テクノ界のレジェンド、DJ Q'HEYがARQの魅力に迫る!
ズーム「ARQ AR-96」試奏インタビュー
【DJ Q'HEY編】
ズーム「ARQ AR-96」試奏インタビュー【DJ Q'HEY編】
2016/10/26
今年18年周年を迎えた国内最長寿テクノパーティー「REBOOT」やレーベルパーティー「MOON AGE」をオーガナイズするDJ Q'HEY。まさにテクノ界のレジェンドとも言える彼に、ズームARQの印象を語ってもらった。音質や使い勝手など、はたしてどんなコメントが飛び出すか!? テクノ系のトラックメーカーやDJは必見のインタビューだ。
──まず始めに製品を見たときの第一印象からお聞かせ下さい。
Q'HEY:今回、予備知識なしでARQの箱が届いたんです。で、パッと開けてみたら、中に蛍光灯のようなものが入っていて(笑)。これが“シンセサイザーなのか”といきなりビックリしました。
──電源を入れてみてどうでしたか?
Q'HEY:蛍光灯の部分が“キラ、キラ、キラッ”て、そこでまた驚かされて。でも、この1つ1つの光った部分で何かするんだろうなとは直感的にわかりました。ただ、表に出ている再生ボタンや停止ボタン以外の使い方はナゾだなぁと。
──プリセットに入っているサウンドの印象はいかがでしたか?
Q'HEY:実は音を出すまでは、最近流行のEDM系がまずは入っているんだろうなと思っていたんです。でも、実際に聴いてみたら、とてもアンダーグラウンドな音が入っていて。例えば、いきなり最初の方に「DEEP HOUSE」が入っていたりとかね。今のパリピ(Party People)に迎合してない、骨太なサウンドを入れているんだなと思いました。
──出てくる音の質感などはどう思われました?
Q'HEY:すごくそれぞれの音が明瞭だなと。楽曲の作品としては、もっとニジんだような音も必要だとは思うんですが、各音が明瞭に聴こえた方がユーザーは扱いやすいと思います。例えば、それぞれのパッドにアサインされている音をミュートしたり、操作するとどんな効果になるかとか。音が見えやすい印象がありましたね。
──ズームとしては、初のシンセサイザーということですが、他のメーカーなどと比較して何か違いを感じましたか?
Q'HEY:ズームさんと言えば、僕もこれまでエフェクターとかでよくお見かけして。でも、サウンドうんぬんの前に、ある意味ズームさんだからこそ作れたマシンなのかなと思います。デザインも音も今までにない発想だし、何年か経ったときにローランドのTB-303のような名機になっている可能性を感じますね。
──ARQでトラックを作ってみていかがでしたか?
Q'HEY:正直、最初はプリセットの再生と停止ぐらいしかわからなかったのですが、「Empty」パターンから作るという概念さえ知ってしまえば、あとはスイスイ行けたなと思います。トラック作りの途中でパッドを押せば、その場で音が確認できるし、LEDも光りますしね。まず「Menu」ボタンを押して「Empty」パターンにたどり着けるかどうかが、ひとつのハードルだと思います。そのハードルさえ超えれば、あとは基本的には「KIT」を押してサウンドを選んでいくだけですからね。
──キットや音色によって、パッドが色分けされているのもわかりやすいですよね。
Q'HEY:そうなんですよ。そこも斬新だと感じました。赤がキック系とかね。しかも、自分でもカスタマイズできるし。色を使ったパフォーマンスも相当手の込んだことができそうです。
──制作ツールとして、具体的にはARQをどのように使いたいですか?
Q'HEY:普段、僕はスタインバーグCubaseを主体にしつつ、状況に応じてエイブルトンLiveを使っているんですが、ARQを制作ツールとして使うならば、やはりパターンの部分を使いたいですね。ARQにはかなり面白い音が入っているし、これいいなと思ったらパパッとARQでパターンを組んで、あとはCubaseに流し込んで。最終的な曲作りはDAWで行なうことになると思います。
──では、パフォーマンスツールとしてはいかがですか?
