「JUNO-106」がコンパクトになってEDM時代に再び降臨!
【懐かしのテクノ名曲・サウンドメイク解説動画付き!】ローランド「JU-06」徹底レビュー
【懐かしのテクノ名曲・サウンドメイク解説動画付き】ローランド「JU-06」徹底レビュー
2016/06/13
1984年に発売されたローランドJUNO-106。この名機をコンパクトかつ高性能に蘇らせたアナログモデリング・シンセサイザーがJU-06です。ここでは、JU-06の魅力を紹介しつつ、オリジナル機を熟知した常見和秀氏の試奏インタビューも掲載。さらに動画ではJUNO-106の定番サウンドとも言えるアンダーワールド「Born Slippy(ボーン・スリッピー)」風の音作りなども公開しています。30〜40代のテクノ好きだった人は必見です!
文・取材:布施雄一郎
イギリスのエレクトロニックグループ、アンダーワールドは、1995年にシングルとして発表した代表曲「Born Slippy」でJUNO-106を使っている
1990年代に国内では電気グルーヴ、そして海外ではアンダーワールドをはじめ、ダフトパンク、ケミカルブラザーズ、サブトラクトといった、テクノ/エレクトロのトップアーティスト達が愛用してきたシンセ、ローランドJUNO-106。そのサウンドはあくまでもプロ仕様でありつつ、初心者でもシンセの音作りを楽しめる操作性を実現するというコンセプトで1984年に発売されて以来、今なお熱い支持を受けています。その名器が小型化されて「JU-06」として生まれ変わりました。
JUNO-106と同じ23個のスライダー/ボタンを持ち、暖かみのあるサウンドや、個性的だったコーラスの質感など、オリジナルの音色を忠実に再現しながらも、LFOレイトの可変範囲を広げたり、ハイパスフィルターを連続可変できるようにするなど機能面を拡張したうえで、16ステップのシーケンサーや2系統のリボンコントローラーを搭載するなど、新機能もプラスされているのが魅力です。
また、24ビット/44.1kHzでDAWソフトにステレオ録音できるUSBオーディオインターフェイス機能に加え、本体にミニスピーカーを内蔵するなど、本機単体とパソコンを組み合わせた両方のスタイルで制作が行なえる設計となっているのも特徴です。電池駆動にも対応し、本体を別売の小型キーボード「K-25m」にマウントすれば、ライブでも使えます。
JU-06はサウンドと実用性の両面において現代のEDMのトラックメイクをはじめ、幅広い制作環境にマッチする現代的なレトロシンセです。
1984年に発表されたJUNO-106は、パネル上に23個のノブやスライダーを装備しているのが特徴で、そのレイアウトと操作性のわかりやすさにより、シンセサイザーの音作りを学べるという点でも好評だった。また、ヌケのいいストリングスやパッド、太いシンセベースなど、プリセット音色の質の高さも人気の秘密だった
リアにはステレオミニのインプット、アウトプット、ヘッドホン端子の他に、USB端子やMIDIイン/アウト端子も用意されている
オリジナル機と同様にコーラスの2個押しもでき、スイッチをオンにした際に出るノイズまで再現している(ノイズはオフにすることもできる)
オリジナルのハイパスフィルターは4段階の調整だったのに対し、JU-06では連続可変できるようになっている
宇多田ヒカル、EXILE ATSUSHIなどのプログラマー
オリジナル機を熟知した常見和秀氏がJU-06のサウンドをチェック!
シンセサイザープログラマー/マニピュレーターとして、数多くの有名アーティストの楽曲を手掛けているサウンドクリエイター。宇多田ヒカル、GLAY、EXILEなどのレコーディングやライブなどを担当し、その手腕が多方面から高く評価されている。
──オリジナルのJUNO-106を熟知している常見さんが見て、JU-06の第一印象はいかがでしたか?
常見:ここまで忠実に作り込んでいることに、とても魅かれました。やっぱりオリジナル機を知っている者からすると、スライダーやパネルのレイアウト、カラーといったデザインを徹底的に再現しているこだわりはうれしいです。そのこだわりにプラスして、本体のモジュールと別売の鍵盤(K-25m)を付けたり外したりできたり、ノートパソコンと組み合わせても場所を取らないサイズを採用するといったアイディアも気に入りました。
──実際に試していただいて、サウンド面はいかがでしたか?
常見:僕は高校時代からJUNOシリーズを使い続けてきたんですけど、独特の音のクセやコーラスをオンにした時のノイズ成分まで細かく再現されていて、まったく違和感がなかったですし、やっぱりスライダーを動かして音作りをするのは楽しいなと改めて感じました。コーラスも特徴的ですね。ボスCE-1の質感に近くて、当時からとても好きでしたけど、その印象も変わりません。
──常見さんなら本機のサウンドをどう使いますか?
常見:JUNO-106同様にオシレーターはシンプルですけど、サブオシレーターでアナログ的な厚みや倍音感を加えられるので、EDMのシンセベースにピッタリですね。実はこれくらい倍音がシンプルな方が、低音域で鳴らした時に音像感や音程感がしっかり出せて、しかもキックとの混ざりがいいんです。R&Bのバックトラックで鳴っているような柔らかいリードや、コーラスをかけたパッドにもオススメです。あと、ハイパスフィルターの効き具合が独特で、キャラはそのままに、連続可変ができる点はオリジナルよりも使いやすくなっていて、こだわってJUNO-106を再現した部分と進化した部分のバランスがとてもいいですね。
──新機能の16ステップシーケンサーはいかがでしたか?
常見:ローランドのシンセと言えばステップシーケンサーですよね。これを使うことで偶然に面白いフレーズが生まれたり、思ってもいなかったグルーヴが作れるんですよ。そうやって生み出したフレーズをDAWソフトに録って、また別のフレーズを重ねて、さらに両方をL/Rに振った後に左右で音を飛ばしたりとか、頭で考えても作れないパターンが生み出せるので、EDMの素材作りにもピッタリでしょうね。とにかく、「音を手で直接コントロールしている」というのが強く感じられるのがいいです。この感覚は、画面を見て数値を確認しながら音を作るソフトシンセでは味わえない、ハードならではの楽しさだと思います。
アンダーワールドの代表曲
「Born Slippy」のサウンドをJU-06で再現!
分析・文:平沢栄司
アンダーワールドの「Born Slippy」風サウンドの作り方ですが、まずLFOで軽く揺らしたPMW波を選び、フィルター(VCF)のFREQを下げて柔らかい音にするのがポイントです。そして、ENVを減衰音に設定した後に、VCFのENVのスライダーを上げていくと「ベンッ」と歯切れ良く減衰する琴のような音色が出来上がります。あとは、コーラス(CHORUS1)をオンにして、さらに外部エフェクターを使って2拍3連のディレイを加えてあげれば完璧です。
各スライダーとスイッチ類をこの写真の通りにセットするだけで「Born Slippy」の印象的なバッキングの音色を鳴らすことができます。詳しくは動画をチェック!
「Born Slippy」
収録アルバム
『弐番目のタフガキ』
ユニバーサルミュージック
UICY-15440 1996年発表
関連する記事
2022/08/25
2019/08/27
2019/04/26
ニュース
2023/12/25
2023/12/20
2023/12/18
インタビュー
2023/03/23
2022/09/15
2022/05/26
2022/01/26
特集/レビュー
2023/04/03
レクチャー
2022/11/15
2022/11/01