場所は来年1月1日に営業を終える東京・お台場のライブハウス、Zepp Tokyo
サイダーガール、10月31日に自主企画ライブ「ぼくらのサイダーウォーズ5」を開催!
サイダーガール、10月31日に自主企画ライブ「ぼくらのサイダーウォーズ5」を開催!
2021/11/02
撮影:Tetsuya Yamakawa
サイダーガールが10月31日、自主企画ライブ「ぼくらのサイダーウォーズ5」を開催した。今回、彼らが会場に選んだのは、来年1月1日に営業を終える東京・お台場のライブハウス、Zepp Tokyo。
「Zepp Tokyoでライブするのは最初で最後。ギリギリ間に合った。Zepp Tokyoでライブができてよかったと思いながらステージに立たせてもらってます」(Yurin/Vo, Gt)
「Zepp Tokyo(のステージ)から見る客席、めちゃめちゃエモだね」(知/Gt)
「あのサイダーガールがZepp Tokyoでワンマンするって、まるで天地がひっくり返るような出来事だよ。だって、バンドを結成したとき、Zepp Tokyoでワンマンするなんて考えてなかったじゃん」(フジムラ/Ba)
中盤のMCでそんなふうに語っていたように念願のZepp Tokyoワンマンにはメンバー3人、それぞれに思うところがあったらしく、この日のライブは前回(「ぼくらのサイーダーウォーズ4」)のLINE CUBE SHIBUYA公演とはまた違うやり方で趣向を凝らした見どころ満載の2時間となったのだった。
ステージの上手と下手に置かれた打ちっぱなしのコンクリート風の壁と言うか、パーテーションが何かを予感させる中、SEが流れ、知、フジムラ、サポートドラマーの3人がハロウィンを意識したマスクを被ってステージに登場。日頃から、陰キャと自ら言っている彼らの仮装に2階席まで埋めた観客が思わず「おおっ」となったところにハンドマイクのYurinが飛び出してきて、演奏は「週刊少年ゾンビ」でスタート。
「Clap your hands!!」(Yurin)
「Zepp Tokyo、遊ぼうぜ!」(フジムラ)
そこから、Yurinとフジムラが観客に声を掛けながら、バンドはダンサブルな「パレット」「ベッドルームアンドシープ」を繋げ、その場で飛び跳ね始めた観客とともに序盤から一体感を作っていく。
「今日を特別な1日にできたら!アットホームな感じもありつつ、(ステージには)ソファーもあるし、ゆっくり楽しんでもらえたらいいなと思います」(Yurin)
改めての挨拶を挟んでからのブロックでは、「いろいろな曲をやっていくので、自由に楽しんでいってください!」と知が言ったとおり、それまでのダンサブルなノリとは打って変わって、轟音のイントロから緊張感を演出した「空にこぼれる」、テンポをちょっと落として、メランコリーを観客と共有した「ID」、シャッフルのリズムで意表を突いた「月に唄えば」、シーケンスも使ったジャズっぽいインタールードからなだれこんだギター・ロック・ナンバー「成長痛」と、それぞれにユニークな魅力を持つ4曲を披露。ぐいっと観客の気持ちをひきこんだところで、「後ろの人は見えるかわからないけど」とフジムラがこの日、メンバーそれぞれにサイダガちゃん(フジムラ)、コウモリ(Yurin)、キズ(知)を顔に描きこみ、陰キャなりにハロウィンを楽しもうとしていることをアピール。それに応え、「ハロウィンにぴったりの曲、持ってきました。みんなでワチャワチャできたらと思います!」と知が声を上げ、バンドが演奏したのがこの日、初披露の新曲「トロール」だ。
すると、ステージ下手のパーテーションが回転して、ハロウィン風のセットとともに「待つ」のMVに出てきた(着ぐるみの)熊が2匹現れ、踊り始める! 怪しいムードもある「トロール」のダンス・サウンドに観客も手拍子しながらゴキゲンだ。そこからバンドがたたみかけるように繋げていったのが、ちょっと投げやりなパーティー・ソングの「なまけもの」、ファンキーな「化物」、高速ファンクの「フューリー」だった。
そんなふうにバンドが演出した曲のタイトルからしてハロウィンにふさわしいパーティータイムを観客も大歓迎。会場の温度もぐっと上がる。そして、そんなパーティータイムを締めくくった「待つ」では、今度はステージ上手のパーテーションが回転して、「待つ」の歌詞とMVに出てくる《ルーム・ワンオーワン》を再現したと思しきセットとともに再び熊が登場。アーバンかつグルービーな演奏を繰り広げるバンドとともにダメ押しでパーティータイムを盛り上げたのだが、そんなパーティータイムの終わりが《一人きりのミッドナイト》と歌う「待つ」というところがなんともサイダーガールらしい……。
