驚異的テクニックと類稀なる音楽的感性を兼ね備えた “真のギター狂”

金 庸太(キム・ヨンテ)『ギタロマニーの凱旋』インタビュー

金 庸太(キム・ヨンテ)『ギタロマニーの凱旋』インタビュー

金 庸太(キム・ヨンテ)『ギタロマニーの凱旋』インタビュー

2017/06/13


TuneGateでは初となるクラシック・ギタリストのインタビューをお届けする。『ギタロマニーの凱旋(RETURN TO GUITAROMANIE)』は、金庸太氏にとってメジャー初となるアルバムだ。聴き始めは、普通のソロ・クラシック・ギターの様相と呈するが、曲が進むに連れ、速弾きとどうやって弾いているのか想像すらできない奏法の驚異的なテクニックに圧倒される。インタビューでは、アルバム内で披露されている各種奏法を実際に再現してもらった動画も収録。普段クラシック・ギターを弾かないギタリストにも非常に参考となる貴重なインタビューだ。

取材:斎藤一幸(編集部)

 

──まず、本作はキングレコードからは初のリリースになるわけですがこれまでも何枚か出されてますよね。

:11年前にソロで1枚出していて、それ以外だとバンドネオンとフルートとのユニットで1枚出しています。あとはマンドリン奏者の青山忠さんによる「青山忠マンドリンアンサンブル」で邦楽や洋楽のポップスを中心にカバーしているんですが、それは年に1度参加しています。

──今回、11年ぶりに、しかもメジャーからリリースすることになった経緯は?

僕の弟子だった垂石雅俊君というギタリストが、自身が演奏もアレンジも手がけるプロジェクト「カフェ・ギター・シリーズ」をキングレコードさんからリリースしているんです。何作目か前からギター・デュオのパートナーとして僕を指名してくれたんですよ。それでレコーディングに参加するようになってプロデューサーである夏目さんやエンジニアさんの滝川さんと仲良くなって飲みにも行ったり、滝川さんにはビエント・デル・スールの録音もお願いしたり…。お二人ともスゴい熱い方なんでギターの話で盛り上がって、そんな中で今回の企画が生まれて、キングレコードさんからオファーをいただいたんだと思います。

──その時はクラシックではなく「ポップス」を弾かれてたんですよね。

「カフェ・ギター・シリーズ」のレコーディングで、たまたま指慣らしに“エチュード”とかを弾いていたんですけど、それを聴いた夏目さんが「そういう曲を中心にしたCDを作りたいな」って言ってくれたんです。まさかこうやって実現するとは夢にも思わなかったです。

──それはいつごろのお話ですか?

確か去年の10月ぐらいだったと記憶しています。

──では、レコーディングを開始したのは?

2月だったのであまり時間がなかったです。

──この曲数をですか?(全21曲)

そうなんです。ただ、コンセプトは夏目さんと事前にしっかり話し合っていたので。ジョン・ウィリアムズというギター界の巨匠がいるんですけど、彼の『Split Of The Guitar』という作品にスゴく衝撃を受けた世代で。それが僕と夏目さんの共通項としてあったんです。それで夏目さんが出してきたプログラムに対して、僕がアイディアを出して、「僕らが現代版『Split Of The Guitar』を作るとしたら、こんな感じにしたいな」ということがコンセプトにあったんですね。

──それでは収録曲についてもお聞きします。いくつか世界初録音の作品があるんですね。

実は世界初録音かは分からないんですよ(笑)。ただ、最後の方に収録されているセルジオ・アサドの「サンディの肖像」は、まだレコーディングされているのが見つからなくて。同じようにD.ボグダノヴィッチの「ブルースと7つの演奏」もそうかなと思ったら、この曲は録音は見つかったんです。なので「サンディの肖像」は割と新しめの曲なので今回が初録音かもしれません。ちなみにスコアも販売されているんですけど、CDはないんですよ。まぁどこかで誰かが弾いているかもしれないですけど。

──独自の解釈で演奏されているんですかね。

検定をされているデヴィッド・ラッセルという方が動画に演奏をアップしているんですが、それは3楽章のみなんですね。それ以外で1楽章と2楽章を弾いている動画を公開している人はいないです(笑)。

──何か理由があるのでしょうか?

先ほども言った通り、新しい作品だというのがあるんだと思います。

──なるほど。ではそれぞれ具体的にお聞きしていきます。まず7曲目の「グラン・ホタ」ですが、後半でタッピングのような音がしますが「どうやって弾いているんだ」という印象でした。

そうですね(笑)これはタンボーラ奏法と言われる奏法でブリッジ側を手首のスナップを効かせて叩いています。


──あと同じく「グラン・ホタ」ではシタールのような音が入ってますね。

これは、シタールの模倣ではなくて、ファゴット奏法と言われるものなんです。


──途中でハーモニクスも頻繁に出てきますが、低音部分でハーモニクスを弾いて高音部分でバッキングやメロディを弾く、という変わった奏法ですね。

この曲ではそうですね。もちろん他の曲では逆のパターンもありますよ。


──なるほど。さらにこの曲の後半で、小太鼓みたいなバネが張ってある太鼓を叩いてる音が入ってますね。

小太鼓のイミテーションです。これは弦を重ねてるんですね。よくあるのは低音弦をぐっと指で引っ張ってきて、隣の弦の上をまたがせて押さえるというやり方です。そうすると、交差した弦がお互いに当たってノイズが出て、それが小太鼓のバネと同じような音が出るんです。

──それでメロディも弾かれていましたよね。

最初は細かく弾いているんですけど、今度は小太鼓の部分を親指に任せて他の指でメロディを弾いています。

──トレモロもそこに絡んでくると?

