「またライブハウスで会いましょう!」

サイダーガール、「サイダーガールTOUR 2022 サイダーのゆくえ -SENTIMENTAL THEATRE-」が2月23日、TOKYO DOME CITY HALLでファイナルを迎えた!

サイダーガール、「サイダーガールTOUR 2022 サイダーのゆくえ -SENTIMENTAL THEATRE-」が2月23日、TOKYO DOME CITY HALLでファイナルを迎えた!

2022/02/25

サイダーガール

撮影:Tetsuya Yamakawa

サイダーガール

 

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サイダーガール

 

変幻自在の炭酸系ロック・バンドを掲げるサイダーガールが昨年12月1日にリリースした4thアルバム『SODA POP FAN CLUB 4』をひっさげ、全国11カ所を回ったリリース・ツアー「サイダーガールTOUR 2022 サイダーのゆくえ -SENTIMENTAL THEATRE-」が2月23日、TOKYO DOME CITY HALLでファイナルを迎えた。

これまでリリース・ツアーを開催するたび、ファイナル公演の会場を一回りずつ大きくしてきた彼らが今回、3階まであるバルコニー席がステージとアリーナを取り囲むTOKYO DOME CITY HALLを、なぜ会場に選んだのか。その理由はいろいろあるのだと思うし、それをあれこれと想像してみるのもおもしろいのだが、それはさておき、この日、サイダーガールは『SODA POP FAN CLUB 4』の全11曲を軸に新旧の楽曲を織りまぜた全21曲を披露。2時間におよんだ熱演とともに『SODA POP FAN CLUB 4』に音の広がりとして表れた成長に加え、今回のツアーの中で磨き上げてきたに違いない進境著しいライブ・バンドの姿をアピールしたのだった。

ステージのバックドロップにオープニング・ムービーとBGMが流れる中、メンバーがオンステージ。演奏は『SODA OPOP FAN CLUB 4』収録のダンサブルなポップ・ソング「待つ」でスタートした。そして、「ようこそ」というYurin(Vo/Gt)の短い挨拶を挟んで、やはり『SODA POP FAN CLUB 4』収録のメランコリックな「足りない」に繋げる。ライブのオープニングにもかかわらず、ともに抑えた調子の曲というところが興味深い。しかし、「足りない」の中盤、知(Gt/Cho)が激しいカッティングで、フジムラ(Ba/Cho)がスラップ奏法で演奏に熱を加えたところから流れが変わり始める。そして、「サイダーガール始めます! よろしくお願いします!」とYurinが声を上げながら、なだれこんだ「メッセンジャー」で演奏はいきなりヒートアップ! サポート・ドラマーが連打する2ビートに合わせ、手を振り始めた観客を煽るように「そんなもんじゃないだろ!」とフジムラが声を上げ、知がジャンプをキメる。

バンドの瞬発力を見せつけるようなドラマチックな展開に、いきなり気持ちを持って行かれた。1曲目から立ち上げっていた観客がバンドについて行こうと精一杯、手を振る光景にYurinが快哉を叫ぶ。「素晴らしい!」しかし、それがまだ、ほんの序の口だったことは言うまでもない。本当の見どころは、もう1曲、懐かしいロック・ナンバー「ドラマチック」をタイトな演奏で届けてから、リズムが跳ねるノスタルジックなポップ・ソングの「猫にサイダー」をはじめ、『SODA POP FAN CLUB 4』の収録曲を立て続けに演奏して、バンド・サウンドにおけるさらなる音色の広がりを印象づけた中盤のブロックだった。

歪みだけに頼らず、揺らし系のエフェクターを使って、耳を傾けずにいられないギター・サウンドを鳴らした「猫にサイダー」。エフェクトを掛けたYurinのボーカル、ワウ・ペダルを踏みながら鳴らした知のギター、フジムラが演奏したシンセ・ベースが1つになることで生まれる不穏な響きが歌詞にある《救いようない》心境を、見事に表現していた「ピンクムーン」。その2曲がバンド・サウンドの格段のアップデートを印象づけつつ、『SODA POP FANCLUB 3』の「ばかやろう」を挟むと、知とフジムラが弦をかき鳴らす熱演で、もう一段階、演奏の熱を上げたところで、もう1曲、『SODA POP FAN CLUB 4』から披露したのが「かいじゅうのゆめ」。せつない曲調という意味では、これもまたサイダーガールらしいと言えるのかもしれないが、揺れるようなメロディに加え、シーケンスで鳴らしたピアノ他の音色とバンドの熱演が1つに溶け合いながら作る轟音は、まさに新境地を思わせるものだった。

この時点でバンドは、すでに観客を圧倒していたと言っても過言ではない。そこまでの演奏に大きな手応えを感じていたのか、「全国を回ったツアーの思い出を胸に最後まで全身全霊で演奏します!」と、いつもは気持ちが先走りがちなフジムラが改めて、この日のステージにかける思いを語った言葉からも自信に裏打ちされた力強さが感じられた。

