有名モニタースピーカーが一堂に集結!
【イベントレポート】SONIC ACADEMY SALON発表会 & モニタースピーカー試聴&展示会
【イベントレポート】SONIC ACADEMY SALON発表会 & モニタースピーカー試聴&展示会
2020/02/05
ソニーミュージックが開設している「SONIC ACADEMY SALON(ソニアカ)」は、音楽制作におけるあらゆるテクニックを伝授してもらえる、会員制の音楽制作コミュニケーションサロンです。音楽業界の最先端を担うレーベルプロデューサーやクリエイター陣がメンター(講師)として参加しています。今回は、2019年12月10日にソニーミュージックで行なわれた「ソニアカサロン発表会」の模様をレポートします。また、特別企画として、好きな音源で有名ブランドのモニタースピーカーを自由に試聴できる試聴&展示会も同時に開催されました。フリーで活躍しているエンジニアの伊永拓郎氏に、試聴モデルの印象なども語ってもらいました。
取材:目黒真二 写真:小貝和夫
※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2020年2月号)より抜粋したものです。
詳しくは、サウンド・デザイナー公式サイトをご覧ください。
↑熱気溢れる中、当日参加した、お互いの作品の発表を温かく見守っている会場。作品の発表形態は、オケをバックに歌う人から、曲のデータを再生する人、弾き語りをする人まで、そのバラエティも豊富で、会員同士のコラボ作品(作詞を別の会員が担当)などもあった
↑左から、加茂 啓太郎氏(ソニー・ミュージックエンタテインメント/プロデューサー)、重永亮介氏(作曲家/編曲家/サウンドプロデューサー)、灰野一平氏(ソニー・ミュージックレコーズ/プロデューサー)
次の時代のミュージックシーンを震撼させる楽曲が誕生の予感!
ソニアカサロン発表会は、1年間同サロンで学んできたことを発表する総決算の場です。会場には、顔馴染みの会員同士で談笑する姿や、緊張した面持ちで作品のデータを確認する姿、はたまた本番で歌うために発声練習をする姿もあり、いつものセミナーとは違う、ある種独特の雰囲気に包まれていました。
今回は、重永亮介氏(作曲家/編曲家/サウンドプロデューサー)、加茂 啓太郎氏(ソニー・ミュージックエンタテインメント/プロデューサー)、灰野一平氏(ソニー・ミュージックレコーズ/プロデューサー)という3人のメンターが、各作品について直接アドバイスをしてくれるとあって、「作った作品を認めてもらいたい」という参加者達の意気込みが伝わってくる空気の中、発表会が始まりました。
参加者は、すでに自分の作品をライブやWeb上で発表しながら活動している人から、作品を作ったのが初めてという人、さらに今まで音楽とは離れていたけど、改めて音楽で成功することを夢見ているという人まで、年齢やキャリアも様々。共通しているのは、これまでじっくりと当アカデミーで勉強してきたこと。まずは発表された各曲のバリエーションの広さに驚かされました。「尊敬しているアーティストへのオマージュ」であったり、「正統派ポップスを極める」、「これまで聴いたことがない超個性的な楽曲」など楽曲は多種多様です。
それに対するメンターの方々のアドバイスが実に的確でした。例えば、「優れた作品というのは、どこかで聴いたことがあるかなぁ〜という曲だけど、何の曲だったか特定できない曲なんです。つまり、聴いた時にリスナーの耳にスッと入ってくる曲です」という意見や、「いい楽曲を真似することが、名曲を作るための近道です」という作曲の手法そのものに対するアドバイスもありました。その一方で、「作品としては完成されている。ここからリスナーの耳を惹きつけるためには、どこかのセクションで意外性が必要」という指摘や、「サビがいいから、サビを盛り上げる前にその前のセクションで、いったん勢いを落としておく方がいい」というように、“たった今演奏された曲のクオリティを、どうしたらもっと良く聴かせられるか?”という具体的なアドバイスもあり、発表している本人はもちろん、他の参加者達も自分のことのようにうなずいたりメモを取ったりする姿が見受けられました。
さすがアカデミーの会員達だけあってどの曲も優秀で、「近い将来、この中から日本のミュージックシーンだけではなく、世界の舞台で活躍するようなクリエイターが続々と誕生するのでは?」という予感がしました。
人気のモニタースピーカーで作品を聴き比べると新たな発見が!
