ユニバーサルオーディオ製のIFをプロが使う理由に迫る! 第三弾

UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【Tom-H@ck】

UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【Tom-H@ck】

2019/08/22

LiSA、でんぱ組.inc、マジカル・パンチラインといった様々なアーティストへの楽曲提供を始め、アニメ/劇場版「けいおん!」のテーマ曲や、各種ゲーム音楽の作曲・編曲、さらに自身でも「OxT」、「MYTH & ROID」という名義でアーティスト活動をしているTom-H@ckさん。「音楽家として、ユニバーサルオーディオとともに歩んできた」と公言する彼は、まさに筋金入りのUADプラグイン愛用者だ。ここでは、自身のスタジオに「Apollo 16」を導入した理由、特に使用頻度の高いUADプラグインについて話を聞いた。

取材:編集部 撮影:桧川泰治


──まず始めにユニバーサルオーディオ製品の使用歴について教えて下さい。

Tom-H@ck:実は代理店のフックアップさんとは個人的にも昔から面識がありまして。なので「Apollo」が出たタイミングで購入しましたし、それを周りのミュージシャン連中にも広めた張本人でもあります(笑)。

──周りのミュージシャンに広めるくらい優秀なメーカーだと?

Tom-H@ck:はい。ユニバーサルオーディオのクオリティは、すでに10何年前から群を抜いていましたし、DSPで動かすというコンセプトも含めて素晴らしくて。もともとPCIのボードでパワーを供給するプラグインやハードウェアも使っていたし、ユニバーサルオーディオ製品は僕が音楽家を始めた頃から使っていると言えます。

──今はどのようなインターフェイスをメインで使われているのですか?

Tom-H@ck:メインは「Apollo 16」ですね。こちらも出たタイミングですぐに買いました。これを2台カスケードさせて使っていて、さらにDSPパワーを別途供給できる「UAD-2 Satellite」というアクセラレーターも導入しています。アニソンや劇版の音楽では、どうしてもトラック数が増える傾向にあって、そこでNeveやManleyのプラグインをかけるとどうしても負荷が高くなってしまうんですね。なので、アクセラレーターも一番パワーの強いものを入れています。

──「Apollo 16」を2台使っている理由は?

Tom-H@ck:そもそもトータルリコールを含めて、たくさんのアナログシンセをインプットできる環境が作りたかったんです。で、スタジオを構築するときに色々と試したんですけど、「Apollo 16」にちょっと高級なクロックを入れてあげるとサウンドがさらに良くなることがわかって。それで「Apollo 16」を2台つなげて、32チャン分の入力が確保できる環境を整えました。まぁ、最終的にはこれしか選択肢がなかったという感じです。

スタジオ全景+Apollo 16

▲写真左はTom-H@ckさんのプライベートスタジオ全景、右のラックの一番下に見えるのがインターフェイスとして使用している「Apollo 16」(2台)だ
 

──では、最初はシンセありきだったんですね。

Tom-H@ck:はい。デジタルシンセではそこまでこだわらなくてもいいと思うんですけど、アナログシンセの場合は、その音色の質感までをちゃんとコンピュータに取り込まないと意味がないし。なので、そこの出入り口はしっかりクオリティーを考える必要がありました。

──具体的にはどのようなシンセを?

Tom-H@ck:例えば、スタジオのラックの中にはMoog「MINIMOOG VOYAGER」とか「SP 1200(ラックタイプに改造)」があったりします。実はラックの後ろにもたくさんのシンセがあるんですけど、ポイントはほとんどのモデルがトータルリコールに対応しているということなんですね。UADプラグインも含めて、とにかくセッションを切り替えたときに、すぐに音色やレベルなどが瞬時に再現できるものしか置いていません。なので、アナログシンセといっても、音源部はアナログで制御はデジタルというモデルが多いですね。ただ、中にはリボンとかでコントロールするような特殊なものもあって。そういった音程が変わってきやすいマニアックなアナログシンセの場合は、「brainworx bx_tuner」というプラグインでチューニングすることはあります。もちろん、このプラグインは何にでも使えるので、ギターにも使うことはあります。
 
synth+UAD tuner

▲写真上はMoog「MINIMOOG VOYAGER」や「SP 1200(ラックタイプに改造)」が収められているラック、キャプチャー画面はシンセやギターのチューナーとして使用しているというUADプラグイン「brainworx bx_tuner」
 

──チューナー以外に録りの段階でよく使うUADプラグインは?

