福山雅治や谷村新司などの作品を手掛けるエンジニアが「録ったままが聴こえる」とコメント
ラックスマン「NEO CLASSICO II」の魅力を音楽制作集団「SIGN SOUND LLC」に所属するエンジニアの片倉麻美子が徹底チェック!
ラックスマン「NEO CLASSICO II」の魅力を音楽制作集団「SIGN SOUND LLC」に所属するエンジニアの片倉麻美子が徹底チェック!
2019/01/11
取材:編集部 撮影:小貝和夫 製品レビュー:野村ケンジ
◉ずっと音楽を聴き続けていたくなるNeo ClassicoⅡ
──Neo ClassicoⅡの第一印象はいかがですか?
片倉:見た目がシンプルでいいですね。色もやわらかいシルバーで。
小柳:小さくても本格的なオーディオ機器ということで、ラックスマンのハイエンド製品と同じようにフロントパネルやトップパネルなどに分厚いアルミを贅沢に使っています。外観だけでなく製品の内部で使っている部品や回路はもちろん、操作系のスイッチの感触にまでこだわっています。
片倉:本当だ、こういうのって大事ですよね。聴く前に欲しくなってしまいました。ルックスもそうですけど、どれだけこだわっているかということが大事ですよね。大きさもちょうどいいし。聴くのがすっごい楽しみですね。
▲フロントパネルやトップパネルには肉厚のアルミを多用。精緻感と本物感に溢れたNeo ClassicoⅡの外観やスイッチ類の感触に、片倉さんは「聴く前に欲しくなってしまいました」とコメント。
──ではさっそく聴いていただきましょう。
片倉:最初に、先日私がレコーディングした松本英子さんの新しいアルバムの中から「ツミキ」を。今日はミックスしたばかりのマスタリング前のデータで持ってきました。
──Neo ClassicoⅡで聴かれた印象はいかがでしたか?
片倉:録音したときの「やったまんまが聴こえるな」。96kHz/24ビットで録った曲ですが、生の楽器を録っている部屋の音まで聴こえてきます。私は職業柄どうしても自分で録った曲のあら捜しをしてしまいますので正直怖いです(笑)。
──松本英子さんの楽曲は、どのような点を意識して制作されたのですか?
片倉:この曲はチェロ3本、バイオリン2本という編成に、生ピアノとシンセパッドが入っているんですが、まず始めのチェロのアンサンブルで曲に引き込むということですかね。あとは英子ちゃんのボーカルの世界観というか、曲の芯の部分をどう伝えるかということでした。
小柳:私はボーカルがすごく瑞々しく聴こえました。
片倉:ありがとうございます。実はこのボーカルは、ご本人の希望で仮歌をそのまま使っているんですよ。だから、その瑞々しい感じが出たんだと思います。悲しい恋愛の歌なんですけど、弦とピアノで「あぁ、いい思い出だったんだな」ということが伝われば成功です。
▲試聴にはフランスの名門スピーカーFOCAL(フォーカル)社の「Kanta N°1」を使用。コンパクトな2ウェイシステムで多彩なカラーバリエーションが用意されている。
長妻:今回は96kHz/24ビットで録られたとのことですが、ハイレゾの音源だと、エンジニアの方が狙った音が見えやすくなると思います。
片倉:そうですね。ハイレゾは何よりも空気感と距離感だと思っていて。本当の息づかいも聴こえますけど、演奏の息づかいというか、「あっ、演奏している人たちは生きている人間なんだ」ってことも分かります。もともとレコーディングはハイレゾで録っています。それを44.1kHz/16ビットに押し込めることなく、そのまま聴いていただけるというのは嬉しいですね。2曲目に試聴したSinonさんの「my tomorrow」はCDなんですけど、ハイレゾの音源のように聴こえました。そのくらい正確にというか。Neo ClassicoⅡのポテンシャルの高さがそうさせているのだと思います。
──片倉さんは、普段はリファレンスCDなどは持ち歩かれているのですか?
