打ち込みサウンドとビッグバンドのコラボレーション
角松敏生『Breath From The Season 2018~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~』インタビュー
角松敏生『Breath From The Season 2018~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~』インタビュー
2018/04/25
──実際ライブをやっていかがでしたか。
角松:もの凄く楽しかったんですよ。で、これはありだなって思って。自分の曲がJAZZ化できるってそこでよく理解できたんです。でも、やっぱり付け焼刃でやってもしょうがない。そして去年。3年目でようやくリズムアレンジも自分でやってアローさんに投げたら非常に良い仕上がりになって。ようやく自分の曲のスウィング化が出来たなと思いました。3年かけて学んで色々シミュレーションして、3年がかりでこれは面白いっていうものが出来たから、これは記録として残すべきだと思ったんです。
──去年というと同じリメイクの『SEA IS A LADY 2017』のリリースもありましたが、何か繋がりはあるのですか。
角松:去年ちょうど『SEA IS A LADY 2017』の企画も出ていたので、同じ時期に『Breath From The Season』というタイトルに乗っかってビッグバンド・アンサンブルを主体とした角松敏生楽曲のリメイクをリリースするのはイメージ的にもわかりやすいし。だから次やるんならこれだっていう確信犯的な発想はありましたね。
──今度はアレンジに関してお聞きします。前作『Breath From The Season』ではコンピュータ・プログラミングによるフレーズと生演奏ブラスサウンドとの融合がとても斬新でしたが、今回のアルバムではコンセプトから見て、シーケンス・フレーズの割合(頻度)はどんな基準で決めていかれたのでしょうか?
角松:今回ビッグバンドですが単純にすべて生ってわけじゃなかったんです。すでにアロージャズオーケストラさんに僕のスウィング化された譜面が20曲以上あるので、当初それはすべて生でやろうと思ってたんです。ですが最初にプロトタイプの楽曲として「I’LL CALL YOU」を考えた時に、この曲はエッジを効かせたかったんですよ。そこでプログラミングの上にアローさんのアレンジが乗ったら面白いだろうなと思って。
そこで構成的にどうなっていくかって流れで考えたら「Gazer」「Have some fax」そして「A Night in New York」などの4ビート的ではない曲のトライアルもしようという発想が出てきたんです。アロージャズオーケストラさんとはいつも生でライブやってるんだけど、ガッチリしたソリッドなプログラミングサウンドの上にブラスサウンドだけ生っていうのを乗っけてみたい!と思ったんですね。
──当初予想していたよりは、プログラミングの曲が多かったイメージでした。
角松:でもプログラミング自体は4曲のみですけどね。今回プログラミングに関してはドラムとシンセベースのリズム体が主体であとはみんな生です。プログラミングのドラムとシンセベース、あといくつかのPAD系をスタジオに持って行ってそこに生演奏をかぶせるっていう。基本的に今回のレコーディングは3日間で録ったんですよね。最初の1日が「生days」、2日目が「打ち込みdays」、3日目がまた「生days」って感じで全曲録りました。
──ライブではどのような編成で再現するのですか。
角松:ドラムもベースももちろん全部生ですよ。ただアレンジとしてはプログラミングの体でやる曲もあります。
──収録されている「SHIBUYA」はオリジナルでは全ての拍の頭にスネアが入っていてタイトなグルーヴ感を演出しているのに対して、今回はスウィング・ビートへシフトした結果、バックのコンガのリズムパターンがとても心地良く(浮き出た)感じたのですが、これは狙い通りと言ったところでしょうか?
角松:アレンジによって印象が変わるっていうのは大きなところではあるんですけど、今回は基本的にスウィングしてるんですよ。リズムで解析していくならやっぱり打ち込みでいうところのスウィングバリューがかかっています。
──おそらく角松ファンの人は、対比ということだとサックス・ソロとか「AIRPORT LADY」はオリジナルではジェイク(Jake H. Concepcion)さんのすごくメロウなソロが好きだった方もいると思います。あのソロからどう変わっていくのかも今回の聴きどころかと思いますが、それぞれのソリストに対して要望や指示はあったのですか。
角松:ないです!「AIRPORT LADY」はアローの河田さんっていう70歳近い方が吹いてるんですけど言わなくてもそうなってるんですよ。だからやっぱり優秀なミュージシャンって考え方一緒なんでしょうね。ここはこう行くべき、みたいなね。
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