日本を代表するギタリストが待望のニューアルバムをリリース!

木村 大『ECHO』インタビュー

木村 大『ECHO』インタビュー

2016/04/05


クラシックギタリストの木村 大が、キングレコード移籍三作目となるニューアルバム『ECHO』をリリースした。本作は、レッド・ツェッペリンの代表曲「天国への階段」やジャズスタンダード「スペイン」、そして俳優で映画監督の竹中直人が “口笛” で参加したクラシックの名曲「アランフェス協奏曲」など彼の音楽的ルーツとなった楽曲を中心に全10曲を収録。ソロギターはもとより、ピアノとのデュオ、カルテットでのバンドサウンドなど多彩な内容となっている。ここでは、ソロとバンドでの奏法/アレンジの違い、竹中直人が参加した経緯やレコーディング当日の模様など興味深い話を本人に語ってもらった。
取材:斎藤一幸(編集部)

『ECHO』はこれまでの道のりを振り返る意味も込めた作品なんです

──まずは本作『ECHO』をリリースすることになった経緯から教えて下さい。

木村:実は2013年にリリースしたアルバム『HERO』の製作当初から三部作にしようという構想があったんです。一作目の『HERO』はどちらかというとストイックで内に向かう感じで、骨太なロックナンバーがメインの作品、次の『ONE』ではそれらを解放させたいということで、“愛” をコンセプトに色々なカバーに挑戦しました。そして今回、三作目の『ECHO』では、前二作を踏まえた上で、様々なジャンルの最高峰、金字塔になるような作品にアレンジした作品に仕上がっています。それと自分がデビューして17年目を迎えるのですが、これまでの道のりを振り返るという意味で自身の代表曲をいくつかピックアップしたアルバムにしました。曲自体は『ONE』を発表してコンサートやライブをしながら少しずつ朧げながら見えてきた感じですね。

──今回、バンドサウンドになったことで変化はありましたか

木村:自分はクラシックギターがルーツとしてあるので基本はソロギターなのですが、今回はバンドものというところで、みんなでそれぞれの音を共鳴し合う中で “僕自身が求めているギターの音って何なんだろう?” っていうところを答えとして導き出したかったんです。ギターのテクニックや表現とか、そういうのを越えて、自分が出す音そのものが僕にしか出せないサウンドを今作り上げている段階なんだなということが感じられる瞬間があったので、そこが一つの置きどころというか、着地点だったというのが、今作を通しての最終的な答えだったのかなと思っています。

──次に収録曲についてお聞きします。今回1曲目と10曲目が木村さんのオリジナル楽曲ですが、他のカバー曲との違いとか意識して制作されたのでしょうか?

木村:僕はどのアルバムでもオリジナル曲を作る時は、他のアレンジものの楽曲をすべて録り終えてから作り始めるんです。そうしてアルバムに合う曲のイメージやメロディラインを踏まえて新たに曲を書くことでいつもフレッシュな気持ちで作品が生まれるんです。そういう中で書き始めたのが、1曲目の「インナー・サウンドスケープ」です。次の楽曲「サンバースト」以降へとどんどん繋がっていくような、CDとしてアルバム全体としての流れの導入になるような作品にしたくて。ちなみに「サウンドスケープ」という言葉には、“日常と音という繋がりをとても大事にした方がいいのではないか?” という概念もあるので僕などのインストゥルメンタルを奏でるプレイヤーとしてはとても大事なことかなと思っています。

──では10曲目の「エターナル・フロウ」は?

木村:今作のアルバムを集結させたかったんです。9曲目の「アランフェス協奏曲」から、僕のルーツとしてあるクラシックギターというものをこれからも“大事にしていかなくちゃいけないんだ” という思い、これがおそらく永遠に流れ続ける思いというか、そういう曲にしたかったんです。


──カバー曲に関して、過去のカバー曲(ギターソロ曲)をバンドサウンドで再レコーディングされていますが、アレンジ面で苦労されたことはありますか?

