ユニバーサル・オーディオが開発
ギターアンプ用ロードボックス「OX」は自宅でアンプを鳴らせない人の救世主
ギターアンプ用ロードボックス「OX」は自宅でアンプを鳴らせない人の救世主
2018/06/29
ユニバーサル・オーディオが開発したギターアンプ用ロードボックス「OX」(オックス)。そのクオリティの高さから、プロの間でも話題となっている本機を、ギタリスト/プロデューサーのオダクラユウ氏に試してもらいました。
取材:本多理人(編集部)
写真:小貝和夫
試奏ギタリスト/試奏方法
オダクラ ユウ
ギタリスト/サウンドプロデューサー/アレンジャー/エンジニア。ギターを軸にしたロックサウンドのトラックメイクに精通し、作曲からアレンジ、ミキシングまで幅広く手掛けている。
https://www.odakurayu.com/
今回は主にボグナーのECSTASY101BにつないでOXの性能をチェック。アンプヘッドのボリュームツマミは、パワー管がしっかりとドライブする程度(写真の位置)まで上げて、OX側のSPE AKER VOLUMEツマミ及びLINE OUTツマミで音量を調整した
OXのTO SPE AKER(左)からキャビネットにつないで鳴らした音と、OXのスピーカーシミュレーターを経由したラインアウト(右)の音を比較しながら試した
この「OX」は、アンプヘッドとキャビネットの間に挟んで使う、ロードボックス(アッテネーター)という機材です。ギターを鳴らす際、チューブアンプのパワー管を十分にドライブさせるには、ボリュームをある程度上げる必要がありますが、そうすると音量が大きくなり過ぎます。ボーカリストに嫌がられたり、マイクの耐入力レベルを超えてしまうこともあるでしょう。そんな時、ロードボックスを挟めば、アンプのパワー管を十分にドライブさせながら音量を下げることができます。非常に便利なアイテムなので、ライブでもレコーディングでも、ロードボックスをかましているギタリストは結構います。
ロードボックスとしてのOXの使い方は簡単で、「スピーカーボリューム」のツマミを下げるだけでOKです。マックスの「5」がスルーアウトの状態で、そこから下げていくと音色を変えずに音量だけを下げられます。音質も損なわれません。
また、OXはスピーカーシミュレーターがしっかりしているという印象です。スピーカーシミュレーターを持つロードボックスは以前からありましたが、それらはロードボックスがメインで、シミュレーターは細かい調整ができませんでした。その点、OXのシミュレーターはiPadやMacの「OX」アプリを使って、キャビネットモデルとマイク×2本、ルームマイクを選び、さらにエフェクターの調整ができます。ここが他社のロードボックスとはまったく違うところです。
音作りの仕方は、まずスピーカーシミュレーターでアンプの出力を「50W」か「100W」から選びます。50Wだとちょっと歪みやすくなりますね。次にキャビの数を選びます。1発にすると音が軽めに、4発にするとヘヴィになります。次にマイクシミュレーターで、定番のSM57タイプなどマイクを選びます。マイクを変えるだけでも低域の感じとかが結構変わりますね。
特筆すべきは、サウンドに“デジタル臭さ”がまったく感じられないことです。通常、デジタルのシミュレーターはクリーントーンが嘘っぽくなったり、タッチが遅れたりしがちですが、OXはそういったことがなく、デジタル回路を通っている感じがしません。立体感のあるクリーントーンは本物のキャビでないとなかなか出しづらいものですが、OXはそれが出しやすいですね。フル・チューブアンプの特徴でもある、ピッキング時の反応速度の速さもまったく損なわれません。
内蔵のエフェクターも高品質で、4~5万円くらいで市販されているラックエフェクターより圧倒的にいい音です。例えば「1176」というコンプのシミュレーターが入っています。ギタリストの多くは足元で踏むコンプに慣れていると思いますが、1176はそういうタイプではなくて、レコーディング時に最終的な音圧を調整するためのコンプです。もちろん、カッティングのツブを整える目的でも使えますが、どちらかといえば音を積極的に荒々しく加工するために使います。特に1176の銀パネルはギター録音によく使われる定番モデルで、ちょっと歪ませる効果があるのが特徴です。この歪み成分がカッコいいギターサウンドを作る秘訣です。ギターをプロっぽくするためのコンプだと覚えておいてください。
OXは、自宅でアンプヘッドを鳴らせないギタリストにとって、救世主となるアイテムです。「アンプヘッドは持っているけど、普段鳴らせなくて部屋の肥やしになっている」という人には、特にオススメですね。DAWでの音楽制作で、アンプヘッドをフル活用できるようになります。
左側のRIGは、OXアプリで保存した設定を呼び出すツマミだ。これを使えばiPadやMacにつないでいなくても、セーブした6種類の音色が選べる。例えば、「ライブハウスで演奏する時用の設定」、「自宅でレコーディングする時用の設定」、「野外でライブする時用の設定」などをアサインしておくと便利だ。SPE AKER VOLUMEツマミでキャビの音量、LINE OUTツマミでオーディオインターフェイスやPAミキサーに送る音量を決める。ラインアウトからは、スピーカーシミュレーターやエフェクターを経由した音が出力され、スピーカーアウトの出力にはシミュレーターやエフェクトは反映されない。そのため、音量を下げたキャビの音と、シミュレーターを通ったラインの音を同時に録ることも可能だ
同社のUAD-2のようなリアルなエフェクトを標準装備。DAWを使っている人にとっては、シンプルで扱いやすい画面だ。iPadやMacからワイヤレスで操作できる点も魅力的
1176のインプットを上げると、右側のGRメーターが振れて、振れた分の音量が圧縮される。-3~-4dBあたりまで振らせると、程良くかかっている状態になる。ただし音量が下がるので、アウトプットツマミを上げて音量を戻そう。ギターの場合、アタックは早め、リリースは遅めにするのが定番だ
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