2016年4月1日:ロンドンパラディウム公演 

プライマル・スクリーム、最新UKライヴレポートが到着!

プライマル・スクリーム、最新UKライヴレポートが到着!

2016/04/04


PRIMAL SCREAM

photo by Yosuke Torii

 

11作目のオリジナル・アルバム『カオスモシス』をリリースしたばかりのプライマル・スクリームが、アバディーン、グラスゴー、ロンドン、マンチェスターでライヴを行った。5月以降、秋までフェスを含むツアーが組まれているが、とりあえず今のイギリス・ツアーはこの4ヵ所だ。中から4月1日のロンドンパラディ公演を見にいった。会場のパラディウムは、ふだんは演劇の上演が多い美しい劇場だ。プライマルとの付き合いはおそらくファースト・アルバムからと思われる年季の入ったファンから、その子供世代の若者までが詰めかけ、ぎっしりと場内が埋まっていた。

サポートを務めた日本人バンドBo Ningenがインパクトのある演奏を終えると、プライマルが登場。オープニングがいきなり  『スクリーマデリカ』からの「Movin' On Up」! スコットランド2ヵ所でのオープニングは新作からの曲と聞いていたので、これはちょっと意表を突く出だしだ。全席座席の会場だったが、最初の一音が鳴り響いた瞬間から場内は総立ち。怒濤の音の洪水に、オーディエンスはたちまちプライマルの世界へと飲み込まれていった。

2曲目は新作からのファースト・シングル「Where the Light Gets In」。アメリカの人気モデル/シンガー、スカイ・フェレイラとのコラボが話題になった曲だ。スカイが艶のある声で異才を発揮したこのキャッチーなチューンは、アルバムの代表曲だけに、彼女がツアーに同行しない場合、「一体誰がスカイ役をやるのか?というのは誰もが抱く疑問だろう。彼らが見つけてきたのは、ほとんど無名のバンドThe Snidesのほとんど無名のシンガー、ハナ・マーズデン嬢だった。どことなくデボラ・ハリー似のブロンド・ガール。彼女はスカイ顔負けにボビーとの掛け合いを見事にやってのけた。

以後、曲は「It's Alright, It's OK」、「Rocks」など過去のヒット曲に、ニュー・アルバムの曲「When the Blackout Meets the Fallout」、「Golden Rope」、「Trippin' On Your Love」を織り交ぜた強力な構成で進んでいく。途中、アルバムにも参加したキャッツ・アイズのレイチェル・ゼフィラが登場し、ハナと2人でコーラスを担当。さらに、曲によっては女声コーラス隊も加わり、分厚いヴォーカル・パートが聞けた。しかし、一方楽器はと見ると、何と今回はギターがアンドリュー・イネス一人しかいない。ここ最近いつもシモーヌの横にいたセカンド・ギターのバーリー・カドガンが参加していないのだ。自身のバンド活動に力を注いでいるとは聞いていたが、このままプライマルを離れてしまうのか、気になるところだ。

ボビー・ギレスピー

ボビー・ギレスピー(photo by Yosuke Torii)

さて、このバンドにとって『スクリーマデリカ』をライヴでどう扱うか、というのはいつも大きな課題だ。偉大すぎるこのアルバムは、バンドにとってなかなか超えられない壁でもあり、どのアルバムのツアーであろうとオーディエンスは『スクリーマデリカ』の曲を聴かなきゃ帰れないと思っているし、バンド側はそれに対応しなければならない。前作『モア・ライト』のツアーなど、二部構成になっており、第二部が大々的なスクリーマデリカ大会だった。

今回はというと『スクリーマデリカ』の曲は全17曲中3曲と意外に少なく、代わりに『エクスターミネーター』と『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ』からの硬質な曲が多かった。全体の音の感じも、昔のソウルフルなグルーヴ感よりハードなドライヴ感の方がまさっているように思えた。『カオスモシス』には、80年代風軽めのエレクトロニック・ポップがたくさん入っているが、ライヴは逆にエッジの効いたハードな音になっているのが、印象的だった。と同時に、ハナとレイチェル、7人のコーラス隊、そしてもちろんベースのシモーヌと、ガール・パワーが炸裂する華やかなステージでもあった。バンドの後方では、派手なデジタル・イルミネーションがサイケデリック、ジオメトリックなグラフィックを映し出す。その前でボビー・ギレスピーのシルエットがヒョコヒョコ踊る。あんな感じの人が、こんなにも凄い喚起力を持っているのがいつも不思議だ。

アンコールは、新作からの「100% Or Nothing」、『スクーマデリカ』からの「Loaded」と「Come Together」。「Come Together」で大合唱が湧き起こり、会場が歌詞どおり一体感に包まれる。最近読んだスコットランドの新聞のインタビューでボビーは「暗い世の中だからこそ、人々が沈んだり悲しみを感じたりするのをやめるような音楽を届けたい」と殊勝なことを言っていた。大声で歌う人、汗だくで踊り狂う人、抱きあう恋人たち…オーディエンスの幸せそうな様子を見ると、この夜、ボビーの願いは間違いなく達成されたと感じられるのだった。

取材/清水晶子

セットリスト

2016年4月1日:ロンドン パラディウム公演 
01. Movin' On Up
02. Where the Light Gets In
03. It's Alright, It's OK
04. Jailbird
05. Accelerator
06. When the Blackout Meets the Fallout
07. Kill All Hippies
08. Shoot Speed/Kill Light
09. (I'm Gonna) Cry Myself Blind
10. Golden Rope
11. Trippin' On Your Love
12. Swastika Eyes
13. Country Girl
14. Rocks
アンコール
15. 100% Or Nothing
16. Loaded
17. Come Together
 

プライマル・スクリーム ボビー・ギレスビー

photo by Yosuke Torii
 

最新アルバム

CHAOSMOSIS

『CHAOSMOSIS』

英題:CHAOSMOSIS
邦題:カオスモシス
品番:SICX39
価格:2,400+税
仕様:初回紙ジャケット仕様 / 日本盤ボーナス・トラック1曲収録 / 歌詞・対訳・解説付
発売日:2016年3月16日(水)日本先行発売
収録曲:
1. Trippin’ On Your Love
2. (Feeling Like A) Demon Again
3. I Can Change
4. 100% Or Nothing
5. Private Wars
6. Where The Light Gets In
7. When The Blackout Meets The Fallout
8. Canival OF Fools
9. Golden Rope
10. Autumn In Paradise
11. Where The Light Gets In (U-Bahn zum Hansaplatz Remix)*
*日本盤CDのみのボーナス・トラック収録

バイオグラフィ

ボビー・ギレスピー、アンドリュー・イネスを中心に1980年代から活動を続ける英国を代表するロックバンド。ロックンロールの精神をベースにサイケデリック、ガレージ・ロック、ハウス、ダブ、ルーツ・ロックなど様々なジャンルを呑みこみ進化を続け、30年以上の活動の中で、『Screamadelica』、『Give Out But Don't Give Up』、『XTRMNTR』など、名盤の数々を世に送りだしてきた。アルバム『More Light』から3年振り、2016年3月16日に11作目となるスタジオ・アルバム『CHAOSMOSIS』を日本先行発売している。

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