木村:まずピアノを入れたというのがとても大きな決断でした。ギターと同じように和音でメロディから伴奏からすべてをこなしてしまうピアノがいることで、ギターと音がぶつかってしまうことが多々あるんですね。僕のギターはやはりソロとして完結されているので、アレンジをする時などピアノと同等な位置にあったんですね。それで、ピアニストの榊原 大さんとその話題になった時に、なるべくその旋律の上を越える、トップノートを越えるような音は作らないようにして、ぶつからないような音作りを徹底しましたね。お互いに聴いて、少しでも違和感があったら話し合って変えていくという作業をしました。だからリハーサルを含めて、とても濃密な時間を彼と一緒に過ごしましたね。

──では、リハーサルをしながらアレンジを組み立てていったのですか?

木村:そうですね、大体のおおまかな流れは作っていくんですけど、実際コードとメロディが基本で、一緒に “ヨーイドン” という風に合わせてみて。そこで “やっぱ、ここちょっと抜けた方が良い” とか、お互いにディスカッションしながら進めていきました。

──「サンバースト」を聴いて、ピアノとギターだけではなく、ベースも目立っている印象を受けました。ベーシストの森田晃平さんはロック畑の方なのですか?

木村:どちらかというとジャズですね。彼は、primitive art orchestraというバンドを組んでいまして。昨年、ジャズの世界で賞をもらった若手のベーシストです。もともと今回のアルバムを作るのに、エレクトリックベースとアルコ(弓)が両方演奏できる人を探していて。結構ソロを弾く時も、ドラマ性があるインプロバイスを作りたかったので、みんなこだわって、それぞれ注文を出し合いながら作っていった感じですね。

──7曲目にはレッドツェッペリン「天国への階段」のカバーが収録されていますが、どのようにアレンジしようと思われましたか?

木村:王道にしようと思いました(笑)。この曲をギター1本でまとめるのに結構イレギュラーなチューニングとカポタストを使いまして。なるべく、ベースラインからメロディライン、やっぱりロバート・プラントの歌詞の旋律も入れたかったので。僕がクラシックのルーツを持っているということで、ハードロック界のクラシック曲といったら、まぁ「天国への階段」だろうと。あとは、とにかくロックが好きなので、やはり神のような楽曲をギター1本でアレンジするということもやってみたかったんです。
次のページ »

この記事の画像一覧

(全0枚) 大きなサイズで見る。

『ECHO』

発売中
¥3,000(+税)
CD:KICS-3351
KING RECORDS


1.Inner Soundscape インナー・サウンドスケープ (Dai Kimura)
2.Sunburst サンバースト (Andrew York)
3.Moontan ムーンタン (Andrew York)
4.Home ホーム (Michael Buble - Alan Chang - Amy Foster)
5.Sanzen-In 三千院 (Andrew York)
6.Sakura さくらさくら (Japanese Traditional)


6.Sakura さくらさくら (Japanese Traditional)
7.Stairway To Heaven 天国への階段 (Jimmy Page - Robert Plant)
8.Spain スペイン (Chick Corea)
9.Concierto de Aranjuez アランフェス協奏曲 (Joaquin Rodrigo)
10.Eternal Flow エターナル・フロウ (Dai Kimura)

Dai Kimura Guitar live tour "ECHO"

・北海道
4月23日(土)|札幌コンサートホールKitara(小ホール)
開場 13:00 開演:13:30|チケット:前売¥5,000 当日¥5,500 (全席指定)
ゲスト:榊原大(ピアノ)、森田晃平(ベース)、はたけやま裕(パーカッション)
問合せ:オフィス・ワン 011-612-8696

・東京
5月29日(日)|日経ホール(大手町)
開場 13:30 開演:14:00|チケット:前売¥5,000 当日¥5,500 (全席指定)
ゲスト:榊原大(ピアノ)、森田晃平(ベース)、仙道さおり(パーカッション)
問合せ:東京音協 03-5774-3030