片倉:はい、色々なスタジオやアーティストさんのプライベートなアトリエで作業するので、何枚も持ち歩いています。実は、今回もNeo ClassicoⅡを試聴させていただけると聞いて、チェック用にいくつか持ってきました。
──ではその中から何曲か聴いてみましょう。
片倉:まずは低域チェック用にジェイソン・ムラーズ『The Freedom Song』です。私はスタジオに来るといつも最初にこれをかけるんですが、たいていの場合はバスドラとベースが「ボンッ」て同時に聴こえるんですね。でも今回Neo ClassicoⅡで再生して初めて「あれ、バスドラムの位置と皮の感じがわかる。すごーいっ!」って驚かされました。相当正確に聴こえましたね。
──次に、コールドプレイも聴かれてましたよね?
片倉:はい、「A Sky Full Of Stars」を聴きました。こちらの曲はリズム隊がドンって入ったところで、安いシステムだとコンプ感が目立つというか「フッ」と音が小さくなっちゃうんですね。いいシステムで聴くとそうなりません。Neo ClassicoⅡでは音がそのまま再生されていました。
──かなりマニアックですね。
片倉:ドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』みたいなスーパーミックスだと、正直どんなシステムで聴いても良く聴こえるんですけど、今日はあえてあら探し的に(笑)。
──その他にはどんな曲を?
片倉:ヘヴィなロックだとギターがどのように鳴るかを聴きたくて、パパ・ローチ『Last Resort』も試聴させてもらいました。この曲も 44.1kHz/16ビットで再生したのですが、やはりハイレゾを聴いているような感覚になりました。
──具体的にはどの辺りが?
片倉:いつもは3~4kHzあたりがギラギラするシステムで聴くことが多いので、最初は上品過ぎるかなと思ったんですけど、やっぱり美味しい部分は逃していないなと。これはスネアに掛かっているリバーブの響きにも感じました。正直言うと、普段使っているモニターだとこのリバーブの伸びている感じは分からないと思います。
小柳:実はそこが開発者の長妻の特長でもあるんです。
長妻:音がきれいに抜けるというか「バーン」となった時にピークが頭打ちになるのが嫌いなんですね。
片倉:たしかに。リミットが感じられないというか、これ本当に44.1(kHz)だったよなって思わされました。
長妻:楽曲の音が詰まらずにスッと伸びていく、余韻が残る、次の音が来る。その時の余韻の長さによって間が長くなったり短くなったりするように人は感じるんですね。そこが最適になるように余韻をコントロールした音作りを心がけています。
片倉:私の高級オーディオに対する勝手なイメージは、「ハイは綺麗に伸びるんだけど、ちょっと細かったり、大人しかったり、硬かったり」というモノだったので、この手のロックをかけると「あれ、腹にこないな」みたいになるかと思ったんです。でも、芯の部分はすごく残って聴こえました。それは何なんでしょうか?
長妻:真空管をアンプに搭載しているからだと思います。真空管アンプなので、アタックの鋭いところは出ないと言えば出ないんです。でもそれを出た感じにさせながら、音も詰まらせないというのがこの製品のコンセプトでもあるんですね。
──片倉さんは、試聴の最後にアデル『25』に収録されている「Hello」も聴かれてましたよね。
片倉:はい。すごくいいですね。この曲は何度も聴いていますし、ここがこう聴こえればいいんだというポイントがあるんですけど、そこを過ぎても止めないで最後までずっと聴いてしまいました。私たちエンジニアは、職業柄1ミリも聴き逃さないように集中してスピーカーから出る音を聴いているんですけど、それはそれで結構疲れちゃうんです。でもNeo ClassicoⅡで再生すると、ずっと聴いていたくなります。
小柳:ありがとうございました。最高の誉め言葉をいただいたと思います。日頃、イヤホンやヘッドホンで音楽を楽しまれている方々が多くいらっしゃいますが、そういう方にもぜひ本格的なコンポーネントで聴く音楽の世界を実際に体験していただければと思っています。
──最後にあらためてNeo ClassicoⅡを試聴された感想をお願いします。
片倉:Neo ClassicoⅡで聴くと、私たちがレコーディングの際に感じた楽器との距離感、空気感が極めて正確に表現できることを実感しました。そして何よりもとにかく楽曲をずっと聴いていたくなったのが印象的でした。今日は「音楽は楽しむものだ」という原点をあらためて思い起こされました。貴重な体験をありがとうございました。
- 1
- 2
関連する記事
2023/04/03
2022/07/28
ニュース
2023/12/25
2023/12/20
2023/12/18
インタビュー
2023/03/23
2022/09/15
2022/05/26
2022/01/26
特集/レビュー
2023/04/03
レクチャー
2022/11/15
2022/11/01