ユニバーサルオーディオ製のIFをプロが使う理由に迫る! 第四弾
UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【大石昌良】
UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【大石昌良】
2019/08/30
アコースティックギターの卓越した弾き語りによって、全国のライブフロア、YouTube、ニコニコ動画といったシーンで話題を呼び、「ダイヤのA」、「月刊少女野崎くん」といった人気アニメの主題歌でもその声を聴くことができる大石昌良/オーイシマサヨシさん。彼もUAD製品およびUADプラグインを愛用するクリエイターの1人だ。今回、ヒット曲「君じゃなきゃダメみたい」や、最新シングル『楽園都市』の制作秘話を交えて、UADプラグインの活用方法をじっくりとお聞きすることができた。ファン必見のインタビューだ。
取材:編集部 撮影:桧川泰治
──ユニバーサルオーディオ製品を使用することになったきっかけから教えて下さい。
大石:ちょうど5年くらい前に、ユニット仲間であるTom-H@ckくんに「Apolloシリーズがいいよ!」って言われたことと、あとエンジニアさんからもすごくいい評判を聞いていて。それでまずは「Apollo Twin」を買ってみようと思ったんです。
──音質やUADプラグインを実際に使ってみた印象は?
大石:自宅でも外スタジオのクオリティの録音ができるなと思いましたね。実際、その頃リリースした「君じゃなきゃダメみたい」という曲のアコギは「Apollo Twin」で録ったものです。
──外スタジオでは録音せずに?
大石:はい。プライベートスタジオの「Apollo Twin」で録ったものを、そのままエンジニアさんに渡しました。それが本チャンでも使われています。
──プライベートスタジオでは、どのようにアコギを録ったのですか?
大石:ヤマハのLS36というアコギを使ったのですが、「ペルーソ22 47LE」というマイクをホールから少し外したところに立てて、あとはアコギの中にもエノキダケ風のマイクがセットされているんですけど、これらを使ってアコギを録っています。
──では、2トラックを使ってアコギを?
大石:はい。「君じゃなきゃダメみたい」は冒頭にスラップギターが入るんですけど、そのスラップギターの音は、この2つをLとRに振って面白い音像を作ってみたんですよね。わざと位相をぐちゃぐちゃにするというか、ひとつの弦を両サイドから録ったような感じにするというか。こういった音も「Apollo Twin」ではしっかり再現することができました。
──アコギを録る際にUADプラグインは使いましたか?
大石:はい。アコギの中にセットされたマイクの音が細く感じたので「Littel Labs Voice Of God Bass Resonance」というプラグインをかけ録りしました。このプラグインは低域の倍音を出すというもので、ローがかなりゴージャスになるんですよ。これはエンジニアさんに渡したときに、かなり評判が良かったですね。
▲「Littel Labs Voice Of God Bass Resonance」
──今もプライベートスタジオでは「Apollo Twin」を使っているのですか?
大石:いえ、今は「Apollo 8」をメインで使っています。この「Apollo 8」の黒パネルが出ると同時に買いました。
──「Apollo 8」をチョイスされた理由は?
大石:「Apollo Twin」よりもAD/DAの性能が高くなり、音質も素晴らしくなったと聞いたからです。
──「Apollo Twin」から「Apollo 8」になってもアコギの録り方は変わらない?
大石:そうですね。ただ、今は新たにルパート・ニーヴ・デザインズ5024(マイクプリ)とレトロ・インストゥルメンツ176(コンプレッサー/リミッター)を導入して、それらを通した音を録っています。
▲プライベートスタジオ全景(写真左)、マイク録音の際はルパート・ニーヴ・デザインズ5024(マイクプリ)とレトロ・インストゥルメンツ176(コンプレッサー/リミッター)を通して、ユニバーサルオーディオのApollo 8(オーディオインターフェイス)に入力している(写真右)
大石:空間系だとプレートリバーブの「EMT 140」をかけることが多いです。このプラグインは本当によくできていて、シミュレーターとは思えないくらいリッチな残響が出るなと。このプラグインをかけるだけで、アコースティックギターのグレードが上がるというか。リバーブというと、どうしてもとって付けたような味付け感が出るんですけど、「EMT 140」はセンド量を多くしても響きが破綻しないですし、ナチュラルな響きが好きな人でも気に入るサウンドだと思います。
──「EMT 140」はどのようなセッティングで使うことが多いのですか?
大石:パネルの左側に「REVEBERATION TIME」というのがあるのですが、このBの列の「ー(マイナス)」ボタンを3回押して使っています。「EMT 140」は最初に立ち上げたデフォルトの段階でかなりいい感じなんですけど、自分の中では残響が長いかなと思っていて。なので、少しだけ残響を短くして使っています。
▲「EMT 140」
大石:エレキギターには「Fuchs Overdrive Supreme 50 Amplifier」ですね。これは完全にUnisonとしてかけ録りに使っています。
──なぜこのプラグインを?
