J-AOR、J-POPのヒットメイカー 林哲司が贈る初の“リーダーアルバム”
林哲司「Touch the Sun」インタビュー
林哲司「Touch the Sun」インタビュー
2015/12/09
松原みき「真夜中のドア〜Stay With Me」、竹内まりや「セプテンバー」、上田正樹「悲しい色やね」、杉山清貴&オメガトライブ「ふたりの夏物語」など、多くの80年代J-POPヒットの作曲/プロデュースを手掛けたヒットメイカー、林哲司。そんな彼がソロ名義初のリーダーアルバム「Touch the Sun」をリリースした。本インタビューでは新作アルバムの制作背景やコンセプトはもちろん、彼の作曲家としてのポリシーや作曲方法、時代につれて移り変わっていく“ポップス”への想いを語ってもらった。
取材:斎藤一幸(編集部)
「Touch the Sun」制作の背景
──まず、今作はどういった経緯で作られたのでしょうか?
林:僕は仕事以外でもほぼ毎日曲を作るんですよ。ギターで遊んでいる時にできた曲や、何かの曲に触発されて作った曲など、そういったストックが500曲くらい貯まっていたんです。
そして、それらのテープを整理するために聴き返していたら「今の僕だったら書かないな」っていうメロディが多くて。この曲たちを眠らせておくのはもったいないという気持ちから、いくつか仕上げていったんですよ。それらを集めてひとつのアルバムにしたのがこの「Touch the Sun」なんです。
──アルバムを聴いて80年代AORの雰囲気を強く感じました。特に1曲目、2曲目のウェンディ・モートンのボーカルはそういった80年代AORのムードを出すために選ばれたのでしょうか?
林:いや、そういった意図はないですよ。ボーカリストの起用については“曲の雰囲気に合った声”という条件、つまり曲ありきで選びました。例えば“クレジット買い”されるような、すごく有名な方を使えるならそれに越したことはないんですけどね(笑)
以前、バート・バカラックのコンサートを見に行った時に感じたのですが、オリジナルシンガーではなく、ゲストシンガーであっても曲の雰囲気に合っていれば充分曲の良さは伝わってくるんですよ。今回のアルバムはそういうことがやってみたかったんです。
──ボーカリストはご自身で選ばれたのですか?
林:最終的なジャッジは僕がしましたが、ボーカリストのピックアップは今回協力してくれたブルース・ガイチに頼みました。歌が持つ雰囲気に黒人が向いているのか白人が向いているのかを僕が大まかに分けたあと、ブルースに音源と「こういうボーカルが欲しい」というメッセージを渡し、彼が何人かピックアップしてくれた方にレコーディングしてもらいました。多少の歌い直しや「アドリブを入れてくれ」っていう指示はしましたけど、ほぼイメージ通りのボーカリストをブルースは選んでくれましたね。
──収録曲のアレンジではどういったことを意識されましたか?
林:僕は現在でも様々な方に楽曲提供をやっていますが、渡した曲が「懐かしい」って言われるだけだと、正直、抵抗があるんですよ。だから若手のアレンジャーと現場で話し合いながらサウンドコラージュの編集をするなど、常に新しい手法を探して、吸収するよう心がけています。そうして作り上げた“今の自分”が、現代に鳴らす音楽としてふさわしい作品になるよう制作したつもりです。
──ご自身で音素材の編集もなさっているのでしょうか?
林:ええ。打ち込みなどはMOTUの「Digital Performer」でやってます。僕くらいの世代はそこまでやる人は少ないのかな(笑)例えば1小節のドラムループを作る時、ありものの素材をそのまま使わずに、3、4拍が面白いからこれを1、2拍に持っていこうとか、そういったことをやっていますよ。
──林さんほどキャリアのある方でも、最新のデジタル技術を導入して、ご自身で試行錯誤されているのですね。
林:でも、そこにひとつ落とし穴があって、テクノロジーを導入することで“何を使ったか”ということを重要視してはまずいんですよ。やはり“何を作ったか”が最も大事なことだから。そこは気をつけたいですね。例え機材が簡素であっても、できあがった曲が良いものならば“何を使った”ということは全く関係ないじゃないですか。最初からそのテクノロジーありきで作るのは間違ってるんじゃないかなと僕は思います。
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