Q'HEY:ARQの“光る”という部分はDJパフォーマンスで強力な武器になると思いますね。僕だったら、ARQの本体にサンプルをキャプチャーしておいて、リングコントローラーから再生するといった感じになると思います。
──具体的にはどんなサンプルを仕込みたいですか?
Q'HEY:まずはボイスサンプルでしょうね。加工されたボイスとか、楽器の一部になるようなものとか。自分のパーティー名とか、その日のイベントの主旨を再生しても面白いと思います。僕はやらないですけど、EDMのDJなんかは“プッチョ、ヘンズ、アップ(Put your hands up!)”とか良くマイクでパフォーマンスしていますよね。ARQのパッドにアサインしておけば、マイクではできないような“プッチョ、プッチョ、プッチョ、プッチョ、プッ、プッ、プッ、プッ”みたいなパフォーマンスもできると思うし。
──リングコントローラーの使い勝手はいかがですか?
Q'HEY:手に触れた部分のパッドを無効にする「グリップポジション機能」がいいですね。片手しか対応していないと思ったら、ハンドルを握るみたいに両手で握っても機能するのに驚きました。まぁ、両手で設定する時は自分の頭や鼻なんかも使わないと設定のスイッチが押せないけど(笑)。
──その他、製品で気になったところなどありますか?
Q'HEY:やはりARQならではの操作性ですかね。クリエイティブな思考に頭を絞ることができるというか。クリエイターはパターンを組むことに集中せざるを得ないと思います。この仕様だからこそ、面白い使い方や新たなクリエイターが生まれてくる可能性もあると思うんです。
──では、今回製品を試奏してみて、あらためてARQはどんな人に向いている製品だと思いましたか?
Q'HEY:円状だし、鍵盤のMIDIの配列とはかなり違うので、今までのキーボードに慣れている人はかなり度肝を抜かれると思います。でも、キックやスネア、ベース、シンセ、サンプルなどをひとつのパターンとして考えることは、ある意味で曲作りに直結していると思うし。先ほども言ったように、今後ARQならではの仕様を上手く利用するクリエイターも出て来ると思います。そういった意味では、自由な発想を持っている人に歓迎される製品なのかなと思います。
プロフィール
Q'HEY
レーベル「Moon Age Recordings」主宰。今年18年周年を迎えた国内最長寿テクノパーティー「REBOOT」やレーベルパーティー「MOON AGE」をオーガナイズ。野外フェスティバル「Metamorphose」及びモンスタービーチパーティー「Maniac Beach」のレジデントDJでもあり、日本のテクノシーンをリードする存在として常に最前線で活躍している。アジア、ヨーロッパ諸国でプレイする機会も多い。1995年から作品のリリースを開始し、1998年には自身のレーベル 「Moon Age Recordings」をスタートさせ、その作品群はCarl CoxやSven Vath、Marco Baileyなどシーンを支えるDJ達のプレイリストに載るなど、ワールドワイドに高く評価されている。2006年にはアルバムQ'HEY + REBOOT 「Electric Eye On Me」、2007年にはShin NishimuraとのユニットQ'HEY + SHINのアルバム「Planetary Alliance」をリリース。HardfloorのRamon Zenkerとのユニット「Q-RAM」としても、これまでに3枚のシングルをリリースしている。2011年東日本大震災を受けてチャリティー・プロジェクト「BPM Japan - Be Positive by Music Japan」を設立。コンピレーション・アルバムやイベントの企画を通じての収益金を被災者への義援金として寄付する為の活動に取り組んでいる。2012年にはフジロックフェスティバルに2度めの出演。2013年にはREBOOTの15周年ツアーを国内11箇所で開催。そしてJeff Millsのアルバム「Where Light Ends」にリミキサーとして参加。さらに日本発の新レーベル「Torque」からEPやリミックスのリリースを重ねた後、アルバム「CORE」をリリースし、Beatportのテクノチャートで5位に入るなど、世界的に好セールスを記録している。またインターネットラジオ局block.fmにて、毎週火曜に放送している番組「radio REBOOT」でのパーソナリティーも務めている。
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