15年の軌跡が詰まったベストアルバムを2枚同時リリース!
Ryu☆『Ryu☆BEST - STARLiGHT』/『Ryu☆BEST - MOONLiGHT』インタビュー
Ryu☆ベストアルバム『Ryu☆BEST - STARLiGHT』/『Ryu☆BEST - MOONLiGHT』インタビュー
2016/03/01
コナミの音楽ゲーム「beatmania IIDX」でのデビュー以来、「BEMANI」シリーズにてヒット楽曲を多数提供しているダンストラック・クリエイター“Ryu☆”。その彼が、活動15年の軌跡を詰め込んだ初のベストアルバム2枚(『Ryu☆BEST - STARLiGHT』/『Ryu☆BEST - MOONLiGHT』)を2月24日に同時リリースした。ゲームシーンだけでなく、人気TVアニメ「FAIRY TAIL」やでんぱ組.incへの楽曲提供など幅広いジャンルで活躍する彼がどのように音楽を作っているのか、アルバムのために書き下ろした「STARLiGHT」/「MOONLiGHT」を中心に聞いてみた。ダンス系トラックメイカーを目指す人は必見だ!
取材:東 徹夜
「STARLiGHT」は僕が携わってきた楽曲の総集編的な曲になっています。
──今回のベストアルバムは2枚同時リリースということですが、各アルバムの収録曲はどのように選ばれたのですか?

Ryu☆:『Ryu☆BEST - STARLiGHT』は「beatmania」シリーズへ楽曲提供した曲を集めたいわゆる“BEMANIベスト”といった内容になっています。一方の『Ryu☆BEST - MOONLiGHT』は、僕がBEMANIシリーズ以外で提供した曲を集めた“お仕事ベスト”的な選曲のアルバムですね。
──Ryu☆さんは英語の「Ryu☆」だけでなく、「星龍」、「雷龍」、「青龍」、「月龍」など、様々な名義がありますが、それぞれの名義をどのように使い分けているのですか?
Ryu☆:「~龍」名義は、beatmaniaの一部楽曲に使う名義なんですよ。元々beatmaniaには、難易度の高い“ボス曲”といわれる曲がありまして、その“ボス曲”をオファーされた時に「青龍」という名義を使ってほしいと言われたのが「~龍」名義を使ったきっかけなんです。その後、この「青龍」名義曲はシリーズ化されていったんですが、その中でも変化をつける意味合いで「雷龍」や「機龍」などのバリエーションを使うようになりました。
──「青」以外の文字にはどういった意味が込められているのですか?
Ryu☆:実は、「~龍」名義の楽曲はそれぞれ僕が勝手にコラボ相手を設定して、その人とのコラボ曲をイメージしながら作る“ひとりコラボ”という面も持っていて(笑)。そのコラボ相手のイメージにあてはめた文字を使っています。
──書き下ろし曲「STARLiGHT」の「星龍」名義は誰とのコラボを想定しているのでしょうか?
Ryu☆:「STARLiGHT」に関しては「~龍」名義の定義からはちょっと外れるんです。「星龍」名義の「STARLiGHT」はベスト盤『Ryu☆BEST - STARLiGHT』の記念曲ということで「星」を使ったんですよ。だから『Ryu☆BEST - MOONLiGHT』収録の書き下ろし曲「MOONLiGHT」は月龍名義になっています。
──他の「~龍」名義の曲はどなたを想定していらっしゃるのですか?
Ryu☆:う~ん、それはぜひリスナーの皆さんに想像して楽しんでもらいたいですね(笑)。
──わかりました。では、リード曲の「STARLiGHT」について伺います。この曲はいつ頃作られたのでしょうか?
Ryu☆:この曲は昨年末に作った曲なんです。今まで自分が携わってきた楽曲の1パーツ1パーツを細かく編集して一曲にまとめたもので、僕のファンに聴いてもらったら「この部分はあの曲、あの部分はこの曲だな」って、色んなギミックを仕込んだ総集編的な曲だということがわかってもらえると思います。
──そんな「STARLiGHT」はどんな流れで作られたのですか?
Ryu☆:僕は曲をメロディーから作るんですが、この曲もまずメロディーを作って、その後ドラム、ベースといったリズム隊を組んで、そこに色んな素材を足すという流れで作りました。素材を足す前はわざとアレンジを薄くしたゾーンを作っておいて、そこに声ネタ、サンプリングネタ、メロディーなどを加えて仕上げていく感じです。
──音源は主に何を使われましたか?
Ryu☆:音源は「Nexus」や「Serum」、「Spire」などを使いました。
──そのうちベースで使った音源は何ですか?
Ryu☆:「Spire」ですね。
──上モノは何を使われましたか?
Ryu☆:上モノは「Nexus」を中心に「Spire」、飛び道具で「Serum」を使って分厚くしました。
──リズムに関しては?
Ryu☆:リズムは定番の「Vengeance」シリーズなど、ほぼサンプリングネタを使いました。
──イントロには声ネタも入ってますよね。これはサンプル素材ですか? それともどなたかが歌われているのですか?
Ryu☆:これは90年代からある定番の素材を使っています。

