女優すみれをフィーチャーしたバラードソングなど、ジャンルやスタイルを超越した計10曲を収録!
Jazztronik(野崎良太)『Keystone』インタビュー
Jazztronik(野崎良太)『Keystone』インタビュー
2016/06/09
キーが合わないので、笙(しょう)の音はKRONOSのオルガンの音色で代用しました。
──では、今度は5曲目の「PeachBoy」についてお聞きします。この曲は、桃太郎の英語ナレーションがとても印象的ですよね。どういったコンセプトで出来た曲なのですか?
野崎:これは、最初に曲が出来ていたんですけど、何か足りなくて一要素加えたいなと思っていて。そんな時に、僕が大学生の頃、シガニー・ウィーバーが坂本龍一さんの曲に合わせて童謡のようなものを入れたCDがあったことを思い出したんです。で、毎回僕のプロジェクトに参加してくれているロブ・ギャラガーにすぐに連絡して。僕が何パターンかロブに送った桃太郎の英詞を、彼なりに色々と工夫してくれて出来上がった曲です。
──外国でライブを行なった際にお客さんの反応が楽しみな曲ですよね?
野崎:これは、ロブに言われたことではないんですが、ネットなどを見てみると、海外の人は「結局、なんで鬼は退治されなきゃならないんだ」って疑問に思うみたいで。で、たしかに冷静に考えてみると、桃太郎の中で「鬼って何か悪さしたんだっけ?」って思うところもあって。
──鬼が悪さをしているシーンはカットされていることも多いかもしれないですよね。
野崎:そうなんですよ。僕もいくつか桃太郎を読み直してみたんですけど、簡略化されている桃太郎には、鬼は最後しか出てこないんですよね(笑)。
──曲自体はエイブルトンLiveで作られたのですか?
野崎:最初はそうだったと思います。LiveとPushの組み合わせで。やっぱり、ハードウェアの良さってありますからね。あと、ハードウェアと言えば、今回のアルバムではエレクトロンのAnalog Rytmはよく使いましたね。こういったマシンって、そのシーケンサーならではの良さってあるんですよ。DAWソフトのシーケンサー1つで統一した方がラクなんですけど、僕は何台も同時にこういったマシンを使いたくなっちゃいますね。多少ズレてたっていいんですよ。
──わかりました。では、次は6曲目「The City Beyond-幻(maboroshi)」について教えてください。この曲は和のテイストを強く感じる仕上がりだと思いますが。
野崎:はい。これはおっしゃる通り、和のイメージですね。デモの時は「東京」という仮タイトルを付けていて。
──全体的に長い曲ですし、構成はどのように考えたのですか?
野崎:よく友達とかにも聞かれるんですけど、よくわからないんですよね。気が付くとそうなっているというか。ただ、真ん中の部分に雅楽の要素を持ってきたいなというのはありました。特に深い意味はないんですけど、僕は和のものがすごく好きで。しかも、外国の人が使うちょっと誤った和の使い方も大好きで。逆にそれが日本らしかったりもするじゃないですか。
──この曲ではソフト音源などは使わずに、すべて和楽器を実際に弾いて録音されているのですか?
野崎:箏(こと)は生、弦も生、ピアノも生。でも、笙(しょう)っぽく聞こえるものはオルガンです。
──オルガンなんですか?
野崎:そうなんです。KRONOSのオルガンで高い方の鍵盤を弾いています。実際の笙(しょう)だと、僕のこの曲ではキーが合わないんですよ。雅楽の本を読んで、笙の出せる和音なんかも調べてみると、笙は10〜11パターンくらいの和音が出せて、メロディーと一緒に和音が動くんですよね。なので、その笙の和音の一覧表を僕の曲のメロディーにあてて。笙って、発音方式とかの構造がオルガンに似ているんですよね。
──レコーディングはどちらのスタジオで行なわれたのですか?
野崎:箏は六本木のサウンドシティ、ピアノはTAGOスタジオ、弦はロンドンのエンジェルスタジオ。もう、バラバラですね。
──色々なスタジオを使われているんですね?
野崎:やっぱり、スタジオごとに違う響きがあって。僕としては、予算の許す範囲で好きなスタジオで録りたいと思っていますし。大きいスタジオが絶対良いってこともなくて、使用用途によってチョイスしています。
──では、7曲目の「WARP」ですが、こちらの曲はクラブ仕様というか。フロアで盛り上がりそうな曲ですよね。
野崎:そうですね。ダンスフロアを旅するというか。実は5〜6年、いやもっと前かな、もともとこの曲に関しては「WARP」という名前で作っていたものなんですよ。でも、文字通りワープするような僕のイメージすることが当時のどのDAWソフトでも作れなくて。トラック数を使い過ぎて、当時のコンピュータだと動かなくなっちゃったり。全部で140トラックぐらい使っていて、パッ、パッと変わる場面に応じて10音色くらいは使っているので。でも、今になってようやくコンピュータのパワーも追いついて。今回、あらためてやってみようかなと思ったんです。
──コンピュータのスペックの話が出ましたが、野崎さんが使っているのはWindowsですか、Macですか?
野崎:Macですね。RetinaディスプレイのMacBookです。これをサンダーボルトで別の大きなディスプレイに映して作業しています。
──インターフェイスは何をお使いですか?
野崎:アポジーのSymphony I/Oです。昔からアポジーの製品が好きで、自分にも合うかなと思って。そういう理由で使ってます。こだわったら他にもあるんでしょうけど、僕としては今はそこを突き詰めるよりも他にやることがあるかなと思っています。
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