「身振り手振りで楽しめる曲もたくさん持ってきました」

本当は、みんなと一緒に歌いたいんだけどという気持ちを滲ませながら、Yurinが言ってからの後半戦は、ダンサブルなポップ・ソングのオンパレードだ。「Clap your hands!!」と観客に声をかけ、手拍子を求めた「週刊少年ゾンビ」、ハロウィンを題材にした、ちょっとコミカルでホラー感もあるパーティ・ソングの「トロール」、ゆったりとしたビートに観客が体を揺らした「なまけもの」、そして、指をくるくる回したあと、パンッパンッと手を叩く振り付けも楽しい「メランコリー」と繋げていき、存分に観客を楽しませた。

「東京最高! ありがとう! ライブってすごく楽しい! この日を一生の思い出にしてくれたらと思って、演奏してます」(フジムラ)

「1つの短編映画を見たように感じて欲しいというテーマがあった『SODA POP FAN CLUB 4』のツアーなので、映画館のように映画に没入するようなライブにしたいと思いました。思い出を1つでも持って帰ってもらえたらと思って演奏してます」(知)

「それこそ映画を見終わった後に書いた曲を、『SODA POP FAN CLUB 4』からやります。大事な人を思い出しながら聴いてくれたらうれしいです」(Yurin)

そんな前置きをしてから演奏したハートウォーミングなポップ・ソングの「再見」からは、『SODA POP FAN CLUB 4』からじっくりと聴かせる曲が続いた。どの曲もせつないという言葉がぴったりだが、シーケンスでピアノ、ストリングス、アコースティック・ギターを鳴らしながら、今までのサイダーガールにないようなメロディが印象的だった「melt」、Yurinによるアコースティック・ギターの弾き語りにバンドの演奏が加わる「マーブル」、ミラーボールが眩い光を放つ中、ダンス・ビートに合わせ、観客がワイプで応えた「シンデレラ」。それぞれに趣向を凝らしたアレンジも大きな聴きどころだった。

「まだまだ行けますか⁉」とフジムラが声を上げ、バンドはラストスパートを掛けるように「パレット」「約束」とアップテンポのロック・ナンバーをたたみかける。彼らがラスト・ナンバーに選んだのは、「ライラック」。『SODA POP FAN CLUB 4』収録のサイダーガールの王道ロック・ナンバーだ。その「ライラック」を演奏する前にYurinは、「心から感謝してます」と観客に語りかけた。

「いろいろな葛藤がある中、来るという選択をしてくれたみんなと一緒にライブができてとてもうれしいです。また満員のライブハウスで一緒に声を出して、踊りたいと思います!」
そんな気持ちを込め、精一杯演奏するバンドと、悔いを残さないように懸命に手拍子で応える観客の間に大きな一体感が生まれた。
ステージ後方からのライトがメンバーたちのシルエットを浮かび上がらせると、映画を思わせるエンド・タイトルが流れ始めた。しかし、席を立つ観客はいない。熱演を称える拍手がいつしかアンコールを求める手拍子に変わって、メンバーたちが再びオンステージ。ライブの本編を終えた余韻を味わいながら言葉を交わす中、
「ツアーが終わるのが寂しい」(フジムラ)
「じゃあ、1人でやる?」(知)
「わかった。ここから1人で47都道府県を回る。言っとくけど、トークショウだから」(フジムラ)
「誰も来ないでしょ!」(Yurin)
見事、オチがついたところでバンドは「飛行船」と「エバーグリーン」――ともにサイダーガールの王道のロック・ナンバーと言える2曲を披露した。知が加えたハーモニーが曲が持つ清涼感を際立たせた「飛行船」ではYurin、知、フジムラが一瞬、ギターとベースでユニゾンするという見どころに思わずニヤリ。一方の「エバーグリーン」からは、ついにツアー・ファイナルを終えるという解放感ではなく、むしろ最後の最後まで気持ちを緩めず、演奏しようという緊張感が感じられた。

ひょっとしたら、今回のツアー中、ライブに取り組む3人の気持ちもアップデートされたのかもしれない。そう言えば、この日、曲間のMCも短めだったような気がするのだが、そうなると、だ。

「またライブハウスで会いましょう!」と最後の最後にYurinは言ったが、サウンド面でも、メンタル面でもぐっとスケールアップしたサイダーガールのライブを、もっともっと大きな会場――たとえばTOKYO DOME CITY HALLと似た作りの、日本のロックの聖地と言われるあの場所で見てみたくなるではないか。終演と同時に、そんな期待がむくむくと膨らみ始めたのだった。

文・山口智男

「サイダーガールTOUR 2022 サイダーのゆくえ -SENTIMENTAL THEATRE-」
(2022.2.23) セットリスト
1.待つ
2.足りない
3.メッセンジャー
4.ドラマチック
5.猫にサイダー
6.ピンクムーン
7.ばかやろう
8.かいじゅうのゆめ
9.週刊少年ゾンビ
10.トロール
11.なまけもの
12.メランコリー
13.再見
14.melt
15.マーブル
16.シンデレラ
17.パレット
18.約束
19.ライラック
E1.飛行船
E2.エバーグリーン

 

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