Ryu☆によるCUBASEプロジェクトのスクリーンショット。手前が「Spire」で、奥が「Nexus」
──「Nexus」や「Spire」、「Serum」を使う理由を教えていただけますか?
Ryu☆:即戦力で使えるプリセットサウンドが多いからです。音作りの時間短縮になって、その分メロディー作りに時間が割けるので重宝しています。
──1曲作る時に音色のチョイスはどのくらい時間をかけられますか?
Ryu☆: 僕はまず使えそうなプリセットをチョイスするところから始めるんですが、膨大な数のプリセットを一つ一つ確認すると疲れちゃうので、ランダムに聴いて気に入ったものを選びます。そうして1日かけて曲に必要な音色を集めて、次の日に改めて聴いて、気に入らなければ選び直し、気に入ったら細部を詰めていくという流れですね。トータルで大体2日間くらいはかけてると思います。
──なるほど。例えばメロディートラックはいくつかの音源を組み合わせることもあると思いますが、どういった基準で組み合わせを選ばれるんでしょうか?
Ryu☆:それはもう、“経験と勘”としか言いようがないですね(笑)。一応帯域を見ながら足らない帯域を補完する音を探す場合もあるんですが、基本は「ここの音が薄い!」って思ったら、そこに感覚で選んだ音をスタックしていきます。
──「Nexus」に「Spire」を足す感じですか? それとも逆でしょうか?
Ryu☆:「Nexus」に「Spire」を足すことが最近多いですね。「Nexus」はVA(バーチャルアナログ)音源じゃないということで、音がやや薄い印象がありましたが、最近の「Nexus」の音色は結構厚いので足さないこともありますよ。
──「Nexus」のエクスパンション(拡張)音源なんかは使われていますか?
Ryu☆:ガンガン使います。やっぱり新しいものになるにつれて音が良くなっていますからね。
──「Serum」はどういった場面で使われますか?
Ryu☆: 「Serum」はいじれるパラメータが多く、出音もシャープなので、パンの左右で飛び交うSEやアトモスフィア系など、メロディーとは違ったところでの雰 囲気作りで重宝しています。ランダムに作った音をサンプリングして並べてみたり、シャープな音を利用してEDM系のベース音が欲しい時に使いますね。
──「STARLiGHT」はミックスやマスタリングもご自身でされているのですか?
Ryu☆:そうですね。
──ミックス/マスタリングでよく使われるエフェクトやテクニックはありますか?
Ryu☆: 最近はUADの「Manley Massive Passive EQ」というEQプラグインを色んなトラックで使います。雰囲気を付け加えたり、サウンドに少しコシが欲しい時なんかに良いですね。特にステムミックスで、「キックとベースでかみ合わない」といった時にこのEQの“不思議な魔法の力”でいい具合に聞こえるようになるんです(笑)。マスタリングにも使っていて、最近作る曲のマスタートラックには必ず挿さってますね。
──アルバム『Ryu☆BEST - STARLiGHT』に当たって、楽曲はミックスし直されているのでしょうか?
Ryu☆:はい、しています。
──では今回のアルバムは結構 “Manley” 色の強いものになっているんですね。
Ryu☆:2枚ともかなり強いですね。もう、“マンレイマンレイ”しちゃってるというか(笑)。

右下のプラグインがUAD「Manley Massive Passive EQ」
──『Ryu☆BEST - STARLiGHT』には、リミキサーとして様々な方が参加されていますよね。特に印象に残っているリミックス曲と言えばどれですか?
Ryu☆:まず、自分と同時期にビートマニアからデビューしたkors kの「Line 4 Ruin(
kors k Remix)」が非常に完成度の高いUKハードコアに仕上がっていて、すごく気に入ってます。クラブでかけるときもノリやすい曲なのでぜひ使ってほしいですね。元々kors kは手練れなので、安心してリミックスを任せたんですが、思った以上のものを上げてくれて大満足しています。
──その他の曲では?
Ryu☆:P*Light がリミックスしてくれた「Second Heaven(P*Light Remix)」ですね。彼は僕に影響を受けて曲作りを始めて、今はプロでバリバリやっているという僕の“弟子”とも言えるアーティストなんですが、そんな彼が「Abyss -The Heavens Remix-」という曲で僕が以前使ったリミックスの手法をこの曲で使ってくれたんです。それは原曲の調を短調から長調に変えて、コード進行も完全に変えるというやり方だったんですが、これを聴いた時に僕、泣きました。「やるなぁP*Light」って(笑)。
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