ユニバーサルオーディオ製のIFをプロが使う理由に迫る! 第二弾
UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【BAROQUE・圭】
UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【BAROQUE・圭】
2019/08/09
約4年2ヶ月ぶりのアルバム『PUER ET PUELLA(ピュエル エ ピュアラ)』をリリースし、全国ツアーの開催を宣言したBAROQUE。この人気ユニットで曲作りを担当するギタリストの圭さんもユニバーサルオーディオ製品のヘヴィーユーザーの1人だ。ここでは、全国ツアーにむけてリハスタで作業中の彼を訪ね、愛用する「Apollo 8」や「UADプラグイン」について話しを聞いてみた。
取材:編集部 撮影:小貝和夫
圭:今使っている「Apollo 8」が出たときからですね。
──「Apollo 8」をチョイスされた理由は?
圭:ライブでも使えるように、ある程度出力が欲しかったということと、当時、かけ録りに使えるという「Unison」機能が個人的にも気になっていて。で、実際に試してみると音質も良かったので。
──実際に試されたというのはスタジオで?
圭:はい。お店でも試しましたけど、スタジオにいくつかインターフェイスを持ってきて。それで音を出してみました。
──どのあたりが気に入ったのでしょうか?
圭:すごい抽象的になってしまいますけど、「あったかくて、シルキーな感じ」がしたんですよね。実は今、ライブのシステムにも「Apollo 8」を導入していて、その方が音がいいんですよ。
──具体的にはどのように「Apollo 8」を使っているのですか?
圭:僕はライブでギターアンプを3台使っていて、マイクを4本(2本+L/Rの2本)立てつつ、ディレイやリバーブに送っているんですね。で、以前はEVENTIDEのラックなどを経由させて直でPAに送っていたんですけど、最近はこれらの音を「Apollo 8」でまとめてから出力しているんです。その方が、先ほど話したようにあたたかみもあるし、滑らかというか、音がまとまるんですよね。
▲リハスタに持ち込まれていたフェンダー・ストラトキャスター マスタービルダーのジェイソン・スミス作(写真左)とオーディオインターフェイス「Apollo 8」(写真右)
──ライブではプラグインも立ち上げているのですか?
圭:いえ、ライブのときはプラグインは立ち上げていなくて、あくまでも「Apollo 8」はHAというか、ミキサー的に使っています。ただ、今後はライブのときにもUADプラグインを使ってみようと思っていて、今色々と試している最中です。
──もともと「Unison」機能に興味があったということですが、どのプラグインを使いたかったのですか?
圭:やっぱり、最初はNeveのプラグインでした。でも、付属の「UA 610-B Tube Preamp and EQ」もすごく良くて。今では必ず立ち上げています。
──それは歌用ですか、それともギター用?
圭:ギターです。今回のBAROQUEのニューアルバムでもそうなんですけど、僕はギターを録るときに「素のラインの音」と、「OX AMP TOP BOX(ユニバーサルオーディオのロードボックス/スピーカー・シミュレーター)を通した音」の両方をレコーディングしていて。「OX AMP TOP BOX」の方には必ず「UA 610-B Tube Preamp and EQ」を使っています(※)。
※圭さんは「DI」ボックスを利用してギターの出力を2系統に分岐させているという。分岐された2つの出力のうちの1つは「Apollo 8」に直で接続され(素の音)、もう一方は「OX AMP TOP BOX」を経由して「Apollo 8」につながれている。
▲UAD付属プラグイン「UA 610-B Tube Preamp and EQ」
──「UA 610-B Tube Preamp and EQ」のセッティングは?
圭:ギターの音色によっても違うんですけど、少し低域が足りないと思ったらEQでローを足すとか。
──それはクリーンの場合でも歪みの場合でも?
圭:はい。どちらにも「UA 610-B Tube Preamp and EQ」を使ってますね。
──「UA 610-B Tube Preamp and EQ」を通すことで、ギターの何が変わってくるのでしょうか?
圭:ふくよかさと立体感ですかね。先ほどお話したように、僕はギターの「素の音」も録っているので、その音を使ってスタジオでリアンプ(実際のアンプで鳴らし直す)することもあるんですけど、必ずしもリアンプしたものがいいわけではなくて。もちろん、ケースバイケースなんですが、「OX AMP TOP BOX」と「UA 610-B Tube Preamp and EQ」の組み合わせの方がしっくりくることも多いんです。
──「UA 610-B Tube Preamp and EQ」を通した音に、さらに別のUADプラグインをかけることもあるのですか?
圭:存在感を出すために「1176SE/LN Classic Limiting Amplifiers」を使ったり、リバーブの「EMT 250 Classic Electronic Reverb」を使うことはありますね。あと、最近はデモの段階で「Marshall Plexi Classic Amplifier」や「TS Overdrive(Distortion Essentials Bundleに収録)」を試すこともあります。
▲画面上がUAD付属の「1176SE/LN Classic Limiting Amplifiers」、画面下が「EMT 250 Classic Electronic Reverb」
──「1176SE/LN Classic Limiting Amplifiers」は具体的にはどのような設定で?
