スタジオクラスの音で録れる最新オーディオインターフェイス
スタインバーグUR-RT2 & UR-RT4の音質をプロが証明!
スタインバーグUR-RT2 & UR-RT4の音質をプロが証明!
2018/08/10
試聴レビュー2
佐藤雅彦(エンジニア)
SAKANAMONやSHISHAMOなどの作品を手掛けいる佐藤雅彦さんは、ニーヴやウーレイなど、ビンテージアウトボードを駆使した音作りに定評のあるエンジニアです。ニーヴサウンドにも精通している佐藤さんに、UR-RT4の音質を試してもらいました。
取材:目黒真二 写真:小貝和夫
トランスをオンにすると
スピーカーが5cmくらい前に来た印象になります
佐藤雅彦(サトウ マサヒコ):ビンテージコンプやHAを駆使した音作りを得意とするエンジニア。最近ではSAKANAMON、ウルトラタワー、木村カエラ、SHISHAMOなどの作品やライブ音源に参加。自社スタジオ「Basement Studio」とライブ録音チーム「mixmix.」を中心に、サウンドプロデュースからライブ録音まで幅広く活動中。
──まずUR-RT4の見た目の印象はいかがですか?
佐藤:高級感と重厚感に溢れていて、ある程度の重さがあるところに安心感を覚えました。スリットからルパート・ニーヴ・デザインズのロゴが見えるのもすごくワクワクします(笑)。サイズ的には持ち歩くのが苦にならないですし、デスクトップに置いても違和感はないですね。ツマミや入出力端子の構成もシンプルでとてもわかりやすいですし、直感的に操作できます。
──では、今回どのようにUR-RT4のサウンドをチェックしたのですか?
佐藤:今回はSAKANAMONの藤森元生(vo, g)くんに協力してもらって、アコースティックギターの弾き語りで試してみました。歌とギターに別々のコンデンサーマイクを使って、トランスをオンにしたテイクとオフにしたテイクを、24ビット/192Hzで録っています
──まずは、トランスをオフの状態でレコーディングしたサウンドの感想を教えてください。
佐藤:サラッとしてクリアな音質という印象を受けました。内蔵されているヤマハのD-PREというマイクプリは色付けがなくて、ギターやボーカルの特徴をそのまま活かすことができるので使いやすいですね。
──では、トランスをオンにしたサウンドはいかがでしたか?
佐藤:正直ビックリしたんですけど、僕がいつもレコーディングスタジオで録っている音に非常に近いんです。例えば、アコギはダイナミクスが激しい楽器なので、うまく録るのが難しいのですが、UR-RT4はトランスをオンにするだけで音をうまくまとめてくれるんですよ。イヤな角を取ってくれて、密度が濃くなるというか、音がグッと詰まっていて、目の前に出てくる感じがすごくいいと思いました。音圧感も十分に感じられます。
──トランスをオンにすることで何が変わっているのでしょうか?
門垣:他のオーディオインターフェイスだと、ダイレクトモニタリングにしていても音の遅れや位相のズレが気になるんですけど、自分のシステム以外で、初めてレイテンシーを気にせずに使えました。プレイヤーもまったく問題なく演奏できていました。トランスをオンにした時には、プレイヤーのテンションが俄然アップしていましたね。
──そのトランスをオンにしたサウンドの特徴や印象を教えてください。
佐藤:EQみたいに特定の周波数をブーストしているのではなくて、全体的に底上げされているという印象ですね。ゲインを同じ設定にしていても、オンにするとモニタースピーカーの位置が5cmくらい前に来たような印象を受けました。と言っても、ただボリュームを上げているのではなくて、歌や楽器の存在感ごと前に出てくる感じなんです。逆に後ろに定位させたいもの、例えばドラムのトップとかではトランスをオフにして、バッキングになじませるようにするのもありだと思います。
──他に、どういう風にオンオフの使い分けができそうですか?
