「オーディオの達人」と「音楽制作のプロ」が試す
【スグレモノ発見!】
超小型コンポ JVC「EX-NW1」徹底レビュー
【スグレモノ発見!】超小型コンポ JVC「EX-NW1」徹底レビュー
2017/03/03
──「EX-NW1」のような小型のスピーカーといわゆる普通の大きさのスピーカーで聴く時を比べると、どのような違いがあるのでしょうか?
遠藤:僕の個人的な仕事の話で挙げると、小さい口径のフルレンジスピーカーで小さい音を聴くのは、全体のバランスを見る時なんです。2ウェイや3ウェイになってくると、結構クロス・オーバー・ポイントでスピーカーの癖が出てくるんです。スピーカーが別れて再生すればするほど、個性が出ちゃんうんですよね。
その中で「EX-NW1」のように、フルレンジ一発で上から下まで再生してくれるとバランス感が変わりづらいんですよ。我々エンジニアが、スタジオで小さいラジカセを使ってモニターする時はそういったバランスの分かりやすさを当てにすることが多いと思います。そういう面でもスゴく良いんじゃないかと。
──小型のスピーカーとは言え、音楽を制作する人にも相当使い勝手が良いと?
遠藤:そうですね。最初に「EX-NW1」の使用方法でパッと浮かんだのが “レコード会社のディレクターさんのデスクの上” です。制作ディレクターさんが所属アーティストの音源をチェックする際、ノートPCの脇に「EX-NW1」が置いてあるイメージですね。
僕はたまに打ち合わせでレコード会社へ行くんですが、その時に「知り合いのディレクターいるかな」って制作部を覗いてみるんです。昔は自分のデスクに小さなスピーカーを置いている人もいましたが、最近は減っているように見えますね。この「EX-NW1」だったら少ないスペースで済みますし、豊富な入力を活かして普段はPC INからPCにストックしている音源を、スタジオ帰りにはレコーディングでの作業終わりにスタジオで作られた作業中のラフミックスをUSB IN経由で、打ち合わせではスマホからBluetoothで、というように使い勝手も良い上に、とにかく小音量で細かいディティールが良くわかるというのが楽曲の善し悪しを判断するのに向いてるんじゃないかなと思います。
──なるほど。では、楽器を演奏する人にはどうですかね?
遠藤:例えば、耳コピをする時に「このコードはどうなっているんだ?」と分析するのにはスゴく適していると思います。アコースティックギターにしても、同じ音程でも巻き弦の上の方で弾くのと細い方とではポジションが2つぐらいあるじゃないですか。「EX-NW1」で楽曲を聴けばポジションが見えやすいでしょうし、小さい音量で曲の構造がどのようになっているかをちゃんと見極めたりするのには良いと思います。
「EX-NW1」は、個人的には特に生楽器が好きな人にオススメしたいです。実は、最初にウッドコーン・シリーズを聴いた時「良いな。これでノラ・ジョーンズを聴きたい」と思ったくらい、ジャズやルーツミュージックをベースに持つ音楽に向いているんじゃないかと感じました。「EX-NW1」もその良さを引き継いでいるんじゃないかと。そもそも、スピーカーのコーンを木で作るなんて、いかにも生楽器好きの人が作っていそうじゃないですか。だから “古くなったら交換する” というよりも、使い込んで自分の好きな音楽の振動でエイジングさせていくイメージかな。ジーンズを育てる人とかいるじゃないですか。自分の “あたり” を付けていくというか。木で作られた楽器も割とそういうところがあって、ビンテージ特有のボロさが出た方が好きとか。僕もそういう使い込まれたギターなどが好きなんです。このスピーカーも使う人によってその人の鳴り方になっていく、みたいなロマンも素敵なんじゃないでしょうか。
スピーカーの背面にパッシブラジエーターが装備されているので、壁との距離によって低音の聴こえ方に工夫ができる
──この製品はCDドライブを積んでいませんが、この点についてはいかがでしたか?
遠藤:個人的にはドライブレスには特に抵抗が無かったです。ハイレゾオーディオなどを好むPCオーディオ・ユーザーの方の中にはドライブレスの優位性を上げられる方がいますよね。確かに駆動系の振動やノイズからの影響は無いですから。僕もそこがPCオーディオの良いところだと思います。
──さて、「EX-NW1」を設置する上で気をつけたいポイントなどありますか?
遠藤:「EX-NW1」は置く場所によって音が変わるので、ある程度ガッチリした台や机の上などに置いて使った方が良いと思います。実際にスタジオやロビーなど置くところを変えて聴いてみたり色々と試してみたんですけど、やはり置くところの硬さは影響してきますね。あと、スピーカー裏と壁との距離で割と音色が変わるようです。壁際から離して設置すると音の輪郭中心に見えてきますし、壁が近いと音の肉付きが良い、豊かな音像に変化しますので、その辺は使われる方の好みで色々試してもらいたいですね。
実は背面に手を置くだけでも音が変わってくるんですよ。 “書斎でパソコンを真ん中に置いて聴く” というのがイメージで作られていると思うので、背面の壁との距離でふくよかさや音楽的な “味” みたいなのが出てくるというか、肉付きが輪郭に対して出てくるのでそこは好みで調節してみると良いと思います。「スッキリ輪郭だけで見えたい」という人はなるべく離して、「もうちょっと輪郭と厚みを混ぜて自然に聴きたい」という人は後ろから出ている間接音を使う、といった感じですね。まぁこのサイズでアンプを鳴らすと音量は出ないので、そこは間接音を使って少しふくよかに鳴らすのがオススメです。
遠藤淳也=プロフィール
1970年生まれ。東京在住。
1996年からレコーディングエンジニアのキャリアをスタート。安室奈美恵やCrystal Kay、Def TechなどR&B、ヒップホップを中心に数多くの作品を世に送り出す。2006年に(株)Plick Pluckを設立。'10年にはホームスタジオとなる「STUDIO QUEST」を設立し、さらに活躍の場を広げ、後進の育成にも力を注いでいる。最近では、Brian The Sun、サイコ・ル・シェイム、MAO from SID、96猫、LGYankees、グリーンボーイズなどの作品を手掛ける。
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