これは僕がアドリブで入れているんです(笑)。

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『ギタロマニーの凱旋』(Return to Guitaromanie)

2017年6月7日発売
CD:KICC-1368
¥2.500(+税)
KING RECORDS

収録曲

01.カプリース第5番~「24のカプリース 作品1」より [N.パガニーニ/E.フィスク編]
24 Caprices,Op.1 No.5 in A Minor (Agitato) [Nicolo Paganini / arr.Eliot Fisk]

02.ワルツ第4番 [A.バリオス] Vals Op.8 No.4 [Agustin Barrios Mangore]

03.ワルツ第3番 [A.バリオス] Vals Op.8 No.3 [Agustin Barrios Mangore]

04.熊蜂 .プジョール] El Abejorro milio Pujol]

05.蜂雀 [J.サグレラス] El Colibri [Julio Salvador Sagreras]

06.蜜蜂 [A.バリオス] Las Abejas [Agustin Barrios Mangore]

07.グラン・ホタ [F.タレガ]Gran Jota [Francisco Tarrega]

08.カプリース第17番~「24のカプリース 作品1」より [N.パガニーニ/E.フィスク編]
24 Caprices,Op.1 No.17 in E-flat Major (Sostenuto -Andante)
[Nicolo Paganini / arr.Eliot Fisk]
4つのフレンチ・シャンソン [R.ディアンス編]
Four French Chansons [arr.Roland Dyens]

09.パリとゲッティンゲン [バルバラ] Gottingen [Barbara]

10.愛の讃歌 [M.モノー] L'Hymne A L'amour [Marguerite Monnot]

11.僕の部屋に雨が降る [C.トレネ] Il Pleut Dans Ma Chambre [Charles Trenet]

12.群衆 [A.カブラル] La Foule [Angel Cabral]

13.ブルースと7つの変奏 [D.ボグダノヴィッチ]
Blues and Seven Variations [Dusan Bogdanovic]

14.天使の死 [A.ピアソラ/L.ブローウェル編]
La Muerte del Angel [Astor Piazzolla / arr.Leo Brouwer]

15.エチュード第7番~「12のエチュード」より [H.ヴィラ=ロボス]
Etude No.7 in E Major~Douze Etudes [Heitor Villa Lobos]

16.エチュード第1番~「12のエチュード」より [H.ヴィラ=ロボス]
Etude No.1 in E Minor~Douze Etudes [Heitor Villa Lobos]

17.エチュード第2番~「12のエチュード」より [H.ヴィラ=ロボス]
Etude No.2 in A Major~Douze Etudes [Heitor Villa Lobos]
サンディの肖像 .アサド] Sandy's Portrait ergio Assad]

18.Ⅰ.プレルディオ Preludio

19.Ⅱ.パッサカリア Passacaglia

20.Ⅲ.トッカータ Toccata

21.最後のトレモロ [A.バリオス] El Ultimo Tremolo [Agustin Barrios Mangore]

All Tracks Performed by Yong-Tae Kim

Guitars:Daisuke Kuriyama Torres model 2015 *M1~4,6~12,15~19
Masaji Nobe Stauffer model 2001 *M5
Masaki Sakurai Maestro R.F model 2006 *M13,14

Recorded on 15~17 February,2017 at KING SEKIGUCHIDAI STUDIO

金 庸太(キム・ヨンテ)

1967年東京生まれ。

13歳よりギターを始め、大谷環、尾尻雅弘、福田進一に師事。1993年名古屋ギターコンクール、1994年スペインギターコンクールにおいて第1位受賞。1994年及び1998年東京国際ギターコンクール第2位受賞。

1995年に渡仏、パリ・エコールノルマル音楽院にてアルベルト・ポンセに師事。1997年、同音楽院ギター科を審査員全員一致の第1位で修了。翌1998年、同音楽院の演奏家ディプロマを審査員全員一致の首席で取得。同年、ベルギーに移り、王立アントワープ音楽院スペシャライズコースに在籍、ローランド・ブロックスの下で研鑽を積む。その間、ギターをアルバロ・ピエッリ、ジェラール・ヴェルバに、アナリーゼをナルシス・ボネに師事、ヨーロッパ各地で演奏活動を行なう。