・山口
6月19日(日)|川棚の杜コルトーホール
開場 14:30 開演 15:00|チケット:前売¥3,500 当日¥4,000 (自由席)|ゲスト:榊原大(ピアノ)
問合せ:川棚の杜・コルトーホール 083-774-3855

・広島
6月20日(月)|Live Juke
開場:19:00 開演:19:30|チケット:前売¥4,800 当日¥5,300 (ドリンク・フード別途/自由席)|ゲスト:榊原大(ピアノ)
問合せ:Live Juke 082-249-1930

・岡山
6月21日(火)|倉敷/Penny Lane
開場:19:00 開演:19:30|チケット:前売¥4,500 (ドリンク別途/自由席)|ゲスト:榊原大(ピアノ)
問合せ:Penny Lane 086-421-3987 (10:00〜18:30 火曜日除く)

・京都
6月23日(木)|京都府立府民ホール「アルティ」
開場:18:30 開演:19:00|チケット:¥4,500 (全席指定)|ゲスト:榊原大(ピアノ)
問合せ:otonowa 075-252-8255

・愛知
6月24日(金)|名古屋ボトムライン
開場:18:30 開演:19:00|チケット:前売¥4,800 当日¥5,300 (ドリンク¥500別途/整理番号付)|ゲスト:榊原大(ピアノ)
問合せ:名古屋ボトムライン 052-741-1620

・静岡
6月25日(土)|LIFE TIME
開場19:00 開演19:30|チケット:前売¥4,800 当日¥5,300 (飲み物フード別)
ゲスト:榊原大(ピアノ)
問合せ:LIFE TIME 054-250-0131 (火〜土曜12:00〜24:00 日曜11:00〜19:00月曜を除く)

・千葉
10月15日(土)|鎌ヶ谷/ MT Milly's
開場:16:30 開演:18:00|チケット:¥5,000 当日¥500増(フードドリンク代別途・整理番号順入場)
ゲスト:榊原大(ピアノ)
問合せ:MT Milly's 047-401-6605 (平日12:00〜17:00)

 

木村 大(キムラ ダイ)

1982年、茨城県土浦市に生まれる。
5歳より父、義輝に師事、ギターと音楽理論を学ぶ。
小学1年で第13回GLC全国学生ギターコンクール小学校低学年の部優勝。1996年、ギターのコンクールでは世界最高水準と言われる第39回東京国際ギターコンクールで見事14歳で優勝。
1996年、 97年2回にわたり茨城県知事賞受賞。この年バルセロナ音楽祭に招待されヨーロッパデビュー。17歳でソニーよりCDデビュー。アルバム『ザ・カデンツァ17』『駿馬』『アランフェス』を発売。この間『トップランナー』『情熱大陸』等テレビ・ラジオに多数出演。2001年2月、第11回新日鐵音楽賞フレッシュアーティスト賞を受賞。
日本を代表するギタリストとしてスペイン王立セビリア交響楽団全国ツアー(14公演)にソリストとして参加。2002年4月より英国王立音楽院に留学、帰国第一弾として2004年3月、NHK交響楽団と3夜連続共演。11月、第1回ベストデビュタント賞(音楽部門)を受賞。
2005年7月、ロサンゼルス録音による4枚目のアルバム『カリフォルニアの風』をソニー・ミュージックより発売。2006年9月、ソニー・クラシカルより『ロンドン・エッセイ』発売。2009年4月よりフジテレビ系列『すき!地球』のテーマ曲として自身作曲の「Home」が使用される。
2009年9月、アルバム『INFINITY mugen-DAI』発売。様々な音楽ジャンルのアーティストとも共演。2013年3月にキングレコード移籍第一弾となるアルバム『HERO』を発表。7月には自身初となる教則DVD『木村大クラシック・ギター・レッスン』を発売。翌2014年5月にはアルバム『ONE』をリリース。唯一無二のギタリストとして、今後のさらなる活躍が期待されている。

関連する記事

PAGE TOP