圭:アタックは左に目一杯、リリースは右に目一杯開いて、あとはインプットで調整しながら使っています。基本的にはギターに薄くコンプがかかるようにする感じです。あまり深くかけ過ぎてしまうと抑揚がなくなってしまうので。「1176SE/LN Classic Limiting Amplifiers」を通すことで、ギターが太くなるというか、質感も変わってきますね。ギターソロとかには必ず通しています。あと、ギター以外にシンセやストリングスに使うこともあります。
──では「EMT 250 Classic Electronic Reverb」の方は?
圭:これは「Consoleチャンネル(※UAD付属のミキサーソフト)」のセンド/AUX経由でかけていて。サウンド的にはクリーン/歪みどちらでも使いますね。このプラグインはギター以外にピアノにかけることもあります。
──設定としては?
圭:白と赤のバーを全部一番上にしたり。これだとかなりアンビエントな感じの広がりになってくれます。
──新しいアルバム『PUER ET PUELLA』でも使用しましたか?
圭:はい。ギターにもかけましたけど、1曲目の「THE BIRTH OF VICTORY」のピアノがわかりやすいと思います。リバーブって、キレイ過ぎると平面的に聴こえてしまうんですけど、この「EMT 250 Classic Electronic Reverb」は奥行きを感じるというか。何か世界観があって好きですね。
──先ほど、デモの段階で「Marshall Plexi Classic Amplifier」や「TS Overdrive」を試すこともあるという話が出ましたが、これらについては?
圭:まだ、実際のレコーディングで「Marshall Plexi Classic Amplifier」や「TS Overdrive」を使ったことはないんですけど、今後は本番環境でもぜひ使ってみたいなとちょうど思っていたところなんです。というのも、僕の場合、ツアーが始まるとギターアンプはツアー担当者に預けてしまうので手元にギターを鳴らせる環境がなくなってしまうんです。で、そんなときにちょっとパソコンを起動してアンプやエフェクターの音が鳴らせるというメリットは大きくて、それをまさに今試していたところなんです。特に「TS Overdrive」は独特な「クシャ」っとしている部分のタッチとかも再現されてて、本当に良く出来てるなと思います。
▲画面上がDistortion Essentialsバンドルに収録されている「TS Overdrive」、画面下がUAD付属の「Marshall Plexi Classic Amplifier」
──わかりました。では、今度はギター以外に使用することの多いUADプラグインについて教えて頂けますか。
圭:はい。まずドラムの中で、特にキックには「Fairchild Tube Limiter」を使うことが多いですね。これも通すだけで、ふくよかになるというか、迫力が出るんですよね。音自体も結構変わるんですけど、いい感じに変わってくれますね。僕は打ち込みのキックなんかにもかけたりします。
──打ち込みの場合、キックはどのようなツールで鳴らすことが多いのですか?
圭:オーディオのサンプルを鳴らすことが多いんですけど、Elektronの「Analog Rytm」というリズムマシンを使うこともあって。今回のアルバムだと6曲目の「LAST SCENE」で鳴っているキックがそうですね。これに「Fairchild Tube Limiter」がかかっています。
▲キックにかけることが多いという「Fairchild Tube Limiter」
──その他のパートはいかがですか?
圭:ベースに「Precision Mix Rack コレクション」の中に入っている「ENHANCER」をかけることもありますね。これは倍音を足す文字通りエンハンサーなんですけど、シンセベースにも使うし、キックなどに使うこともあります。ちょっとローが足りないときなどに、周波数を指定して、その倍音を「MIX」のツマミで加えたり、そんな感じでUADプラグインをミックスでも多用しています。
▲UAD付属の「Precision Mix Rack コレクション」に収録されている「ENHANCER」
──圭さんとしては、今後UADプラグインをどのように活用していきたいと思っていますか?
圭:このインタビューの最初の方でもお話したように、僕は「素の音」と「OX AMP TOP BOX」経由の2つのギターサウンドを録音しているのですが、できれば後者だけで完結できるようになったらいいなと思っています。
──再度「素の音」をスタジオでリアンプ(アンプから音を出す)するのではなく?
圭:はい。「OX AMP TOP BOX」とUADプラグインだけでギターサウンドが完結できたらいいですよね。僕らのやっているBAROQUEは、ライブではサポートメンバーを迎えてバンドサウンドになっていますが、実際はクリエイターっぽい役割の僕とシンガーの2人ユニットで、基本的には事前のデモ作りがベースになっているんです。なので、宅録の段階でどれだけ作り込めるかという点も非常に重要で。そういった意味では、UADプラグインが録りの段階で使えたり、ハイクオリティなプラグインがサウンドメイクやミックスで使えるのは本当にありがたいですよね。
──今回のインタビューで、ニューアルバム「PUER ET PUELLA」でもUADプラグインがかなり使われていることもよくわかりました。
圭:はい。UADプラグインはかなり使っています。実験的なこともやっているし、宅録をやっている人には、結構ヒントになることもあると思います。そういう視点でも今回のアルバムを聴いてもらえるとうれしいです。
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