Tom-H@ck:僕はいわゆる掛け録りはしていないんですけど、モニターの音量を調整するために「UA 610-B Tube Preamp and EQ」はよく使っています。アナログシンセもギターも、音量は小さいけれど、サウンド時には気に入っている状態ってあるんですよね。そういうときはモニターのレベルだけを事前に上げたいんです。で、僕も色んなチャンネルストリップとかを試してきたんですけど、これで上げるのが一番なんですよね。610を通してモニターすると音が太く聴こえるというか。ギターの場合は中低域がふくよかに聴こえて、バッキング時のギターサウンドの判断なんかもやりやすくなります。

──ギターのレコーディングにはご自身のシグネーチャーモデルを?

Tom-H@ck:そうですね。T’s Guitarさんで作ってもらったシグネーチャーモデルを使っています。これを「KEMPER Profiling Amp」につないで、スタジオで自分で作った「RIG」を使って録ることが多いです。実はこの「RIG」も僕名義のものが販売されていて、アンプで言うとDIEZELかBognerが多いんですけど。
 

610 + KEMPER

▲左のキャプチャー画面がモニターレベルを調整する際に活用している「UA 610-B Tube Preamp and EQ」、右側のラック中央に見えるのが「KEMPER Profiling Amp」。なお、一番下に見える黒い製品は、アコギを録る際に使用するマイクプリ Millennia「TD-1」だ
 

──では「UA 610-B Tube Preamp and EQ」以外でよく使うUADプラグインについても教えてください。

Tom-H@ck:まずは「Manley Massive Passive EQプラグイン」ですね。このManleyとNeveの新しい1073は、出てきたタイミングがほぼ同じだったんですけど、「これはやべぇのが出てきたな!」って本当に思いました。こんなプラグインが出てきたら、もう実機がいらないんじゃないかって(笑)。

──音的にはどこが一番驚きでしたか?

Tom-H@ck:Manleyだと高域をイジったときのシルキー感ですね。Manleyはチューブを売りにしているメーカーなんですけど、それをよくここまで再現したなと。実機のManleyは「チューブなんだけど、なぜかハイファイ」という感じなんですけど、そのあたりを本当にうまく再現できてるなと思いました。あと、見た目もですね。操作してても、実機と錯覚するくらいの感覚になります。

──Manleyは、どのパートにかけることが多いのですか?

Tom-H@ck:何にでもかけます。2ミックスにもかけますし、ギター、ベース、ドラムとか、シルキー感を加えたければ、どのパートでも使えます。

──定番のセッティングなどはありますか。

Tom-H@ck:周波数で言うと、上も下もどちらも細かくコントロールできるんですけど、例えば下の方の100Hzとか150Hzとかをベル型のフィルターを使って少し持ち上げるセッティングだと、キックとかベースに力強さを与えられます。あと、上で言えば、2kHz〜3kHzをシェルビングでブワッとブーストすると、先ほどのシルキー感というか、きらびやかな感じが出てきますね。上をブーストするセッティングは2ミックスにもよく使います。
 
ManLey

▲「Manley Massive Passive EQプラグイン」
 

──先ほど、Neveのプラグインにも驚かされたという話が出ましたが、こちらに関しては?

Tom-H@ck:はい、Neveのプラグインも本当にすごくて。発売当初も驚きましたけど、いまだにすごいなと思っています。

──具体的にはどういった部分が?

Tom-H@ck:通すだけで「お〜、ヴィンテージ!」みたいな(笑)。

──Neveはどんなパートに?

Tom-H@ck:これもギター、ボーカル、ドラム、なんでも。で、意外にアコースティックピアノとかにかけてもいいんですよね。曲中でちょっとピアノを目立たせたいときに、ボーカルと被らない5kHzとかの帯域をちょっと上げたり、中間の700Hzとかを上げたりすると、ピアノの音が際立ってきます。
 
neve1073

▲「Neve 1073 Preamp & EQコレクション」
 

──Neve 1073のプラグインもいくつかありますけど、それぞれで音は違いますか?

Tom-H@ck:全然違いますね。僕はUADプラグインの今最新のNeve 1073のもの(Neve 1073 Preamp & EQコレクション)が一番すごいと思っています。他とはレベルが違いますよ。

──例えば、ギターに使う場合は、このNEVEを通した後に歪み系のエフェクトを加えるのですか?

Tom-H@ck:いえ、歪みを作った後にNEVEをかけます。これは僕だけでなくて、エンジニアもそうだと思いますよ。

──Manley、Neve以外のEQで愛用しているものは何かありますか?

Tom-H@ck:「Pultec EQP-1A」ですね。これもクオリティがやばい。低域の60Hzとか100Hzをブーストするだけで、キックとかベースがめちゃくちゃカッコよくなります。キックのアタックがほしいときは、上の方の周波数をブーストすることもあるんですけど、基本的にはローを足したいときに大活躍してますね。このPultecで低域を加えることで、いわゆる海外の楽曲のようなスーパーローがしっかりと出せるんです。

PULTEC

▲「Pultec EQP-1A」(Pultec Passive EQ Collectionに収録)
 

──ボーカルにはどのようなプラグインを使うことが多いですか?

