エレアコにアコギならではの胴鳴りを加えるプリアンプが登場!

「ズームAC-3」をアコギを知り尽くした高田漣が徹底チェック

「ズームAC-3」をアコギを知り尽くした高田漣が徹底チェック

2017/09/05


アコギ弾きは「AC-3」を1台持っておけば、あとは何もいらないです!


 
エレアコをラインで鳴らすと、ボディ鳴りや空気感に欠ける「ペチペチ」した質感になりがちです。そんなエレアコの欠点を一気に解決する新製品「ズームAC-3」が発売されました。本機をアコギのスペシャリストである高田 漣さんにチェックしてもらいました。

取材:平沢栄司 写真:小貝和夫

※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2017年9月号)より抜粋したものです。
詳しくは、http://www.sounddesigner.jp/をご覧ください。


 

ズーム AC-3  ¥30,000


 

 

AC-3はピックアップの音を耳で聴いている音に近づけてくれる

──今回、AC-3を試してみての第一印象からお聞かせください。

高田:まず、アコギのボディをモチーフにしたデザインがいいですね。アコギ用の機材って、いかにも機械的で遊び心がないものが多いんですよ。でも、僕はそういう視覚的要素も重要だと思うんです。

──AC-3を使うことで、エレアコのピックアップの音がどう変わるのですか?

高田:ピエゾタイプであれ、マグネティックタイプであれ、エレアコのピックアップの音はアコギの一番おいしい帯域が削られてしまって、自分が耳で聴いている音とは明らかに違うんです。なので、アコギをマイクで収録した方が圧倒的に音はいいんですけど、ライブでは編成上、どうしてもマイクが使えないこともあるんですね。その点、AC-3はボディの鳴りを再現して、自分のギターに近いモデルを「ソースギター」と「ターゲットギター」で選ぶだけで、ピックアップの音を耳で聴いている音に近づけてくれるんです。

──実際に試奏してみて、サウンドの印象はいかがでしたか?

高田:クリアでハイファイですね。音が自然というか、中低域も膨らみ過ぎないですし。ピエゾだとハイが強いので、普通はEQとかで削らないといけないんですけど、AC-3はトーンツマミが12時の状態でもバランスの取れた音が出ます。パラメーター自体は少ないですけど、内部では色々な処理がされているんでしょうね。それと、AC-3はゼロから音作りをしていく必要がなくて、状況に応じてツマミで微調整するだけで十分いい音になる点が気に入りました。

──では、操作性はいかがでしたか?

高田:僕は前身モデルの「A3」を使っているんですけど、階層を開いたりボタン同時押しみたいな操作があるんです。でも、AC-3はそういう操作が一切なくて、すべての操作がパネル上のツマミでできますし、本体を見ただけで誰でも使い方がわかるくらい、格段に扱いやすくなっています。機械に弱い人でもデジタルの恩恵が受けられる、素晴らしいユーザーインターフェイスだと思いました。

──ターゲットギターのバリエーションはいかがですか?

高田:マーティン、ギブソン、ギルドの色々なモデルが揃っていて、ズームさんの意気込みを感じました(笑)。「シブいところ突いてくるな」っていうモデルがいくつもありますから。あと、マーティンD-45で試した時、推奨通りに「D-Forty Five」を選ばずに、「D-Twenty Eight」を選ぶと張り切った音になるし、「D-Eighteen」にすると、ちょっといなたい感じの音になったりするんですよ。これは本来の使い方ではないかもしれないですけど、アコギを1本しか持っていない人がサウンドのキャラクターを変えたい時に使えますね。

ブースト機能を使えばソロの時だけ音量を大きくすることができる

──内蔵されているエフェクターの印象はいかがでしたか?
高田:どれも品があるというか、いい意味でかかり過ぎないので、アコギ本来の良さが活かせますね。中でも 「TAPE ECHO」は気に入りました。ハデな使い方ではなくて、音に厚みを出す時に使いたいです。それと、「CHORUS 2」は12弦っぽい効果が欲しい時に良さそうですね。あとは「TREMOLO」が優秀でした。しっかりトレモロ感を残したまま、しかも軽くかけられるので、リズミカルな曲で使いやすいと思います。

──その他に気になった機能は?

高田:ブースト機能ですね。アコギって、ある程度の強さで弾かないとキレイに鳴らないんです。だから、エレキみたいにピッキングの強弱で表現することができないんですよ。でも、このブースト機能を使えば、ソロの時だけ音量を大きくすることができるので、ライブでは便利ですね。しかも、エレキ用のブースターと違って、音にクセを付けずにそのまま音量を底上げしてくれるのが素晴らしい!