↑モニタースピーカーの試聴会には、ソニアカ会員以外に、エンジニアも何人か会場を訪れ、それぞれのリファレンス曲を持ち込んでチェックしている様子も見受けられた。「曲だと耳が慣れてしまい、モニター音の良し悪しがわからなくなってしまうので」と、自然の音などの環境音を持ち込んで確認する姿もあった
↑ソニーミュージック専属エンジニアを経て、現在フリーで活動中の伊永拓郎氏。「最近は各メーカーさんが“これからの音の傾向はこうだ”と提案しているようなモデルが増えてきたような気がします」と、この日の感想を語ってくれた
この日は発表会の会場の奥にある2つのコラボルームを使用して、有名ブランド5社(アダムオーディオ、PMC、タンノイ、IKマルチメディア、フォステクス)のモニタースピーカーを試聴できるコーナーが用意され、会員が自分の作品を様々なスピーカーで再生して聴き比べができる「モニタースピーカー試聴&展示会」が行なわれました。試聴モデルは、2万円〜5万円前後のニアフィールドから、40万円〜70万円の本格的なスタジオモニターまで、多種多様なモデルが揃いました。
今話題のモデルが一堂に会するとあって、ソニアカ会員達が入れ替わり立ち替わり試聴。モニターコントローラーで各モデルを切り替えたりボリュームを調整しながら、じっとそのサウンドに耳を傾けていたのが印象的でした。
実際に会員に感想を聞いたところ、「今はイヤホンやヘッドホンでモニタリングして作品を作っているのですが、知り合いに聴いてもらうと環境が違うせいか、自分が作ったサウンドと違う印象を持たれることがあるんです。今、モニタースピーカーの購入を検討しているので、色々なタイプで聴き比べができて良かったです」、「今は中級クラスのモニターを使っているけど、これから本格的に音楽制作をするにあたって上級クラスにステップアップしたいと考えていたので、今回試聴ができて参考になった」、「新しいモデルが試聴できると聞いたので、自分が使っているものとどう違うのか確認したかった」など、試聴の目的も様々でした。
さらに、「こんな大音量で、家で鳴らせたらいいのに」や、「自分でミックスした音が全然違って聴こえた」、「メーカーやモデルによって全然キャラクターが違って面白かった」といった、試聴会ならではの感想も聞けました。
5ブランドのモニタースピーカーは、メンターの1人でもある、フリーエンジニアの伊永拓郎氏もじっくり試聴していました。メーカーの担当者がじっと固唾を飲んで見守る中、モニターコントローラーでシビアに音量を調整しつつチェックしている姿を見て、どんな点に注意を払って確認しているのかたずねると、「音量を下げていった時に、各楽器のバランスが崩れないモデルが優れたモニタースピーカーだと僕は思っています。キックやベースとか、低域の音から聴こえなくなるタイプは制作には適していないと考えています」とのこと。そこで、いくつかのモニターを聴き終えた伊永氏に感想を聞くと、「さすが人気のモデルばかりなので、どのモニターも音量を下げていってもしっかりと鳴っていますね」と満足げの表情に。リファレンス用の楽曲を切り替えて、「脚色のあるスピーカーだと実際は歪んでいても歪んでいないように聴こえる危険性があるので、そこを調べます」と入念にチェックを続けていました。
「例えば、どんなモニタースピーカーが理想なのですか?」と聞くと、「レコーディングの時には、音のスピードが速いモニターを使って、キックとボーカルのトランジェント(瞬間的に入ってくる音の時間的変化)を正確に判断する必要があるんです。ただ、実際に作業を行なうと耳がすごく疲れるんですね。その点、ここにあるモニタースピーカーは長時間聴いていても耳が疲れにくくて、しかも音がしっかり出ていますからいいと思います」とのこと。最近は色々な素材を使った製品が続々と出てきて、メーカーごとに工夫がなされているようです。
最後に全体的な音の印象を伊永氏に聞くと、「やはり筐体やアンプのパワー、DSPの有無でそれぞれ個性がすごく出ていますね。あと、こうやって複数のモニターを聴き比べていると、リスニングポイントの距離で聴こえ方が変わってくるのがわかります」と、プロの視点での感想をたっぷり語ってくれました。
読者の皆さんも、楽器店のモニタースピーカー・コーナーで試聴する際に参考にしてみてください。
↑ニアフィールドタイプのモニタースピーカーとして、タンノイGOLD 5、IKマルチメディアiLoud MTM、フォステクスNF04Rを設置。音響調整に、ヤマハの調音パネルをスピーカーの後ろ側にセットしていた
↑PMCのtwotwoシリーズとADAM Audio S2Vを聴き比べする様子。音響調整用には、コラボルーム常設の吸音パネルをスピーカーの後ろ側に設置し、左右にVery-Qの自立型吸音パネルを配置した
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