河村隆一流の “大人のロックアルバム”
河村隆一『Colors of time』インタビュー
河村隆一『Colors of time』インタビュー
2016/09/26
──4曲目の「August」は打って変わって、夏がテーマになっていますよね。
河村:この曲は、コード進行が8小節単位ぐらいで循環しているんですが、最初はこの完成系とは違うメロディで、かなり複雑だったんです。さすがに「覚えて歌えるかな?」というところまでいって。なので、一つの描写ですべて書こうと思い直して。「走っている、燃えるようにたなびいている髪を見て、木陰で見ていたんだよね」とか、「その風に揺れている、その汗を見ていたんだよね」って。もうそれだけを歌っている構成で作ったんです。
──河村さんは、ギターやピアノで作曲されているとお聞きしましたが、この楽曲はどちらで作曲されたのですか?
河村:ピアノだったかな。
──ピアノとギターで作曲する比率というのはどちらが多いのでしょうか?
河村:別に決めているわけではないんですよ。飽きたら変えるというか。ギターで書ける時はパーっとできるし。「そろそろピアノにしてみようかな」とか。
──作曲の手順というのは、例えば歌詞を最初に書いてメロディを当てはめるのか、それとも何となく「ラララ」と歌いながらコードを作って、それに歌詞を当てはめるとか?
河村:そうですね、「ラララ」が多いですね。1センテンス出てきて、それを繰り返していることもあるんですけど。ギターやピアノ、時にはシンセでストリングスっぽい白玉(全音符)を入れてメロディ付けたり、色々しています。メロディの付け方としては、アドリブ、インプロビゼーションで歌うか、またはピアノやギターの手グセで付けたり。全部ちょっとずつ変わっていくので。それをまた歌ってみたりとか。自分を飽きさせないようにその都度やっています。
──河村さんのキーの広さは周知の事実ですが、ご自身ではどのキーが唄いやすいとかいうのはありますか?
河村:キーはあまりないかな。
──では割とコードに合わせて鼻歌的に歌って、それに合わせて歌が自然に出てくるということなのですね。
河村:あまり執着しないようにしているんです。例えば、今はセルフプロデュースですけど、プロデューサーがいたとして「この曲のサビはさぁ」って言われたら、喜んで変えてみようと思うんですよ。それはなぜかというと、記録が残っているから戻るのは簡単だなと。もっと言うと、例えばボーカルトラックだけ違うメロディで5本作って、そのメロディに合わせたリズムも5パターン付ける。そしてさらに、本来の楽曲は残してコード進行も残り4パターンを少しずつ変えていくと。テンポも変える。楽器構成も変える。それだけでも変な話、違う曲になっていったりするんですよ。それをまた冷静に何日かして聴いた時に「あ、2個目のこれ良いね」ってこともあるんですよ。そういったことを実験的にやるのもスゴい好きなので。結構フレキシブルに感覚を頼ってやっていますね。
──作った曲に対して歌詞を考えたり、歌詞を作る上で心掛けていることは?
河村:自分がドキッとしたり、心が動く言葉を必ず1曲に一つは入れることですね。4曲目の「August」で言えば「キミの髪を眺めてた」という部分。
──あらかじめ“これはTourbillon用、これはLUNA SEA用。これはソロかな”といった感じで、頭を切り替えたりも?
河村:それはありますね。
──それはどのように分けられているのでしょうか?
河村:フィーリングです。「この曲はギターを“ドカーン”とやったらLUNA SEAになるかな」とか。そういった形で曲出しをしていますね。
──ソロに関してはどのようなイメージで歌詞を書かれるのですか?
河村:出来るだけ作りすぎないようにしています。作りすぎた言葉よりは自分が普段使っている言葉だったり、伝えようと思っている言葉をそのまま歌いたいと思うし。今回、歌入れが3日間だったんですが、その間作詞もフィックスしてなったんです。1日3〜4曲書いて、歌って、コーラスまで録って。じゃあお疲れさん、みたいな。
──早いですね。
河村:ほぼ一発録りなので。気になればちょっと直すか、完全に歌い直すかみたいな。歌詞も、例えば大切なファンの前で聞かれたら何か答えるじゃないですか。そういう素早いレスポンスでいつも書けないかなと思っていて。映画のアメリカンジョークみたいな受け答えのスピード感と、その時のアイディアの斬新さだったり、「あぁこの人はこういう受け答えをするんだ。オシャレな人だな」ってね。作詞もそうやったら楽しみながら書けるんじゃないかなと。仕事として煮詰まるんじゃなくて。
──なるほど。では、今度は5曲目の「Guitar Riff」についてお聞きします。この曲はそれまでの曲調と違ってアップテンポな曲ですよね。この曲はどのように生まれた曲なのですか?
河村:この曲は本当にギターのリフから出来上がった曲なんです。実はスタジオにエレキギターやアンプを出してくる時間がなくて、最初はアコースティックギターで弾いていて。それをギターの福田さんに弾いてもらって。そこで僕が「なんか違うな。ハモってみようか」と提案したら良い感じになって。
──ギターの音色など、こだわったポイントと言うと?
河村:色々あるのですが、この曲に関してはあらかじめ僕の竿とアンプとボード類をセッティングしておいて、あとは弾くだけの状態でプレイヤーに来てもらったんです。「この竿で今俺が音を作るから」とか言ってね。「ここはアルペジオでこんな感じ」とか、「ちょっと弾いてみて。あ、3つ目のフレーズそれだけ繰り返して」とか。だからシミュレーションしながら本番も録っていくみたいな。「この曲でこの歪み方だと違うな」って言ってエフェクターを変えてみたりもしました。
──ちなみにどういったギターやエフェクターを使われたのですか?
河村:ギターはFenderストラト(スラブボードのハードテイル)です。アッシュボディで軽くて。おそらく1962年製のビンテージものですね。あとは僕の生まれた1970年のGibson ES-335。それがメインでした。その他にも55年のストラトとか、70年代のテレキャスターカスタムとか。アンプはブルーノのポニーを使いました。歪み系は、一番上からディストーション、オーバードライブとあって、その下に最近新たに購入したんですけど、ちょっとローゲインなLandgraffの「Blues Box」をセットしていました。他はケンタウルスを知人のお店で購入して。ケンタウルスは好みのサウンドだったので結構使いましたね。
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