歪みに変化を加えて音像に立体感を出す
ストレイテナー「FROM NOON TILL DAWN」を解説【ツインギター・サウンド研究 第4回】
ストレイテナー「FROM NOON TILL DAWN」を解説【ツインギター・サウンド研究 第4回】
2015/11/28
ギターバンドのヒット曲を音作り、ミックス、譜例を交えて解説する連載企画「ツインギター・サウンド研究」。第4回は、ストレイテナー「FROM NOON TILL DAWN」を取り上げよう。
今回の解説曲:ストレイテナー「FROM NOON TILL DAWN」
EMIミュージック・ジャパン
TOCT- 45058
●2本のギターの歪みに変化を加えてバンド全体の音像に立体感を出す
この曲は、比較的ギターサウンドの抜き差しが多いですが、基本的には左にベーシックの裏打ちのカッティングギターがあって、右に太いギターサウンドによるオブリが入るというアンサンブルになっているという部分は、他のバンドと共通しています。
左のギターは、オフマイクによる空気感も足しているように感じました。それも、オンマイクとオフマイクの位相をあえてズラすことによって、耳の後ろ側にギターが回り込むようなユニークな音像になっています。こういうのはシミュレーターではなかなか再現できないんです。それと、オフマイクのサウンドをほんの少しだけ右の方にも振っているようで、ステレオ的な広がり感も感じました。
音色的には、楽曲全体を歪ませることによって、バンドの一体感を出すことに成功していますね。サウンド全体の重心が非常に低く、ベースの存在感も印象的です。このあたりは、ブラスの帯域との棲み分けを意識しているように思えました。
全体のサウンドがこれだけ歪んでいるのに、ギターのエッジが非常に立っているのはすごいですね。実は、ギターのサウンドそのものはあまり歪ませていないのかもしれません。
特に、右のギターのオブリは、歪み成分をかなり意識的にコントロールしているように聴こえますね。左右のギターの歪みの量の違いによって、音像に立体感を出しているのではないでしょうか。
アンプシミュレーターでの設定例
GUITAR1
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GUITAR2
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どちらのギターも高域に特徴があり、あまり歪ませ過ぎずにエッジや立ち上がりを活かしている。フェンダータイプのアンプを使って、どちらのギターもトレブルとプレゼンスをやや高めにしよう。強くピッキングすると軽く歪み、弱く弾くとクリーンに近くなるようにセッティングをすると、参考曲に近いイメージのサウンドになるだろう。
全体の定位
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左右に振られたギターが基本だが、イントロや間奏では、センターよりも少しだけ右に寄せた定位から、複数のギターがセクションによって抜き差しされるように登場する。センターにはキック、ベース、スネア、ボーカルを定位。ブラスとドラムの金ものは、左右に広げて音像を大きく見せている。
「FROM NOON TILL DAWN」風のツインギター・フレーズ

ギター1はベーシックなコードカッティングが中心だ。それに対して、ギター2は要所要所でオブリ的なフレーズを弾いており、チョーキングでコードの構成音を行き来することで疾走感のあるフレーズに仕上げている。コードの構成音が把握できていると、このようなコードトーンを意識したプレイが可能になるので、コードブックなどを活用してコードの構成音を覚えるといいだろう。
ミックス分析:上村 量(エンジニア)
取材:黒田隆憲
譜例作成&解説:野村大輔(ギタリスト)
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