音質と処理能力がパワフルに進化!
ユニバーサルオーディオ「Apollo Twin MkⅡ」徹底レビュー
ユニバーサルオーディオ「Apollo Twin MkⅡ」徹底レビュー
2018/09/11
【第3回】
Apolloシリーズがあれば家でプロ級の歌録りができる! 標準装備プラグイン「Realtime Analog Classics」
ユニバーサル・オーディオのDSP内蔵オーディオインターフェイス「Apollo」シリーズには、「Realtime Analog Classics」と呼ばれるプラグインが標準装備されています。これを利用すると、プロのスタジオと同等のクオリティでボーカル録音が行なえるようになります。第三回となる今回は、その方法について解説します。
文:谷口尚久 写真:小貝和夫
Apollo Twin MKⅡ
オープンプライス(SOLO=¥79,000 前後、DUO=¥102,000前後、QUAD=¥148,000前後)
Thunderboltで接続するアナログ2イン/ 6アウト仕様のDSP内蔵オーディオインターフェイス(Mac/Windows両対応)。有名マイクプリなどの挙動を忠実に再現する独自の技術「Unison」(※)に対応した他、最大8チャンネルのデジタルインも備えている。
ARROW
オープンプライス(¥58,000 前後)
Unison対応プリアンプを2系統、ヘッドホンアウトとモニターアウトをそれぞれ1系統ずつ搭載した、Thunderbolt 3対応のオーディオインターフェイス。バス電源で動作するため、出先での作業にも最適だ
近年はDAW環境が手軽に手に入るようになり、音楽制作の裾野は一気に広がりました。パソコンとソフトウェアは驚くほど価格が下がり、クオリティも上がり続けています。それらさえ購入すれば、誰もがプロミュージシャンとほぼ同じ環境を得られるようになっています。
ですが、残された1番の難関は、「ボーカルレコーディング」ではないでしょうか。ひと昔前であれば、家で高品質な歌を録るには、「①吸音に優れたボーカルブースを作る」、「②プロ仕様のマイクを買う」、「③プロ仕様のアウトボード(プリアンプ/コンプ/EQなど)を買う」というステップが必要でした。①はリフレクションフィルター(※)で解決できるようになり、②は各メーカーの熾烈な努力により、優れたマイクが安価で手に入るようになりつつあります。しかし③については、やはりアナログのアウトボードを買う以外に選択肢がなかったのです。
それはなぜでしょう。1番大きな点は、レイテンシーの問題があるからです。ソフトウェアでアナログ機材をシミュレートしたものは以前からありましたが、どうしてもパソコンに負荷がかかり、遅れのないモニタリングができなかったのです。また、そのクオリティも千差万別でした。かと言ってアナログ機材は高価で、なかなか手の出ないものなので、何台も所有して使い分けるなど夢の話でした。
今回紹介する「Apollo Twin MkⅡ」や「ARROW」は、③の問題を一挙に解決してくれる、誰もが待ち望んでいた機材と言えるでしょう。内蔵のDSPでエフェクト処理をするためコンピュータに負担をかけず、もちろんアナログ機材ならではのメンテナンスや、ケーブル配線などの面倒からも解放されます。しかも、そんな機材が片手で持てるサイズだなんて、誰が想像したでしょうか。今、プロで活躍するミュージシャンの多くは、Apolloシリーズに乗り換えを進めています。続いて、Apolloシリーズを使ったボーカル録音の手順を紹介しましょう。
(※1)Unison=プリアンプなどにおいて重要な、インピーダンスやゲイン、アナログ回路のふるまいなどを忠実にエミュレートし、Apolloシリーズのマイク/Hi-Zインプット回路を制御する技術のこと
(※2)リフレクションフィルター=マイク録音時の不要な残響を遮断し、鮮明な収音を実現するアイテム(sEエレクトロニクスReflexion Filter Proなど)
手順① マイクプリ610-Bでコンデンサーマイクのポテンシャルを引き出す
