河村隆一流の “大人のロックアルバム”
河村隆一『Colors of time』インタビュー
河村隆一『Colors of time』インタビュー
2016/09/26
──今回の『Colors of time』は、どんなことを意識して作られたアルバムなのでしょうか?
河村:前作のアルバム『Magic Hour』では、すべて生にこだわり、楽器はもちろんボーカルもノンリバーブで、ビルボードやブルーノートのような近い空間で聴く音像をイメージしていました。今回はその上半身をある程度残しつつも、下半身であるドラム、ベースをちょっとロックにしてみたり、80年代のボウイとかジャパンとか、あの時代のリバーブ感だったりエフェクト感もリズム隊に入れています。収録曲には、バラードとかちょっとアコースティックっぽいものもあるんですけど、そういう隙間のある “大人のロック”を作れたら良いな、というのが今回のコンセプトです。
──まず、1曲目の「God's gift to man」ですが、非常に荘厳な雰囲気があって、アルバムの幕開けにふさわしい期待感を持たせる楽曲ですよね。この曲をオープニングに選んだ理由は?
河村:「こういうアルバムですよ」っていう提示がしたかったし、変化球である3曲目にいい形でつなげたかったんです。まぁ、変化球というか「あ、前作と変わったな」という印象をまずは植え付けたかったですしね。
──歌詞や世界観でいうと、どういったことを意識して作られた曲なのですか?
河村:イメージとしては「森の中で雨が降り出してきた」ところですね。今回のアルバムは、全体を通して“雨”が色々なところで出てくるですけれども、雨は木の葉に落ちる時、岩に落ちる時、土に落ちる時と、そのサウンドがそれぞれ違いますよね。風が吹けば当然木から「バサバサバサッ」と落ちてきたりするし。この1曲目では、その自然の作るサウンド、音楽に感動している主人公がいて。それはまるで、「神様がくれた、人間が再現できない素晴らしい音楽」なんじゃないか、これは「神様がくれた恵み」なんじゃないかって。雨っていうと、どうしても暗い印象だけど、そうじゃなくて「恵みの雨なんだ」ってね。
──歌詞の中には、人の愛情についても触れていますよね。
河村:そうですね。森の中で、もう一人の主人公が出て来て、「目を閉じてもあなたのそばに」「あなたのところまで行けるよ」と。人って、自然の中にぽつんと置かれると不安になったり、偉大な自然の力の中で無力さを感じたりするんだけど、自分のことを分かってくれている人がいるんだなって。それは恋でも友情でもあると思っていて。そういう歌にしたかったですね。
──続いて、2曲目の「Longing for」ですが、まさに大人のロックというか。ある意味で今回のアルバムを象徴する楽曲だと思いましたが。
河村:2曲目は、光のある場所へ出て行こうとする主人公の葛藤を描いています。イメージでは、ずっと雨の中で砂浜を歩いていた主人公が、もう一人の自分だったり、誰かと出会い、その人間がふと「いや、でもこの世界は繋がっているんだ」と言うんです。その時に主人公は「あ、自分が境界を作っていたんだ!」と初めて気付くんです。そして雨が止むのを待ってみようかと思う。初めて、その光というか日光のたまった場所へ出て行こうとするんです。
──個人的には「傘もささず ただ歩いた」というワードがすごく印象的でした。
河村:そうですね。ここはリフレインもしているし。この主人公の感覚的にいうと、傘をささないこともすべて自分で選んで行なっているような描写だと思うんです。
──河村さんの中では、特に思い入れがある歌詞というと?
河村:やはり「世界はきっと繋がっている」かな。いくつか考えていたんですけど。「止まない雨はない」とかね。でも、この歌詞がコアになったし、この物語の着地点というか。
──なるほど。では、3曲目の「あなたの花」ですが、こちらはピアノから始まる素敵なバラード曲ですね。
河村:メロディもコードも歌詞も違うと思うんですけど、実は小さな頃に聴いた「バ〜ラが咲いた」みたいな曲を書きたいなと思ったんですよ。何か一見寂しい感じがするんだけど、心が温まるような。それは歌い方もそうだし、楽曲のアレンジの積み方もそうだし。スゴく静かに始まって、でも「あなたの努力や思いに笑顔に、その頑張って見せた笑顔が花を咲かせている。もしかしたら周りの人を勇気づけている」という歌を作りたくて。
──歌詞の“一輪の花”とは、河村さんご自身では何色のバラをイメージされていたのですか?
河村:赤かな、やっぱり。でも全体的にモノクロのイメージもありました。
──この曲も“雨の中にあるバラ”なのですか?
河村:今、時代がスゴくもがいていて。もちろん良いところもあるけど。僕、悲観的なことを考えたり言葉にするのがあまり好きじゃないので、悪くなるなんて全然思っていないし。歌詞では「この雨がきっと止むとあなたは知っていた」って書いたんですけど、人の痛みを和らげる笑顔があったり、努力している姿に必ず一人一人に花は咲いているんだ、っていう曲を書きたかったんです。
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