アンダーグラウンドとメジャーの両シーンで活躍するWatusiさんがARQをチェック!
ズーム「ARQ AR-96」試奏インタビュー
【Watusi(COLDFEET)編】
ズーム「ARQ AR-96」試奏インタビュー 【Watusi(COLDFEET)編】
2016/12/16
様々なクリエイター/DJの方々に協力して頂き、ズーム「ARQ」の魅力を探っていこうという連載企画の第5弾。今回は、Lori FineとのユニットCOLDFEETでの活躍に加え、国内では中島美嘉、hiro、安室奈美恵、BoAなどの楽曲を手掛けるプログラマー/ベーシスト/DJのWatusi(ワツシ)さんの登場だ。アンダーグラウンドとメジャーの両シーンから絶大な支持を受けるWatusiさんの反応は果たして!?
──まずARQを見た第一印象からお聞かせ下さい。
Watusi:僕はこういった機材を、まずはマニュアルを見ないでどこまでできるか挑戦するんですよ。で、やってみたらARQはだいたいのことができましたね。とりあえず、パターンを聴くことから始めて、パターンを打ち込んだり、間違えたところを消したりとか。そして、これができたのは自分がやりたい操作の近くに、割と多くのボタンが配置されていることが大きいのかなと。とにかく、すぐに使えるというのがファースト・インプレッションです。あと、エフェクトに関しても、フィルターならこのツマミがフリケンシーだろうなとか、ディレイならこれがフィードバックだろうなとか、思った通りのところでパラメーターも動かせるし。ライブでプレイするときのわかりやすさというか、場所の適材適所も感じました。ビックリするようなルックスにも関わらず、ほしいところにちゃんと必要なものがある機材だなという印象です。
──実際にARQを鳴らしてみて、サウンドに関してはいかがでしたか?
Watusi:皆さんそうだと思うんですけど、逆に新鮮というか驚きましたね。
──というと?
Watusi:こういった見た目だし、最初のプリセットはもっと派手な感じのダブステップとかEDM系かなと思ったんですよ。もちろん、そういうった感じのものもパーツとしては入っているんですけど、実際はダークコアとか、ディスコとか、アンダーグランドなシーンの良いところをちゃんとすくっているというか。しかも、かなりの数のプリセットが用意されていて。あとネーミングでも笑わせてもらったかな。プリセット制作者のニヤッとした顔が浮かびます。このサウンドは「だろ!?」みたいな。
──では、Watusiさんならば、ARQをどのように使えそうですか?
Watusi:まず、僕自身について言えば、今までのキャリアで身体に染み付いている曲作りへのアプローチと、想像もつかない革新的なことを、どのようにバランスを取るかいつも考えているんです。それがフレッシュで長持ちするというか、自信を持って世の中に曲を出す秘訣なんじゃないかなと。そういうこともあって、まずは曲作りの取っ掛かりはいつも変えるようにしていて。例えば、メロディーを考えるのに、あえて和音の出ないシンセベースの音を出してみたり、実際にベースを担いでみたり。リズムを考えるのにわざとノイズだけで作ってみたり。で、その結果、その時は何も生まれなくたっていいんです。そういったチャレンジの組み合わせが、あとから何かのヒントになったりするんですよ。なので、僕だったらARQのプリセット名が、たとえダークテクノであっても、春っぽいR&Bのメロディーを考えるのに使うかもしれないし。
──それは面白い発想ですね。
Watusi:ARQの場合、最初からいい感じにイジってあるベースの音色も多いので、ちょっとエンベロープをエディットするだけで、ベースからリズムやメロディーを考えるなんてこともできそうですよ。あとやっぱり、ARQは鍵盤の並びになっていないのがいいんですよ。打楽器を叩くようにコードを探ったりできるし、僕らのようにある程度長く音楽を作っている人間にとっては「新たなバグと出会える」というか。
──ARQには、フレーズ以外にキックやスネア、ベース、上モノと様々な音色もあらかじめ用意されているわけですが、特に即戦力になりそうなものはありましたか?
Watusi:エレクトリックのタムは素晴らしく良いですね。あと「ブーン」というドラムンベース的なサブベースの音も良いです。サブベースの音はピッチ感を含めて、音圧も良くて。難しい言い方だとVUがあまり振らない厚くなり過ぎない音です。タムにも同じことが言えて、単音で鳴らしたときに胴鳴りが良くてもオケに入れたときにマスキングされて存在感が出ないものも多いんですよ。
──これらの音を使う場合は、Watusiさんがお使いのProToolsに直接録音する感じでしょうか?
