ファン投票により選ばれた楽曲を再レコーディングした20周年記念ベストアルバム
千聖『Can you Rock?!』インタビュー
千聖『Can you Rock?!』インタビュー
2017/06/20
──次に曲作りについてもお聞きします。やはり20年前とは異なるのでしょうか?
千聖:ど頭は一緒ですけど、落しどころが全然違います。共通しているのは、アコギやエレキギターでコードとメロディを作るところです。基本的に歌モノなので、味付けで「コードはこんな感じかな」って当ててみて作ります。なので、メロディとハーモニーの選択をまず最初にします。まぁ同時にリズムが頭の中で鳴っていることが多いので、そこからの表現ですね。ドラムとリズム、他のトラックを作る時、今だと僕はCubaseですが、昔だったらカセットMTRを使ったり。あと当時、コルグのDDDというリズマシンを使っていたんですが、ソングを作るのが超面倒臭くて(笑)。でも、O-JIROくんはそういった作業が大好きで。
──O-JIROさんはDTMを早くから始められていたそうですね。
千聖:あの人は、もうセミエンジニアぐらいのレベルにまで到達しているので。なので当時、僕の苦労している姿が滑稽だったみたいで、よく笑っていました(笑)。ただ、「確かに作るの大変だね」とは言ってましたけど。パソコンで作れるようになってからはスゴく助かっていますね。2ndアルバムの後半になると、HDレコーダーが出てきて。仮想のバーチャルレコーディングで、裏とか表とか言われても「何それ?」って。15トラックのものを買ったんですけど、カセットMTRから急にそこに移行したので。
──全然分からないですよね。
千聖:でも当時アンプシュミレーターも入っていましたから「珍しいな」とは思っていたんですけど。ちょうど変遷期に色々やっていました。最初はカセットだったり、キーボードのMIDIで作った打ち込みを入れたり。初期はカセットにギターで弾いたコードだけだったり。まだ「デジロック」って言葉がなかったデビュー当時、制作に携わっていたT2ya君は、CubaseやVisionといった今でいうDTMを駆使していて。僕はその頃からMSTR(ミスター)って呼ばれているんですが「ミスター、こうやってやるんだよ」とか「このコードはそれ、メロディはこういう感じ?」って打ち込んで、僕は「じゃあギター弾くわ」って言って。今ではそんなことないですけど、当時は “パソコンに曲を入れる” ということ自体が珍しかったですから。
──1990年代後半当時だとそういった曲作りをされていたのですね。
千聖:そうなんです。T2ya君は当時から色々と知っていて、ギターをスライスしてループを作ったりして。だから当時の作品には変の音がいっぱい入っているんですよ。だからトラック数がえらいことになっていて(笑)。
──どれくらいだったのですか?
千聖:多分、「KICK!」とか48トラックをダブルで鳴らしたので、96トラックとか。それをまとめるっていうんだから(笑)。その苦労の結晶が20周年ベストアルバムに収録されるなんて感慨深いです。逆に、今回収録されている「LOVE」はアコギとピアノだけなので際立ちましたね。だからド派手なデジタルロック、ギターとボーカルは有機体な感じで、あとは全部無機質で。そういった戦い方が面白かったです。
──なるほど。では、歌詞は後から?
千聖:はい、基本的には。ただ、「WAKE UP!」という曲は “止まらない 止まらない 愛を交そう 抱きしめて 抱きしめて 感じるままに” というフレーズがあるんですけど、ここだけは偶然家で作っている時に頭に浮かんできました。あとは「Kissin’ the moonlight」もそうですね。なので同時に生まれてくることもありました。最終的な細かいフレーズに関しては後ですね。
──制作環境についてもお聞きしたいのですが、DAWソフトは現在Cubaseを使われているんですよね?
千聖:はい。ただ、O-JIRO君と重盛さんと一緒に作業する時はProToolsですね。
──次にギターは?
千聖:自宅では今はFenderのストラトキャスター、あとはGibsonのES-335かな。
──やはりビンテージ系のサウンドがお好きなのですか?
千聖:もともとは大好きです。フロイドローズは弦が切れると、チューニングとか色々面倒臭いんです。なので家にあるのはフローティングされたものではなく、どちらかと言うとスタンダードなギターが多いです。
──他にアコギなどは?
千聖:今回はアコギも何本か使っていて、Ovation、Martin、Takamineとかですね。その中で今回メインで起用したのはMartinかな。これは20年ぐらい前にアメリカに行った時購入したものなんです。
──ビンテージモデルなのですか?
千聖:そんなに古くはないです。ただ、湿度の高い日本で状態を保持をするのが大変で。アコギだから調節がなかなか効かないし。
今回のレコーディングで初めて使用したというMesa/BoogieのCAB CLONE。その下にはライブなどでも愛用しているEVHのアンプが見える
──今回の制作で新たに導入した機材はありましたか?
千聖:今回使って面白かったのが、Mesa/BoogieのCAB CLONEですね。スピーカーの代わりに音を出せるCabなんです。これはLa'cryma ChristiのKOJI君が、自分のレコーディングを使っていたのを重盛さんから教えてもらって。「じゃあ買いに行くわ」って楽器屋に行って手に入れたんです。それで使ってみたんですけど、音の厚みが違うし、シュミレーターより音が全然良くて。本物のキャビネットの音がするんですよ。ピッキングした時「ドンッ!」アタックのリアルさがスゴいんです。今は色々デジタルが精巧になってきていますけど、今のところこれには勝てないでしょうね。ちなみに、今回のギターレコーディングではほとんどCAB CLONEを使いました。
──エフェクターで新たに使ったものは?
千聖:「666」のソロでトーキングモジュレーターを使いました。オリジナルでも使っているのですが、あのころはトーキングボックスがまだ本当にアンプを使って出していたので。今は進化して飛ばない真空管が出来ましたけど、当時トーキングボックスを2回ほど壊してしまったことを覚えています。
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