Tom-H@ck:「Teletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier」を通すようにしてます。強くかけ過ぎると音が悪くなるんですけど、中くらいのあんばいでかけてやると生々しい感じがうまく出るんですよ。男性だと太くなり過ぎることもあるんですが、女性ボーカルだといい感じにアナログ感が加えられます。

──「Teletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier」のツマミを設定する際のポイントは?

Tom-H@ck:ゲインとリダクションのツマミしかないんですけど、両方12時くらいで使うことが多いですかね。でも、これはハリウッドのエンジニア連中もそうなんですけど、実際はツマミの位置はあまり意識してなくて。もう、音が良ければどこだっていいんですよね。自分も感覚で判断することの方が多いです。

Teletronix

▲「Teletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier」
 

──その他、何か重宝しているUADプラグインはありますか?

Tom-H@ck:そうですね。「brainworx bx_subsynth」というプラグインがあるんですけど、これはあまり使っている人を見たことがないかな。

──どのようなものなのですか?

Tom-H@ck:そもそもない低域成分を、倍音でどんどん作り出していけるんですよ。先ほどの「Pultec EQP-1A」のように、すでに存在する低域をブーストするのではなくて、ないところに成分が加わる感じです。なので、「Pultec EQP-1A」でただ単純にローが増えてキックの音がゴムっぽい「ボンッ、ボンッ」となってしまった場合に、これに切り替えてカッコいいタイトな「ドンッ」という音に変えることがあります。

──キック以外に使うこともあるのですか?

Tom-H@ck:ありますよ。ベースにも使うこともありますし、時々ヘヴィーなギターにかけることもあります。

subsynth

▲「brainworx bx_subsynth」
 

──この「brainworx bx_subsynth」は結構パラメーターも多いですね。

Tom-H@ck:はい。でも、僕も説明書を細かく見ていないし、先ほどの「Teletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier」同様、パラメーターを適当にイジって、「あっ、これいいわ!」みたいな感じで音で判断しています。で、倍音系で言うともうひとつ「brainworx VSM-3」というプラグインもよく使っていて。これは、下の倍音ではなくて、中域から上の倍音を足せるモデルですね。この製品は実は実機も使ったことがあるんですけど、プラグイン版が出たときに試して良かったので。そのまま使っています。

──上の倍音を足すというと、ギターですか?

Tom-H@ck:これも割と何にでも使えるんですよね。僕の場合、ギターはもちろん、ドラムにも使うし。ベースにはあまり使わないですけど、シンセに使ってSuperSAWみたいなサウンドに作り変えることもあります。ただ単にEQするだけだとうまくいかないときに、これをかけるとブリティッシュな感じというか、ロックな感じに仕上げることができるんです。

──これも音で判断してパラメーターをイジっている感じですかね。

Tom-H@ck:そうですね。感覚的にはリングモジュレーターやFMシンセをイジっているのに近いかもしれませんね。
 
VSM-3

▲「brainworx VSM-3」
 

──さて、本日はUADプラグインにまつわる様々な話をお聞きしましたが、Tom-H@ckさんが手掛けた楽曲の中で、特にUADプラグインが活躍した作品を挙げるとすると何でしょうか?

Tom-H@ck:僕は「OxT」と「MYTH & ROID」という2つでアーティスト活動をしているんですけど、「MYTH & ROID」の1stアルバム『eYe’s』ですかね。このアルバムは7〜8割をアナログシンセで作ったんですよ。今日お話ししたプラグインもめちゃくちゃ使っていますし、キックひとつとってみても「うぉー、こんなにローが出てるの!」って驚いてもらえると思います。

──最後に、Tom-H@ckさんにとって最も重要なUADプラグインは?

Tom-H@ck:Manley、Neve、Pultec。この3つはまさに必須アイテムだと思っています。

 

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TomH@ck

<Tom-H@ck>


アーティスト、作・編曲家、音楽プロデューサー。音楽家としてT.M.Revolution、でんぱ組.inc、ももいろクロ
ーバーZ、清 竜人25、SuG、LiSA、UROBOROSなどのアーティストの作品や、けいおん!、オーバーロード、Re:ゼロ、ダイヤのA、はがないなどのアニメ音楽を手掛けている。また、2015年からはオーイシマサヨシとのユニットOxTと、MYTH & ROIDという2つのユニットでアーティストとしても本格的に活動している。

MYTH & ROID
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『eYe’s』


KADOKAWA
ZMCZ-11077 2017年発表

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