──では、このAC-3をどんな人にオススメしたいですか?

高田:まず、エレアコを買ったけどイマイチ音に納得していない人に使ってほしいですね。AC-3を通しただけで、サウンドの質が数万円分アップしますから(笑)。それと、この手の機材を使ってみたけど頓挫してしまった人にもオススメです。AC-3はビックリするくらい操作が簡単ですし。あとは、ステージだけじゃなくて、宅録でも使ってほしいですね。アコギのマイキングはかなり難しいので、AC-3でライン録りした方が短時間でキレイに録れると思います。エフェクターも付いているし、アコギ弾きはこれ1台持っていれば、あとは何もいらないです!

各部の機能


A.ターゲットギター
具体的なモデルを選ぶツマミで、マーティン、ギブソン、ギルドの代表機種を計15種類搭載。該当するギターを持っていない場合は「OFF」を選ぶ

B.イコライザー
アコギに最適なチューニングが施されている3バンドEQ。ベースでボディ鳴りを、ミドルで暖かみを、トレブルで弦の鈴鳴り具合を調整できる

C.ソースギター
自分のギターと同じ形状を選ぶツマミ。ドレッドノート、ジャンボ、ラウンドショルダーなどの他に、12弦やナイロンギターなども用意されている

D.ボリューム
入力ゲインと出力レベルの両方を、ツマミひとつで同時に適切なレベルに調節することができる。ステージ上でも音量調整が容易に行なえる

E.リバーブ
AC-3には独立したリバーブが装備されており、2つのツマミでかかる量と音質が調整できる。ミックスを一番左に回すとリバーブがオフになる

F.エフェクト
コーラス、ディレイ、リバーブ、トレモロなど、アコギ用にチューニングされたエフェクトを9タイプ装備。下の3つのツマミでかかり具合を調節する

G.コンプ&PUセレクト
左はコンプのかかり具合を決めるツマミで、3時以降はリミッター的な働きをする。右のスイッチはギターに付いているピックアップが、ピエゾかマグネティックかを選択するものだ

H.チューナー
チューナースイッチを踏むとチューナーが有効になり、出力がミュートされる。左下のアンチフィードバックを押すとフィードバックが抑えられる

I.ブーストレベル
最大9dBまで音量を上げることができ、下のブーストスイッチを踏むとオンになる。コード弾きとソロ、ピック弾きと指弾きなどの音量を揃えられる
 


【SPEC】
●ソースギター:16 ●ターゲットギター:15 ●エフェクトタイプ:9 ●サンプリング周波数:44.1 kHz
●AD/DA変換:24ビット、128倍オーバーサンプリング
●入出力端子:ギターイン(標準フォーン)、アウトプットL(標準ステレオフォーン、ライン/ヘッドホン兼用)、アウトプットR(標準フォーン)、バランスアウト×2(XLR)、USB Micro-B ●外形寸法:158(D)×237(W)×52(H)mm ●重量:1150 g(電池を除く)

 


 

AC-3の基本性能を備え、よりシンプルに音作りが行なえるコンパクトな姉妹モデル「AC-2」も発売されている(¥22,000)
 

問:㈱ズーム
TEL:0570-078206
https://www.zoom.co.jp/

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プロフィール

高田 漣(タカダ レン)
1973年、高田渡の長男として生まれる。スティールギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として、YMO、細野晴臣、高橋幸宏、斉藤和義などのレコーディングやライヴに参加。ソロアーティストとしても今までに6枚のアルバムをリリースし、2015年には高田渡の没後10年を機にトリビュートアルバム「コーヒーブルース~高田渡を歌う~」なども話題になった。最新作として、10月4日に4年ぶりとなるオリジナルアルバム『ナイトライダー・ブルース』が発表される。

オフィシャルサイト
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リリース情報

最新アルバム
高田漣
『ナイトライダーズ・ブルース』

キングレコード KICS-3525
10月4日発売


日本のロック&ポップスシーンを牽引してきた細野晴臣や鈴木茂、林立夫などをはじめ、長岡亮介(ペトロールズ)の人気若手ミュージシャンまで多数参加した高田漣のオリジナルアルバム。高田のルーツである、カントリーやブルース、ソウル、ロック、フォークなど彼の音楽的なルーツの深さが感じられる、暖かいサウンドに仕上がっている。

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