レンジの広い「音の壁」を作り出す
9mm Parabellum Bullet「ハートに火をつけて」を解説【ツインギター・サウンド研究 第5回】
9mm Parabellum Bullet「ハートに火をつけて」を解説【ツインギター・サウンド研究 第5回】
2015/11/29
ギターバンドのヒット曲を音作り、ミックス、譜例を交えて解説する連載企画「ツインギター・サウンド研究」。第5回(最終回)は、9mm Parabellum Bullet「ハートに火をつけて」を取り上げよう。
今回の解説曲:9mm Parabellum Bullet「ハートに火をつけて」
EMIミュージック・ジャパン
TOCT-22319
●左右のギターでローとハイを弾き分けてレンジの広い「音の壁」を作り出す
イントロのロシア民謡っぽい音階のフレーズが印象深いナンバーですね。この強烈なフレーズにリバーブやディレイをかけることによって、いい意味でさらにアクの強いサウンドにしているのが特徴と言えます。
左右に定位されたバッキングのギターは基本的に裏打ちのリズムを弾いていて、サビで白玉になって広がりを出しています。左右とも基本的には似たようなフレーズを弾いていますが、右の方がローポジション、左の方がハイポジションを主に弾いていて、2本が組み合わさった時にレンジの広い「音の壁」ができるようになっています。
音作りのポイントとしては、裏打ちのギターを歯切れ良くするために、EQを使って4kHzあたりをピンポイントでブーストしてサウンドをシャープにするといいでしょう。あと、9mm Parabellum Bulletのギターの歪みは、ビンテージっぽい歪みに比べると、比較的ハイファイなディストーションがかかっていて、エッジが立っているのが印象的ですね。
あと、これはこのレクチャー企画で分析したどのバンドにも言えることなのですが、先ほど言ったようなハイポジションのギターがバッキングを弾いて、ローまでしっかり出ているギターがオブリやリフを弾くというアンサンブルを構築することで、後者のギターの存在感が増すんですね。このテクニックは、読者の皆さんもぜひマネしてみてください。
アンプシミュレーターでの設定例
GUITAR1
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GUITAR2
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裏打ちのギター1はエッジ感と歯切れの良さが重要なので、フェンダー系のアンプをクランチ気味にして、トレブルとプレゼンスを高めにセッティングすると近い雰囲気が出せる。ギター2も似たような設定だが、こちらはある程度の歪みが欲しいので、マーシャルタイプのアンプをチョイスしつつ、ディレイやリバーブなどで余韻を付けよう。
全体の定位
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サビ以外の部分では、左右のギター共に裏打ちのバッキングを弾いており、センターにはキック、ベース、ボーカル、そしてイントロやソロなどで単音フレーズを弾くギターを配置。このギターにはリバーブやディレイが深めにかけられており、フレーズの独特な雰囲気を強調している。
「ハートに火をつけて」風のツインギター・フレーズ
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ギター1は的確に裏打ちのリズムをキープして、曲のドライブ感を支えている。それに対し、ギター2のフレーズは、コードの構成音を中心に分散和音を使ったり、2小節目と4小節目のC♯7の時には次のF♯mに向かうためのハーモニック・マイナースケールでフレーズが組み立てられていたりと、かなり緻密にアンサンブルを練り上げていることがうかがえる。
ミックス分析:上村 量(エンジニア)
取材:黒田隆憲
譜例作成&解説:野村大輔(ギタリスト)
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