してくれるんです。「リピート」はボタンを押したタイミングのステップで鳴っていた音を、16分刻みや8分刻みで連打してくれます。この連打っていうのはダンスミュージックでは大事で、どこをリピートさせるによってパターンの意味が変わっていくんですよ。これらの機能は、自分で作ったパターンに+αを加えて自分を触発してくれる。制作でもインスパイアされるし、ライブにも使いたいですよね。特にリピート機能はライブでやったら絶対に盛り上がるはず。DJするときに「DrumBrute Impact」を持っていって、鳴らしている曲と同じBPMにしてランダムやリピートでオカズ的に使ってみたいなと思いました。
▲Randomツマミを右へと回すほど、ランダムに追加される音数が増えていく。また、Current TrackをONにすると、選択されている音色にのみランダム効果を機能させることが可能だ。その左隣にあるのは、裏拍を後ろにズラしてハネたビートへと変化させるSwingツマミだ
▲任意のステップを繰り返すリピート機能を実行する4つのボタンでは、左から、4分刻み、8分刻み、16分刻み、32分刻みのリピートが指定できる。押したまま左から右へとスライドさせれば、ビルドアップのスネアのように加速していく連打もリアルタイムで再現可能だ
あと、もう1つ使ってみてよかったのが「カラー」という機能。アクセントのように選んだステップの音を強くするだけじゃなくて、ちょっと歪ませたり滲ませたりすることができる。それと、アウトプットにある「ディストーション」で、パターン全体をちょっと歪ませてみたりだとか。こういった変化は、ダンスミュージックを作る際、ドラムマシンの音をいかに自分のサウンドに変えていくかってときに非常に重要なんです。レコーディングでは、スタジオにあるマイクプリで作りますが、音を音楽的に咀嚼するときに欲しい効果は歪みや滲みなんですよ。ドラムマシンの内蔵エフェクトで多いのはディレイやリバーブで、確かに便利だけど、もっと本質的な音作りの機能があるといいなって常々思ってたんです。カラーやディストーションは単に歪ませるってだけじゃなくて、音を音楽にする…そんな機能だと思います。
▲「Color(カラー)」
▲「Distortion(ディストーション)」
──Watusiさんは「DrumBrute Impact」をどのように使いたいですか?
実はいま、COLDFEETの20周年記念のアルバムを作っているんです。そんなタイミングで「DrumBrute Impact」を試奏していたら、ピッチがキレイに変わるキックをベースラインで使うと気持ちよさそうな曲があったので早速レコーディングで使ってしまいました。それで、制作に最適な機材だなと思ってたんですが、使っているうちにライブでも使ってみたいと思いましたね。「MicroBrute」と一緒に並べて演奏してもいいし、DJでも3台目のターンテーブルのように今プレイしている曲と同じBPMで組んでおいたパターンを鳴らして、そこにランダム機能やリピート機能を活用して音を付加するなど、DJプレイの新しい機材として使うのも楽しそうです。皆さんも、制作やライブなど様々な場面で「DrumBrute Impact」を活用して欲しいですね。
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(編集後記)
今回、Watusiさんの「音が太くて、やばい!」というコメントにもあったように、「DrumBlute Impact」はアナログならではの音が魅力のドラムマシンです。TR-808や909の実機に触れたことのある人ならば、そのアナログ特有の音の変化や太さを間違いなく体感できると思います。また、本文では「DrumBlute Impact」の端子類についてはあまり触れませんでしたが、リアパネルにはメインのアウトプット端子に加えて、4系統のパラアウト端子も用意され、MIDI端子やUSB端子、アナログのクロック入出力端子も備えていますので、MIDI機器やPC、アナログのシンセやシーケンサーと組み合わせたシステムの一角としても活用できます。こういった使い勝手の良さも見逃せないポイントです。
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