2000年に帰国後は、ソロ、室内楽、オーケストラとの共演など幅広く活動中。2006年5月、アルポリール・ギタートリオのメンバーとしてアルバム『アルポリズム』を発表。同年10月に発表したソロ・アルバム『ヴァリエ2 内なる想い』は『レコード芸術』誌にて特選盤に選ばれる。2007年にマンドリン奏者・桝川千明とのデュオ・アルバム『Vivo!』、2015年にはビエント・デル・スールのメンバーとして『南の風』を発表。

また、教育活動にも熱心に取り組み、聖徳大学、洗足学園音楽大学、現代ギター社GG学院、村治昇ギター早期才能教育教室などで講師を務める。

 

ライブ情報

6月10日 (土)
時の記念日コンサート〜南からの風〜ビエント・デル・スール
時間 開場18:00 開演18:30
会場 日髙本店プロショップ2階 サロン

外山友紀子(フルート)
啼鵬(バンドネオン)
キム・ヨンテ(ギター)

6月24日(土) 
第3回 Il Mandolino Giapponese
もう一つのイタリア文化
(*青山忠マンドリンアンサンブルのメンバーとして出演)
会場:イタリア文化会館アニェッリホール
開場:14時00分 開演:14時30分
《チケット》
前売り 4,000円 
当日 4,500円
学生  3,000円 
当日 3,500円
《お問合せ》
株式会社 イケガク 
Tel.03-5952-1391
有限会社 絃楽器のイグチ
Tel.03-3378-5357

6月30日
「ギタロマニーの凱旋」CD発売記念インストアライブ
日時:2017年6月30日(金)
開場18:30 開演:19:00

場所:現代ギター社 GGサロン

料金:無料 ※先着80名様限定(事前予約制)

メール(
shop@gendaiguitar.com
または電話(03-3530-5342 12:00~19:00・火・水定休)にて事前予約を受け付けます。

7月18日~23日
韓国ヤンピョン国際ギターフェスティバル
詳細未定

7月30日(日)
青山忠マンドリンアンサンブル 灼熱浪漫 
会場:近江楽堂 (東京オペラシティ3F)
開場:13時40分 開演:14時00分
《チケット》
当日 4,000円 
前売り 3,500円
学生割引 前売りのみ 2,000円
(数に限りあり。ご入場の際に学生証を提示願います)
《チケット取り扱い》
株式会社イケガク
03-5952-1391
E-mail:info@ikegaku.co.jp

8月4日(金)
青山忠マンドリンアンサンブル コンサート
かぼちゃとやぎ(埼玉県上里)

8月5日(土)
青山忠マンドリンアンサンブル 前橋公演
前橋文学館ホール

8月6日(日)
青山忠マンドリンアンサンブル 流星浪漫 vol.6
会場:熊谷文化創造館 さくらめいと 月のホール
開場:13時30分 開演:14時00分
《チケット》
当日 3,500円
前売り 3,000円
学生割引 2,000円 (ご入場の際に学生証を提示願います)
《チケット取り扱い》
株式会社イケガク
03-5952-1391
E-mail:info@ikegaku.co.jp
後援:さくらんぼマンドリンアンサンブ

8月12日(土)
第2回 アポヤン道ギターフェスティバル
会場:蕨市文化ホールくるる
出演(予定):大坪純平、EXTRAÑO GUITAR FANCTION 、新野英之&峰島佑輔 、Led groooover(旧 IGOSSO)、菅沼“Masa”聖隆、セニョール吉住、エチュード戦士ペロワちゃんZ  スペシャルゲスト:“Ukulele DA1” 渡辺海智(ワタナベダイチ)

8月18日(金)~20日(日)
第1回 じじいサマースクール
会場:鹿教湯温泉 鹿乃屋旅館
講師
マルコ・メローニ
樋浦靖晃
金庸太 

8月26日(土)
青山忠マンドリンアンサンブル 北海道公演
札幌 ザ・ルーテルホール

8月27日(日) 青山忠マンドリンアンサンブル 北海道公演
奈井江 文化ホール「コンチェルトホール」

9月17日(日)
CD「ギタロマニーの凱旋」発売記念コンサート
会場:ティアラ江東 小ホール
開場 18:30 開演 19:00
チケット
前売り2500円
当日3000円  
(学生 各1000円割り引き)

主催 日本アポヤンド研究開発機構 
後援 KING RECORDS (株)現代ギター社   
問い合わせ
オフィス・ウマジン 
Tel&Fax 0484326852
Eメール guitarkimz@gmail.com    
公式ウェブサイト
「ギタロマニーの黄昏」
https://guitarkim.jimdo.com/
当日、CD「ギタロマニーの凱旋」をご購入、またはご持参いただいた皆様には終演後のサイン会にて特製オリジナルクリアファイルをプレゼント!

12月16日(土)
Trianglo コンサート

那須野が原ハーモニーホール 
開演19:00

詳細は未定

12月23日(土・祝)
青山忠マンドリンアンサンブル 白色浪漫
東京オペラシティ内 近江楽堂

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