大石:もともと、UADプラグインのMarshallやChandlerなども試して使っていたんですけど、このFuchsのアンプの倍音感が自分にはしっくりきました。「Fuchs Overdrive Supreme 50 Amplifier」はツマミもユニークで使いやすいし。
──どういったセッティングで使うことが多いですか?
大石:OUTPUT、MID、HIGHのツマミを引っ張ってハイゲインの状態にすることができるんですけど、それにして使うことが多いですね。ツマミを引っ張ると赤くランプが点灯して、歪みをたくさん得ることができるんです。あと、このプラグインはMASTERのツマミが付いている点もいいですよね。宅録だとギターの音がクリップしてしまいがちですけど、少し余裕を持たせることでそれを事前に防げますから。
▲「Fuchs Overdrive Supreme 50 Amplifier」
大石:ボーカルには、まずコンプ/リミッターとして「1176 AE」をかけていますね。1176にも色々とあると思うんですが、僕は特に「1176 Classic Limiter プラグインコレクション」の中の「1176 AE」が気に入っていて。というのも、他のモデルだとRATIOが「4」から選択する形なんですけど、このモデルはRATIOが「2」から設定できるんです。つまり、あまり頭を削り過ぎないでコンプがかけられるんです。ボーカルにコンプをゆったりかけたい僕としては、これが一番いいわけです。
▲「1176 AE」
──ボーカルにはリバーブは?
大石:かけ録りはしませんけど、センド経由でモニターには必ず「Lexicon 224 Digital Reverb」がかかるようになっています。ボーカルを録るときって、気持ちの高揚感もとても大事になると思うのですが、それはリバーブですごく左右されるんですね。この「Lexicon 224 Digital Reverb」は歌録りを楽にしてくれるというか、ちゃんと歌えている感じになるというか。なので、すごく重宝していますね。最新シングル『楽園都市』のボーカルにも大活躍してくれています。
──パラメーターはどのような設定で?
大石:プリセットに「Vocal Plate」というのがあって、それを使うことが多いです。このプリセットは本当によくできていると思います。
▲「Lexicon 224 Digital Reverb」
大石:歌にではないんですけど、「Ocean Way Studios」というプラグインを、いわゆる「ガヤ」にかけることはありますね。「Ocean Way Studios」って、ルームの残響をリマイクで再現できるんです。
──「ガヤ」というと?
大石:例えば、アニソンだとよく「いぇーい!」、「ふー!」、「へーい!」みたいなかけ声が入ることが多いのですが、僕は、こういったガヤのトラックをバスでまとめてから「Ocean Way Studios」をかけていて、「Ocean Way Studios」の「VOC GRP(ボーカルグループ)」で人数感を調整すると、たくさんの人たちがいるようなアンビエンス感が得られるんです。
──遠くの方でたくさんの声援が飛んでいるみたいな?
大石:はい。あと、このプラグインは「ガヤ」以外にコーラスワークに使うこともありますね。僕の場合、3声×2(1声につきL/Rの2トラック)のコーラスを録ることが多いんですけど、この6つのトラックをバスにまとめて、そこに「Ocean Way Studios」をかけて、さらに多くの人がコーラスをしているようにしたり。で、楽器だとホーンセクションにかけたりすることもあります。
▲「Ocean Way Studios」
大石:はい。「SSL 4000 G Bus Compressor Collection」を使っています。実は4000シリーズは前のバージョンのものも使っていて、愛用歴はかなり長いんですよ。
──愛用している理由は?
大石:マスターコンプとしてManleyなどを使っていたこともあるんですが、SSLの方がパラメーターを色々とイジっても音が破綻しにくいんですよね。そういった意味では、すごく賢いというか。で、賢いといってもSSL特有の感じもあるし。この最新の「SSL 4000 G Bus Compressor Collection」はより実機に近くなって、音的にも好きですね。
──パラメーターはどのように?
大石:デフォルトのプリセットがあるんですけど、それをそのまま立ち上げて。THRESHOLDの値を目一杯右に開いて、あとはMAKE-UPで音量を調整していく感じですね。
──音は結構突っ込む方ですか?
大石:いいえ、最近はかなり余裕を持たせていますね。僕の場合、最終的にはエンジニアさんにマスタリングをお願いするケースも多いので。
▲「SSL 4000 G Bus Compressor Collection」
大石:そうですね。1つだと絞り込めないですね(笑)。ただ、3つ挙げてもいいとすると「Fuchs Overdrive Supreme 50 Amplifier」、「Lexicon 224 Digital Reverb」、「SSL 4000 G Bus Compressor Collection」ですかね。この3つは、どんなセッションでも確実に使っていると思いますし、この3つがなくなると非常に困りますね。本当に困っちゃうくらい使っていますから(笑)。
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