佐藤:メインボーカルではトランスをオンにして、ウーアーコーラスはオフにするとか、ガッツを持たせたいパートと空気感を持たせたいパートで使い分けると良さそうですね。
──前後の距離感をトランスのオンオフで調整できるのですね。
佐藤:エンジニアは、そういう前後感を演出する作業をミックスで行なっていると思っている人も多いかもしれませんが、プロは複数のマイクやマイクプリ、コンプ、EQを使って、録音時にも行なっているんです。例えば、あまり前に出さないパートはサラッとした音で録れるマイクを使ったり、コンプを軽めにかけたりとか。UR-RT4は、それに近いことをスイッチひとつでできるのが手軽でいいですよね。
──アコギのピッキングのニュアンスなど、再現性はいかがでしたか?
佐藤:トランスをオンにすると、巻弦とプレーン弦の特徴がしっかりと感じられる音で録れました。アコギはスリーフィンガーのアルペジオや激しいコードストロークといった演奏方法によって録り方が変わるんですけど、ゲインを上げて録ることが多い楽器で、ビンテージ機材でゲインを上げると、どうしてもヒスノイズが気になるんです。でも、UR-RT4はS/Nも非常に優れていて、ゲインを上げてもクリアなサウンドで録れました。
──試奏中にSAKANAMONの藤森さんは何か言っていましたか?
佐藤:今回、ダイレクトモニタリングを使わなかったんですけど、それでもレイテンシーが少ないことに感動していましたね。彼が自宅での作業で使っているオーディオインターフェイスはレイテンシーが多くて、これはあまり薦められる方法ではないですけど、いつもは片耳にヘッドホンをして、生音を聴いてモニタリングしているらしいんです。でも、今回はそれほどレイテンシーが気にならなかったということで、「自分も欲しい!」と言っていました(笑)。実際、藤森くんの演奏を録ったオーディオ波形を見てみると、トランスをオンにした方が波形が大きくなっているんですね。これはトランスの影響で演奏や声量が強くなった訳ではないと思いますが、モニター音の聴こえが良くなって、いい演奏が録れたということはあるかもしれません。
──そのヘッドホンのモニター音についてはいかがでしたか?
佐藤:これはヘッドホンをつなげてみて僕も思ったんですけど、音量的にも十分ですし、藤森くんは「すごく聴きやすい」と感心していました。それから、メインアウトがプロ機器並みの出力レベルなのにも驚きましたね。
──実際に佐藤さんがUR-RT4を手に入れたら、どのようなシチュエーションや用途で使いますか?
佐藤:これまで自分が録ってきたドラムトラックをUR-RT4に通して、トランスをオンにして録り直してみたいですね。僕はAPIの550というEQを使って、EQ自体はイジらずに通すだけの状態で録り直すことがあるんですけど、UR-RT4ならそれと同じ効果も期待できます。いわゆる「質感を足す」という用途にも使えると思いました。
──UR-RT4は、どんなジャンルに合うと思いますか?
佐藤:向かないジャンルはなさそうですね。でも、やっぱり音がグッと前に出てくるようなロックやポップスにはピッタリだと思います。
──では、このUR-RT4をどんな人にオススメしたいですか?
佐藤:僕自身、とても気に入ったので、ミュージシャンやクリエイター以外に、エンジニア志望の人にもオススメしたいですね。録る側にとっても、録られる側にとっても、音楽を作るうえで「演奏しやすい、歌いやすい」というのは、すごく重要なんです。UR-RT4ならヘッドホンの音が前に出てきますし、自分の演奏の細かいニュアンスもダイレクトに伝わってきますから、それだけ表現力も増して、いいテイクが録れると思うんです。UR-RT4を使えば、今まで自分が知らなかった新たな表現に気づけるかもしれませんよ。
左は弾き語りをレコーディング中の藤森元生氏。写真左上は実際にセットしたコンデンサーマイクで、アコギは黒いパールマンTM-1、歌はシルバーのノイマンU47 TUBEで収音した
試奏時のモニタリングは、普段から佐藤氏が愛用しているというヤマハMSP7 STUDIO(左)と、ProAc STUDIO100というスピーカーを使った
トランスをオンにして録った際は、オフで録った時に比べて、波形の上下の振幅が大きくなっていた。オンにすることでモニタリングがさらにしやすくなり、パフォーマンスにもいい影響が生まれたようだ
佐藤雅彦氏が録音した音源がWebで聴ける!
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