5つをピックアップ!
真空管アウトボード/ギターアンプの名機を忠実に再現したUADプラグインの実力
真空管アウトボード/ギターアンプの名機を忠実に再現したUADプラグインの実力
2017/07/04
ユニバーサル・オーディオのDSPプラグイン「UAD-2」には、真空管内蔵のアウトボードやギターアンプを再現したプラグインが20種類以上ラインナップしています。その中から5つを取り上げ、エンジニアの青野光政氏に使い方のポイントを聞きました。
取材:井桁 学
よく「真空管は暖かい音がする」と言われますが、実はきちんと整備されている真空管機材はハイファイなサウンドで、上(ハイ)から下(ロー)までバランス良く出るんですよ。その点、今回僕が選んだ5つのUADプラグインはいずれも高品質で、非常にコンディションのいい真空管機材を再現していると思います。
真空管機材の魅力は、レコーディングやミックスに使うと、少しセピア色のような音色になるところでしょうか。「音が太くなる」というよりも、「腰が下がる」という感じです。つまり音の重心が下がることによって、ちょっと太く感じるのではないかと思います。今回取り上げる5つのプラグイン以外には、例えばUAD-2のPultec Passive EQも、インサートするだけでサウンドの重心が下がりますね。
Fairchild Tube Limiter $299.00
- ▶希少で高価な真空管をいくつも搭載したコンプ
「6386」という今は手に入りづらい真 空管 8 本を含む、20 本もの真空管が使 われているビンテージコンプ/リミッタ ーを再現したプラグインです。タイプが 2 種類あり、「660」はレコーディング用 に作られたモノラル仕様、「670」はレコ ードのカッティング用に作られたステレオ仕様です。670 は 2 ミックスを一発で まとめてくれるので、実機はマスタート ラックに、プラグインはスネアやピアノ、ギターにかけることが僕は多いですね。
このプラグインは真空管特有のセピアな質感は少なめで、ハイファイですが、コンプ感は実機によく似ています。ピアノやドラムのオーバーヘッドに使う時は、M/Sモードで少しワイドに広げますね。ギターにかける時は、インプットを上げてアタック感が出るようにリリースを短め(1か2)にして、ドラムならリリースを長め(3か4)にします。マスターにかければ、全体をバランス良くまとめることができる便利なコンプです。
※LegacyバージョンがUAD-2 及び、Apolloラックモデルに無償で提供されます。
実機
Manley Variable Mu Limiter Compressor $299.00
- ▶マスタリングの定番となった伝説的なチューブリミッター
このプラグインは、6BA6 真空管によるT-BAR MODオプションを搭載し、さらにM/Sモードやハイパス・サイドチェイン(100Hz以下に反応しないサイドチェイン)などのオプション機能をすべて搭載した、「マンレイVariable Mu Limiter Compressor」を再現したものです。
これをマスターに挿すと、サウンド全体が一発でまとまってくれます。グチャグチャしてまとまっていなかった音源の楽器全体のグルーヴ感が整い、一体感が生まれてきます。Fairchildと聴き比べてみて、どちらかを選ぶ感じですね。
マスターに使うことが多いですけど、Fairchild 670と同じようにピアノやギターに挿したり、ドラムのオーバーヘッドやルームマイクに使うこともあります。軽くコンプレッションするくらいの使い方が多いですね。メーターを「1」上げるだけで深くコンプレッションがかかるので、設定はすごく気を遣います。
実機
UA 610 Tube Preamp & EQ Collection $299.00
※610-BはUAD-2及び、Apolloシリーズに無償で付属します。- ▶真空管ならではのセピア色の歪み感を加えられるマイクプリ
これはユニバーサル・オーディオの610コンソールに内蔵されている、チューブマイクプリを再現したプラグインです。610-Aと610-Bの2 種類があって、前者はオリジナルのWally Heider"Green Board"コンソールに入っていたビンテージの610モジュールを、後者は同社が現在販売しているアウトボード「2-610」や「6176」に採用されている610マイクプリを再現しているようです。
610-Aの方が音が少し太いので、ドラムをアグレッシブにしたい時や、歌を軽く歪ませたい時は、610-Aで枯れた感じのセピアっぽい歪み感を加えるのが効果的ですね。キックでもスネアでもオーバーヘッドでも、ドラムのどのパーツにも使えます。ベースの場合は、MIC/LINEスイッチをMIC側にして、アグレッシブな歪みを加えることもあります。
610-Bは、EQポイントの設定がより細かくできるようになっています。こちらもMIC/LINEスイッチをMIC側にして、ちょっとオーバーロードさせるとセピアな質感が少し出せますね。
実機
Teletronix LA-2A Classic Leveler Collection $299.00
- ▶キレイな歪み感を加味できるボーカルに最適なコンプレッサー
LA-2Aは、強くコンプレッションした時に、音楽的かつキレイな歪み感を加えてくれるコンプレッサーです。本機を再現しているUAD-2の「Teletronix LA-2A Classic Leveler」には、LA-2 とLA-2A(シルバー)、LA-2A(グレー)という3つのリビジョンが含まれます。
僕はLA-2Aの実機とプラグインをボーカルによく使っていて、LA- 2とLA- 2A(シルバー)を曲に応じて選んでいます。コンプレッションしているように聴こえないというか、自然な感じでかかるところが特徴ですね。
例えば、ベースをアグレシッブな音色にするなら、ピークリダクションを上げてゲインも上げます。アコギの場合はピークリダクションを、VUメーターで見て-3dBほどに抑えるとキレイなかかりになりますね。アメリカのエンジニアはLA-2Aを-3dB以上かけないっていう話もあるくらいですから(笑)。LA-2Aの実機は非常に高価ですけど、このプラグインは実機にかなり近い使い方ができますね。
実機
Teletronix LA-2A Classic Leveler Collection $299.00
- ▶2本の6 V6パワー管を持つフェンダー製ギターアンプ
1955年製のフェンダーのギターアンプ「Tweed Del uxe」を再現したプラグインで、これは本当によく出来ています。まさにフェンダーの音がして、ローが先に出てくる感じが特にリアルです。クリーンでカッティングした時の低域の感じとかが、まさにそんな雰囲気で、クリーンの太さもすごくいいんですよ。フェンダー独特の「キャ」っていうエアー感もありますね。歪ませた時、高域をしっかり出しながら、重心を下に抑えてくれるんです。モニタースピーカーで言うならば、「ツイーターとウーファーが、どちらもしっかりと鳴っている」ようなイメージでしょうか。
ツマミはそんなに多くないですけど、プリセットが豊富で、マイクのチョイスによって音色を選べるので、オケに負けない音になるんです。クランチでもクリーンでもドライブでも使えます。下手に安価な本物の真空管ギターアンプを買ってくるより、こちらを使う方が断然いいんじゃないでしょうか。
実機
問:(株)フックアップ
TEL:03-6240-1213
http://www.hookup.co.jp
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