まずはコンデンサーマイクを用意し、Apolloから48Vの電源を供給してあげましょう。今回は、昔ながらの真空管プリアンプをシミュレートしたプラグイン「UA 610-B」をかけ録りしました。真空管系の機材には、音という空気の振動を電気信号に変換する際、アナログな手触りがクッションとなって、より音楽的に録音できるという効果があります。しかもプラグインなら、真空管が暖まるのを待つ必要もありません。
設定としては、コンソール画面のUnisonプラグインに610-Bをインサートします。マイクからの入力レベルを整え、DAWに適切に信号がられているか確認しましょう。必要に応じて、ゲインやEQもイジります。なお、Apollo本体でハイパスフィルターもかけられるので、無駄な低音も切っておきましょう。
610-Bは非常に素直なプリアンプです。今回はノイマン87Ai(マイク)で試しましたが、中音域が充実しながらも透明感が損なわれず、ミックスしやすい音で録音できました。他にもオプションで、ニーヴやSSLなどの多種多様なレジェンド機材のプリアンプが選べるのも魅力です。個人的に使い慣れたAPIのプリアンプも、実機と同じくエッジの立った質感で録音できて驚きました。
手順② コンプレッサー1176で音量を程良く整える
次に、適正な録音レベルを保つために、コンプレッサーで音量のバラつきを抑えましょう。今回は定番の名器「ナナロク」(1176LN Legacy)を選んでみました。インプットをセンターより左、アウトプットをセンターより右という、基本に忠実な「逆ハの字型」に設定します。ボーカル録音なので、子音を邪魔しないようにアタックは遅め、リリースは早めにします。レシオは「4」で大丈夫ですが、オケが派手なら「8」でもいいでしょう。まさにナナロクな引っかかり具合で、コンプで抑えた箇所のヌケが悪くなりませんし、全体的に切なさが増すというか、訴えかける音質になります。くれぐれもかけ過ぎにはご注意ください。また、このコンプには歪みを加えるという上級テクもあります。そういうことを気軽に試せるのは本当にいいですね。
手順③ リバーブReal Verb Proをモニターにかける
手順②までは録音の上流で処理をする、いわゆる「プラグインのかけ録り」をするステップでした。ここでは、ボーカリストに気持ち良く歌ってもらうためにモニター上にリバーブをかけてみましょう。コンソール画面のセンドでAUX1に信号を送り、AUX1にリバーブをインサートします。今回はApolloシリーズ標準のReal Verb Proを選んでみました。ボーカリストの好みにもよりますが、あくまでオケ中で歌っていて自然に感じる程度のセンド量がいいかと思います。これも、コンピュータ側の負荷を気にせずに使えるので快適です。またオプションで、往年の名機「レキシコン224」などの選択肢がたくさんあるのも楽しいところです。特にプレートリバーブの「EMT140」は、実機を使うとなるとあまりにも大きくて、1部屋分のスペースが必要ですから(笑)。
- ▶ボーカル録音用のプリセットも利用してみよう!
コンソール画面のインサートの左下をクリックすると、かけ録りに使える様々なプリセットが現われます。しかも、有名エンジニアが監修したものもあるのでとても勉強になります。まずトニー・マセラティの「LEAD VOX」を試してみましたが、ギラつかず充実したさすがの音質になりました。他にスティーヴ・レヴィンの「VOXCLEAN」などはグっと前に出てくる音像で、今時のEDMやR&Bに合いそうです。UAD-2は、他にもいろんな機材をカバーしていて、個人的にはパルテックのEQが扱いやすくて重宝しそうだと感じました。人気モデルはひと通り網羅していますし、プレミア的な機材も入手可能です。憧れのマンレイVOXBOXなどを使うと、何とも贅沢な気分に浸れること間違いなしです!
UADソフトウェアの最新版では70年代のサウンドを再現する3つのプラグインが追加!
最新のVer. 9.5では、ロンドンのオリンピックスタジオなどで使われていたコンソール「Helios Type 69 Preamp and EQ Collection」や、70年代~80年代にかけて活躍したフランジャー「A /DA Fl anger」、ギターアンプ「Friedman Buxom Betty Amplifier」の3種が追加された
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