2014年に日本最大規模の野外音楽イベント「フジロックフェスティバル」の新人アーティスト登竜門ステージ「ROOKIE A GO-GO」に出演という輝かしいキャリアを持つ5人組ロックバンドodol（オドル）。そんな彼らがニューアルバム『YEARS』を5月18日にリリースした。ここではミゾベリョウ（Vo＆Gt）と森山公稀（Pf）を迎えて、本作のリード曲「years」に込めた思いや曲作りにおけるメンバー間のやり取り、レコーディング秘話などについて聞いてみた。

取材：橋本周大（編集部）

──まず、本作『YEARS』のコンセプトについて教えて下さい。

森山：『YEARS』というタイトルは、僕達5人のメンバーがこれまで共に過ごしてきた期間を指していて、その時間をひっくるめたものをコンセプトにしています。

ミゾベ：タイトルを決めたのは僕と森山で、歌録りの終盤にそろそろ決めないとねって話をしていたんです。いつも作品のタイトルを決めるのは後の方ですね。一応早い段階で “これにしよう” みたいな話はするんですけど決まらなくて。本当に決めなきゃいけない時に決心がつくんです（笑）。

──表題曲の「years」はどのように生まれたのですか？

森山：具体的にはメロディですね。Aメロから作ったのですが、約1年前アルバムのコンセプトが決まった次の日に、僕がミゾベにメロディを聴かせて “あ、これ良いね” って言ってくれてリード曲にしようと決めたんです。そこから他のメンバーと “こういう曲があるよ” ということだけを共有しておいて、他のパートには手をつけずに一番最後に他のメロディとオケと歌詞を作りました。

──ミゾベさんは「years」のデモを聴いた時どのような印象を受けましたか？

ミゾベ：森山も言っていましたが、2人で “めっちゃ良いやん。これリード曲にしよう” って盛り上がったんです。それから参考になる曲を色々と聴いたりしてアイディアを練りました。ただ、森山がピアノで弾いたAメロのフレーズだけだったので、他のメンバーに聴かせた時は “これだけじゃわからん” って言われて（笑）。

森山：ただ弾いて録音しただけで、他のパートをどうするかというアイディアもなかったんです。

──歌詞はどのように書かれたのですか？

ミゾベ：『YEARS』はコンセプトが決まっていたので、まずはそこを外さないようにしようとルールを定めて。その中で毎回風呂に入りったりしながら “僕が歌いたいことは何だろう？” って考えて。でも表現するのがなかなか難しくて、それで何日か考えてデモが出来た一週間後ぐらいに “大切な人に再会する” というテーマにしようと決めました。これは想像の世界なんですけど、それを想起させるような僕自身の実体験を参考にはしていますね。

──では森山さんはミゾベさんから歌詞を見せてもらった時、どのような印象を？

森山：毎回なんですが、完成した状態ではなく、例えば2行ぐらいの段階で “ここ出来た” って見せてくるんです。ただ、先に決めたテーマを踏まえ上で見たんですが、良いなと思いました。ただし、完全版が見れるのはレコーディング本番なんです（笑）。その時、納得できないところがあれば言うんですけどね。ちなみに僕が一番好きなフレーズは、“きっと今じゃ　知らないことばかりだ” です。この歌詞がないとこの曲は成立しません。

ミゾベ：この曲だけに言えることなのですが、歌詞が出来上がってから音符の切り方というか結構メロディのリズムが変わったんです。これによって歌詞とメロディが歩み寄ってさらに良い相乗効果を生み出してくれました。

──レコーディングではどのようなことを心掛けましたか？

ミゾベ：もちろん歌詞の情景を思い浮かべながら歌ったんですけど、正直無我夢中でした。でも、表現の部分で自分の気持ちを入れるというよりは、客観的に見ながら “これ良いな” といった形で歌いましたね。

──この曲でレコーディング機材は何を使われましたか？

森山：この曲では基本的にピアノを弾いていて、あえて表記をしていませんがパソコンで作った打ち込みの音も入れています。ただ実際にピアノにマイクを立てて録音したのではなく、Synthogy「Ivory II Italian Grand」というピアノソフト音源を使っています。他の曲に比べて、人間っぽさというかクオンタイズなどを掛けずに音のズレなど生々しく表現することを心掛けました。ただ僕は基本的にですが、バンドなどオケの中でピアノは人間が弾いているリアルさってあんまり必要ないと思っていて。全体の中で良く聴こえれば良しとしているんです。

ミゾベ：マイクはAKG「C414」を使いました。これは僕の声がそのまま出てくれるというか、おいしいとこ取りをしてくれるんです。今回のレコーディングでは他のマイクも試してみたんですけど、基本的にはメンバーやエンジニアの染野拓と相談しながら決めました。というのも彼は森山の大学の同期で。1stアルバムを作る前から一緒にやってきた仲なので信頼を置いているんです。

森山：「C414」だと高域がざらついてミゾベの声のなじみが良くなるんです。他のものだとうるさいというか、ビシビシくる感じになってしまうんです。