現在のテクニックで再録、新たなる息吹を吹き込んだギター・インスト・アルバム
角松敏生『SEA IS A LADY 2017』インタビュー
角松敏生『SEA IS A LADY 2017』インタビュー
2017/06/09
角松:僕自身は、本来ギターはこうやるんだったらこうあるべきだっていうのを30年勉強してようやくわかったので、それが今作なんですね。で、結果として両方聴いてくれればいいなって思うんですよ。で、何回も聴いていくうちにやっぱりこっちの方が良いなって新しい方を聴く回数が増えていくっていうね。前回の「SEA BREEZE 2016」も実はそうだったんですよ。本当に原理主義の人はオリジナル以外聴かないんですよ。やり直しなんて聴きたくないみたいなね。よくある、アーティストが自身のヒット曲をセルフカバーして“DISCO調をちょっとボサノバ風にしてみました”みたいなのがあるじゃないですか。そういうのはそのアーティストご自身が過去の作品に対して一定の認知をされているんですよ。そのうえでやり直すっていうのは、すごく軽やかにやられてるんですけど、僕の場合は、もっと情念的なんですよ。ほんとに嫌だった!っていう自分の人生に対する落とし前みたいな。“伊達や酔狂”でやってるんじゃないんです。過去売れた作品だから、やり直しましたじゃなくて、ずっと前からやり直したかったことに、やっと機会が来たのでやったんだってことは一番伝えたいですね。
──角松さんのギターで、リードの音は変わりましたけど、カッティングに関しては変わってない気がするんですが。
角松:変わってないっていうか、リズム感は一緒なんでね。ただカッティングも相当ブラシュアップしてますよ。ただ、俺「SEA IS A LADY」の時カッティングしてないもん(笑)。
──えっ、「SEA LINE」のイントロは?
角松:あれ幾見(雅弘)さんが弾いてるの。だから「SEA IS A LADY」がなぜ良いとこ獲りかっていうと一切バッキングしてないの。バッキングこそが一番その人の力量が出てくるとこなのね。で、今回「SEA IS A LADY 2017」は全部僕が弾いてるの。鈴木君にアコギを弾いて貰ってる以外は全部僕がやってるんですよ。で、それが今回僕自身の現れっていうか一番大きなところでしょうね。それもこの30年の間に培った成果ですよね。プロデュース業やってて、なるべく自分でギター弾くようにして試行錯誤した結果が結実したのが今作かな。今までどのインタビューでも言わなかったけど、そこがやっぱり一番大きなポイントですね。オリジナルと違うのは。
──今回レスポール弾いてますよね。どの曲がレスポールなんですか。
角松:「LOVIN’YOU」と最後の新曲シャカタク(笑い)ですね。テーマの音色でレスポールにしました。
──普段レスポールは弾くんですか。
角松:ぜんぜん弾いたことないっす。あるイベントでシャカタクの「ナイトバーズ」のカバーをやったんですけど、ピアノとギター完コピでやって貰ったんですよ。鈴木君にレスポールでね。「VOCALAND」でも友成さんのピアノと亡くなった浅野さんにギターやって貰ったんですが、その時、浅野さんがレスポール持ってきてて、その浅野さんのレスポールの音がずっと頭の中に残ってて、鈴木君にも「浅野さんレスポールでやってたよ」って言ったら、レスポール持ってきて弾いたんですね。その音もずっと頭の中に残ってて、今回新曲の「Evening Skyline」作ってるときにこの曲レスポールで弾いてみようってなって、鈴木君にレスポール借りて弾いてみたんですよ。そうしたら面白くなってきてね。実は僕1本もレスポール持ってなかったんですよ。縁が無かったのかな。それから再度研究したら、もともとはジャズギターだった訳だ。シングルコイルのP-90が基本だった。で、結局買いましたよ。「True Historic」シリーズっていう高級な贋作ね。(笑い)56年のリイシュー。だったかな、あと60年のリイシュー、ハムバッキングのやつ。
──で、今はメインはMOONのシグネイチャーモデルですか。ネックも青いやつ。
角松:あれはねぇ、MOONさんが「角松さん用に作らせて下さい」っておっしゃって下さったんで、それじゃ是非ってことでお願いしたら、“向こうの指定”で「是非ネックも青にさせて下さい」ってことで。
──ライブとかだと弾きづらくないんですか。
角松:最初、目がくらくらしましたけど、最近慣れましたね。あともう1本はメインで使ってるアートテックの杉浦さんに作ってもらった完全オーダーメイドのやつ。あれが90年代にはじめて作ってもらったギターで宝ですよね。この2本+鈴木くんのレスポールでレコーディングしました。
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