Watusi:はい。欲しい音を取り込んで、後はProTools上で並べて使うことになると思います。今はソフトシンセもたくさんありますけど、このARQのタムやサブベースの音はすごいですよ。どれも前に飛び込んでくるような音というか、デフォルトの状態で、僕らがコンプなどを駆使して作るサウンドにすでになっていますね。実は今制作中のロックっぽい曲でもやってみたんですが、ARQのタムを1つ加えるだけでビートがより引き立つというか、有機的になるんですよ。まさに即戦力です。
──さて、ARQはパフォーマンス用のツールとしても魅力があると思いますが、こういった点はいかがですか?
Watusi:本当にARQって色んなことができちゃうんで、怖いくらいですけど。僕ならパーティーでダンサー8人くらい全員に持たせたいくらいですよ(笑)。カラフルだし、お客さんも盛り上がるだろうし。しかも、こう見えて落としても割れないですしね。あと、光り方や振り方が音とシンクするというのが大事なポイントで、VJもそうですけど、音と映像がシンクすることでさらなる興奮を生み出せますから。
──Watusiさんの場合、具体的にはDJプレイにどのようにARQを活用できそうですか?
Watusi:僕は「TAP」機能にすごく魅力を感じますね。かけているレコードのテンポに合わせてARQのテンポがすぐに同期させられるので、ジェフ・ミルズが909を走らせるのと同じように、ARQにいくつかのパーカッションとかのパターンを用意しておいて、レコードと同期しながらプレイさせたり、場合によってはレコードとレコードをつなぐ際にARQを活用してもいいし。もしくは、ベースのパターンとかで、200番台は全部マイナー、210番台は全部メジャーとか。そうやってパターンを用意しておいて、タップでその都度テンポを合わせて活用する手もあると思います。
──まさにDJの一部としてARQを使うという感ですね。
Watusi:そうですね。曲をつなぐときにARQのビートだけになってもいいし、で、それにベースを加えたり、場合によってはキャンセルしたりとか。ARQならば、リングコントローラーを叩いて、その場で新たな音を足すこともできますからね。
──その他、今回ARQを試奏してみて何か気付いた点などはありましたか?
Watusi:今までも色々なグルーヴギアを見て来たのですが、ARQはそのすべてを網羅していると思うし、見た目は斬新ですけど、すごく論理的にできていると思いました。一般的なグルーヴギアはパターンはできても、それを曲として仕上げるのが大変だったりするんですよね。でも、ARQはパターンをソングとして構成するのも視覚的にわかりやすかったし。これならば、DAWがなくてもこれだけで曲ができちゃうと思います。
──では、あらためてARQはどんな人にオススメだと思いますか?
Watusi:ARQの音色はダンスミュージックに特化しているように見られますけど、普通にエレピのコードやベースも入れられますし。実は飛び道具的に見えながら、音楽の作り方に忠実というか、制作する上でも理解しやすい作りになっています。だから、DJや作曲家はもちろんですが、シンガーの方などにもオススメできると思います。あと、先ほど話した通り、パターンをソングとして構成しやすいので、これから曲を作ってみたいという入門者に「作曲のいろはを学ぶツール」としてもオススメできると思います。
プロフィール
Watusi(COLDFEET)
Lori FineとのユニットCOLDFEETのプログラマー/ベーシスト/DJ。COLDFFETのユニークな世界観は国内外で評価を受け、US、UK、EU各国からアジア各国でも多くの作品がリリースされている。国内では中島美嘉の多くのシングルを始めhiro、安室奈美恵、BoA等を手がけ、アンダーグラウンドとメジャーを繋ぐ多忙なプロデュース・チームとしても活躍。COLDFEETとしてこれまでに7枚のアルバムをリリース、iTunes1位を始め数々のダンスチャートを席巻。 連載含む執筆も多く、‘12年には自身の制作のノウハウを詰め込んだ「DAWトラック・メイキング」の出版、’13年にはディスコ/ブギー・ミュージックのディスク・ガイド「DANCE CLASSICS Disc Guide」(Amazon音楽書籍1位)など3冊の書籍があり、全国各地で独自の音楽制作のノウハウを伝える「Watusiの私塾」を開催し多くの受講者を集める。 ’14年から独自のテクノ・スタイルでのソロ作品を連続リリース、オリジナリティ溢れるソロ・アルバム「Technoca」を世界同時リリース。’15年には「21世紀の正しいディスコ」をキーワードにユニット、TDOをスタート。SILVA、GILLE、birdをシンガーに招き3枚のEPとアルバムをリリース。同時に屋敷豪太、Dub Master X、いとうせいこうなどとライブ・ダブ・バンド、Dubforceを結成。様々なフェスに出演する。 長きにわたる経験に裏付けられた「日本から未来へ繋がっていくバレアリックな音楽」を量産/発信し続ける。
http://www.coldfeet.net/
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