バンド存続の危機を乗り越え生まれた、2年ぶり4枚目の最新作!
IKE(SPYAIR)『4』インタビュー
IKE(SPYAIR)『4』インタビュー
2015/11/24
俺が使う唯一の“楽器”がマイク。だから、誰よりもこだわりたい。
──「Stand by me」と「アイム・ア・ビリーバー」は、曲調にもよるでしょうが、歌声にとても余裕を感じました。例えるなら、軽自動車で時速100kmを出すのと、スポーツカーで同じスピードを出した時の乗り心地の違いというか。
IKE:なるほど。おっしゃることはよく分かります。実は今回のレコーディングを通して、気付いたことがひとつあって。バンドの中でのよい声、つまり、厚みがありつつ抜けがよくて、耳が「ファットだな」と認識できる声って、力が抜けている時のものだったりするんですよ。声をリスナーに届けるためにマイクを使うわけですが、マイクを使って、暖かみのあるファットな歌を届けようとした時に、「ワーッ!」と力任せに歌うと、マイクの限界値を超えてしまう。つまり、歪んでしまったり、マイク自身がリミッターをかけたような状態になって、声が絞られてしまうんです。声をそのまま収音するためには、あまり音圧がない声で、限界値を超えないように歌うことが必要で。でも、実際には同時に声の張りは出さないといけない。そのバランスが、とても難しいんです。
──小さな声で歌えば、そのまま100%をマイクに収音できますが、でも歌に表情がなくなりますよね。
IKE:それが今回、肩の力を抜いて自然体で歌えたことで、最高のバランスで歌をマイクに入れ込むことができました。例えば「アイム・ア・ビリーバー」では、これだけバンド・サウンドに疾走感があって歪みのギターが鳴っている中でも、スッと歌を乗せるような形に仕上げることができました。それって、肩に力が入っていた今までの俺にはできなかったことなんです。以前は、バンド・サウンドを切り裂いて、歪みで抜けさせるという歌い方でした。もちろん、そのカッコよさもあって、「ダレカノセイ」がそういったニュアンスを活かした歌になってるんですが、でも「アイム・ア・ビリーバー」は、雲の上で歌っているような浮遊感がを表現したいと思って、それを上手くレコーディングで実現できたと思っていて。俺の仕事って、レコーディングだろうが、ライブだろうが、ベストな状態でマイクに歌を“収音”することなんです。そこに対する“気付き”が多いレコーディングでしたね。
──ボーカリストは必ずマイクを使うわけですから、その感覚や気付きはとても大切なことですよね。
IKE:しかも、マイクの限界値ギリギリまで声を張ることも大事で。例えば曲の前半はソフトに歌って、ラストのサビに向けて、自分のパワーとマイクの性能のギリギリのところを突いていくとか。そういったボーカルの新しい技法や感覚を、今回のレコーディングでは注視できました。これができないと、どれだけ歌が上手くても、聴き手に伝える術を持っていないのと、同じことですからね。
──そこへの意識がおろそかなボーカリストも、決して少なくはありませんよね。
IKE:ポピュラリティのある音楽が、さらに浸透していくためには、ボーカリストがもっと頑張らないとダメだと思うんです。そのためには、歌い方はもちろんですけど、マイクの種類であったり、どれだけの音圧に耐えられるかといった特性であったり、そこに向き合うことも、ボーカリストの仕事だと思っています。俺が使う唯一の“楽器”がマイクですから、マイクに対する知識と感覚は、常に養っておきたいですね。
──これまでも、いろんなマイクで試行錯誤を繰り返してきたのですか?
IKE:いろいろと試しました。ノイマンのM149 Tubeがいいと言っても、個体差もあるじゃないですか。それに、チューブ式やトランジスタ式もあったり。僕は、暖かみのある音が好きなので、チューブマイクを選ぶことが多いですけど、実際の現場では、エンジニアさんが用意してくれたマイクを3種類くらい立てて、その中から楽曲に合うものを選んでいきます。
──今回のレコーディングでは、どういったマイクを使いましたか?
IKE:タネ明かしになっちゃいますけど、実は今回のアルバムは、ほとんどの曲でマンレイのマイクを使いました。これはビンテージではなく現行モデルなので、手に入れようと思えば、どなたでも買えるマイクです。オールドマイクでは太刀打ちできないほど、今の技術が進歩したんだなと感じたマイクでしたね。
──具体的には、どういった点が気に入ったのですか?
IKE:無駄が少ないと言うんでしょうか。バンド・サウンドに合っているというか、コンデンサーマイクならではの、きらびやかさと抜けのよさがありつつ、ダイナミックマイク的な粘り、ガッツがあるんです。ただ、「ダレカノセイ」は、ブラウナーで録りました。
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