その「待つ」と「トロール」が12月1日にリリースするニュー・アルバム『SODA POP FANCLUB 4』に収録されることに加え、来年、全国ツアーを開催することをさりげなく発表したバンドは、「未来について語ることはうれいしけど、過去を振り返ることも大事。懐かしい曲を1曲」(知)と「群青」から後半戦をスタート。
ギターのコードをかき鳴らす、このロック・ナンバーは、15年6月に自主レーベルからリリースしたミニアルバム『サイダーのしくみ』の収録曲だが、そこに繋げたのが『SODA POP FANCLUB 4』から一足早くライブで披露しているノスタルジックなロックナンバー「猫にサイダー」。そんな展開が印象づけたのは、サイダーガールが持つエモーショナルなギター・ロック・サウンドというバックボーンだったのが、どんなにバンド・サウンドの幅が広がったとしても、そのバックボーンが失われることはないということを、さらに「NO.2」でアピール。その「NO.2」ではエキサイトしすぎたフジムラが転倒するというハプニングも見どころに変えたのだった。
そして、「サイダーガールらしく最後まで全力で駆け抜けていきます。みなさんついてこられますか⁉」とYurinが声を上げ、観客の気持ちを煽るように前述したバックボーンを象徴する代表曲「エバーグリーン」でラストスパートをかける。
そこに「新曲やります!」(Yurin)と繋げたのが「トロール」同様、この日、ライブ初披露となる「シンデレラ」。ワイプを求めるYurinに応え、観客が一斉に手を横に振る光景はまさに壮観の一言――と当たり前のように書いてしまったが、TVアニメ『古見さんは、コミュ症です。』のオープニングテーマとして、ファンの多くがすでに耳にしているとは言え、ライブ初披露でいきなりバンドと観客が1つになれるということは、キャッチーであることも含め、観客の気持ちをいきなり鷲掴みにできる魅力があるということだろう。サイダーガールの最新モードを物語るダンサブルなポップ・ナンバーは、語りかけるようなYurinの歌が新境地も思わせた。
「みんなとまた歌って踊れるようなライブができる日もそんなに遠くないと思います。そんな日が早く来ることを願って終わりたいと思います。心の中で歌って、踊ってください!」(Yurin)
バンドがこの日、本編ラストに選んだのは「メランコリー」。ライブで、みんなと踊るためにサイダーガールが初めて作ったパーティー・ソングだ。《ぐるぐるしてるんだ》という歌詞に合わせ、観客がぐるぐると手を回す。その「メランコリー」がいつも以上に力強く感じられたのは、これまで何度もライブで演奏してきたこともさることながら、この日、この曲に込めた願いがそれだけ強かったからだ。
「アルバムのリリース・ツアーじゃないから、今度出るアルバムからやったり、懐かしい曲をやったり、いろいろな曲をたくさん聴いてもらえてよかったと思えるライブになりました」とラストスパートをかける前にYurinが振り返ったように初披露も含め、新旧の曲を織りまぜた全20曲のセットリストは、常に新しいことに挑戦しながら、バンドの芯は決して揺らぐことはないサイダーガールの歩みを今一度印象づけるものとなった。もちろん、その歩みという言葉は、成長と言い換えてもいい。
アンコールは『SODA POP FANCLUB 4』から「ライラック」と最初期の「くじらの街」という、ともにギター・ロックと言える2曲を披露。同期でピアノとストリングスも鳴らした前者と荒々しい後者のコントラストがダメ押しで、ぐっと広がったバンドの表現の幅を印象づけると、終演後には「シンデレラ」のMVをフル尺で初公開して、来年1月15日からの「サイダーガール TOUR2022サイダーのゆくえ-SENTIMENTAL THEATRE-」の開催を発表するというサプライズも。2月23日のツアー・ファイナルでは、サイダーガール史上最大キャパとなるTOKYO DOME CITY HALL公演に挑戦する。サイダーガールの歩みは、これからさらに勢いを増していくに違いない。
なお、「シンデレラ」のMVは本日21時にYouTubeでプレミアム公開される。
文:山口智男
「ぼくらのサイダーウォーズ5」セットリスト
M-1 週刊少年ゾンビ
M-2 パレット
M-3 ベッドルームアンドシープ
M-4 空にこぼれる
M-5 ID
M-6 月に唄えば
M-7 成長痛
M-8 トロール
M-9 なまけもの
M-10 化物
M-11 フューリー
M-12 待つ
M-13 群青
M-14 猫にサイダー
M-15 NO.2
M-16 エバーグリーン
M-17 シンデレラ
M-18 メランコリー
en.1 ライラック
en.2 くじらの街
セットリスト再生はこちらから
https://lnk.to/ciderwars5
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