ユニバーサルオーディオ製のIFをプロが使う理由に迫る! 第五弾
UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【みきとP】
UADプラグイン愛用ミュージシャンインタビュー【みきとP】
2019/09/05
──ユニバーサルオーディオ製品を最初に使い始めたのはいつ頃ですか?
みきとP:使用し始めたのは2017年の夏くらい、コンプというものがようやく使えるようになりつつある頃で、一番実機を再現していると噂に聞いていたUAD-2の「1176」をとにかく試してみたかった頃です。で、景気よく「UAD-2 Satellite」(Thunderbolt3)を導入して、その後「Apollo 8(黒)」とギターREC用に「OX AMP TOP BOX」も導入しました。
──「Apollo」をチョイスした理由というのは?
みきとP:UAD-2を導入するのと同じくらいの時期に、自分はWindowsからMacへと移行したのですが、ユニバーサルオーディオ製品はMacとの親和性も高いし、何より「Apollo」はUnisonで “かけ録り” ができるということで、これもとにかく一度試してみたかったんです。あとはUAのブランド力も影響があったかと思います。
▲「UAD-2 Satellite」(写真左上)、「Apollo 8」(写真右上)、ギター類と「OX AMP TOP BOX」(ユニバーサルオーディオのロードボックス/スピーカー・シミュレーター)」(写真下)
みきとP:その効きの良さにとても楽しみを覚えました。テンションあがる感じです。それまでもプラグインでの音作りはしていたんですが、格別効きがいいように感じました。一も二もなく作家仲間にUADめっちゃいいわと自慢しましたね(笑)。
──では、やってみたかったというUnisonでの “かけ録り” ですが、具体的にはどのようなUADプラグインを?
みきとP:定番にはなりますが、“かけ録り” で使うプリアンプは「Neve 1073」、「UA 610-B Tube Preamp and EQ」。そして、コンプは「1176(種類はソースによりけり)」、「Teletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier」です。あと、リバーブに関しては作曲時には特に使わないですが、人が来て歌うときは「Lexicon 224 Digital Reverb」などを準備します。
──例えば、プリンアンプなどはどのようなセッティングにすることが多いのですか?
みきとP:「Neve 1073」だと、赤いノブをちょっと回すくらいです。かけ録りの際はプリアンプ部しかほとんど使わないので、本当は「Neve Preamp」にした方がDSPを節約できるのかもしれませんが。
▲「Neve 1073」
みきとP:ボーカルだとこんな感じですかね(画面キャプチャー参考)。でも、これはそのときにそうだっただけで、毎回違います。自分としては、あまりプリセット登録はせずに、その都度感覚でイジって良きところでやってますね。
みきとP:おそらく実機で “かけ録り” するメリットと変わらない答えにはなるんでしょうが、そこである程度の下地を作ってしまえば、後々のミックス処理が楽になるということと、RECの際のテンションが良い方向にいくかなと思います。
──たしかにミックスの段階で選択肢が多過ぎるのも困りものですよね。
みきとP:はい。それまでは自分も色々なプラグインを挿してあれやこれや後処理していたんですけど、UAD-2で録音したオーディオを聴いて、何もしなくても既にいい感じに聴こえたのは感動でした。
──では、続いて “かけ録り” 以外でサウンドメイクなどに使うUADプラグインについて教えて下さい。
みきとP:使用頻度が最も高いのは「API 500 Series EQ プラグイン・コレクション」の中の「API 550A」ですね。これは特にギターに挿すことが多くて、とりあえず中段のノブ(1.5-3-5k)をちょっと回して、上段のノブもちょっとだけ回す感じです。これだけでOKなんです。かなり効きが良く、抜けてきますし、自分の好みの音になります。ちなみに、あんまり回し過ぎると効き過ぎて低音を食っていく点が注意ですね。FREQは回してみていいところでOKです。
▲「API 550A」
みきとP:キックとか、ベースに「Littel Labs Voice Of God Bass Resonance」というプラグインを使います。これもわかりやすく低音が増されるのでやり過ぎに注意なのですが、とりあえずインサートして聴いてみて(それだけでかなり変わるので)FREQを回して良きところに合せていきます。自分の場合は、そこからamplitudeを左に回していって減らすパターンが多いですね。ちなみにデフォルトでは目盛り5くらいなんですが、2とか3くらいでよく使います。
──「Littel Labs Voice Of God Bass Resonance」の下側のボタンは?
みきとP:下のボタンは狙う帯域のポイントですね。赤が有効、緑緑っていうパターンも含めて4種類です。このプラグインもあるとないでは、わかりやすく低音感が違うので楽しいです。Voice of Godっていう名前も好きですね。
▲「Littel Labs Voice Of God Bass Resonance」
みきとP:はい。「Brainworx bx_digital V3」という一見難しそうな見た目なんですが、これをマスターにほぼ挿してます。
──このプラグインの使い方としては?
みきとP:「Brainworx bx_digital V3」はM/S処理ができるEQなんですけど、初心者の方だったら、まず左下のBassShiftとか右下のPresenceShiftとかを触ってみるとミッドとサイドの音の変化がすぐつかめると思います。自分の場合はそれ以外に中央上右のワイドつまみも使いながら楽曲全体のサウンドを仕上げています。一見難しそうなんですけど、大体のところを触れば音がいい方向に変わってくれるし楽しいですよ。もちろん、これもやりすぎは禁物かなと思ってますけど。
▲「Brainworx bx_digital V3」
みきとP:自分は2018年に発表した「ロキ」という楽曲で初めてUADプラグインを使用し、ミックス・マスタリングまでユニバーサルオーディオの製品で仕上げました。具体的に何をどうしたというのは、感覚的な部分が大きいので実際の数値や、重ね方などはプロエンジニアの方から見ればいささか破天荒な感じなんだろうとは思いますが、自分の中でかっこいい音が作れたと手応えを感じています。
▲画面は楽曲「ロキ」のベースにインサートしたプラグイン。本人いわく「意図が思い出せない部分もあるけど、そのときはそれがかっこいいと思ったんです。そんなもんです」とのこと
みきとP:いい作品というのは細かいこだわりの積み重ねで、例えばギターを一つ録音するにも、マイクやギターアンプ、プリアンプやコンプにEQ、どれも気を配らないといけないと思います。その中で、皆うまくヴィンテージやモダンのチョイスをして自分の表現を高めていくわけですけど、追求すればする程どんどん時間も手間もコストもかかってきますよね。「一人で全部お願いします」というオーダーもある昨今、ある程度、信頼度の高い製品に身を委ね効率化を図るのは常識的なことだと思います。そういう意味でもユニバーサルオーディオの製品は時代に添って、大変クリエーターの力になってくれると感じます。
ただ、もちろん「1176」や「Apollo」を使ったからといって、ダメな曲が名曲になったりはしません。それらはあくまでプロフェッショナルという観点から見た “スタジオ標準” のツールであるという部分は含み置きした上で、さぁ何を創るか、受け手にどんな “音楽体験” を提供しようかということを考えなければいけないんじゃないかと。要するに、やっとスタートラインに立った僕らに何ができるか?と、そんなワクワクした気分にさせてくれるのが、ユニバーサルオーディオ製品なのかなと思います。
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