日本人なら誰もが耳にした名曲を叩いた男
【ドラム界の重鎮 田中清司 x 昭和歌謡マニア 半田健人】昭和歌謡グルーヴ対談
【ドラム界の重鎮 田中清司 x 昭和歌謡マニア 半田健人】昭和歌謡グルーヴ対談
2018/11/12
TEAC加茂:「太陽にほえろ!」を知ってる世代は当時名探偵コナンのテーマを聴いてくすぐられたと思うんですよ。これは「太陽にほえろ!」っぽいという感じで(笑)今の20~30代に「名探偵コナン」は本当に人気がありますね。うちの娘も「名探偵コナン」が大好きなんですが、子供と一緒に映画館観に行って親もはまるってパターンもありますね。
半田:僕なんかは世代が逆で小学校の頃に「名探偵コナン」を観てて、その後「太陽にほえろ!」を聴いて「これコナンぽい」って言いましたからね。
田中:そっか(笑)なるほど反対だ。
半田:常々ヒット曲と縁のある人生ですよね。「名探偵コナン」のテーマなんてこれからもずっと使われるでしょうしね。
田中:「サザエさん」みたいになっちゃったね。(笑)
TEAC加茂:ちなみにご自宅では最近レコードプレーヤーでも音楽を聴かれてるんですよね?お話を伺ったら、なかなか音楽をじっくり聴く時間が無かったとか。
田中:昔はスタジオが終わって家に帰ってきたらもう夜中で、それからちょっと頭の中入れ替えたいんで1時間ぐらい向こうの曲聴いたりはしてたけどね。
半田:やっぱり歌謡曲漬けだと感性がちょっとね。
田中:うん、そうねぇ。
TEAC加茂:今回この企画をやるキッカケになったのが、清司さんから「岩崎宏美の『聖母たちのララバイ』ってご存知ですか?」って訊かれたので「そりゃ知ってますよ!」って言ったら「あれ叩いてるの僕なんですけど、こないだ初めてYouTubeで聴きました」って言われたんですよ。「YouTubeで聴くんだったら、せっかくだからTEACのオーディオで聴きませんか?」と申し上げたのが始まりなんです。
今回試聴したオーディオの話をさせていただきますと、デジタルアンプ「UD-505」がありまして、レコードやCD、それからパソコンのハイレゾ音源やスマホの音をBluetoothで飛ばしたりとか、全部この一台で出来ちゃうんですね。本当はもっとお茶の間で聴いてる感じにしようと思ったんですけど、せっかく清司さんがいらっしゃるならってことでうちのハイエンドオーディオブランドのエソテリックのチームも手伝ってくれてケーブルなどこだわりのセッティングにしてくれたんですよ。
半田:いやぁ、でもこうやってちゃんとした環境と機材で聴くと普段ヘッドホンでは聴こえない色んな音の発見がありましたね。
田中:そうだね。
半田:ドラムに対する向き合い方って、それこそ始めた頃から今日に至るまで一緒ですか?
田中:20代の始めぐらいはめちゃくちゃ力入れて叩いてね、左手はスティックを反対に持って太い方でドラムの皮がベコンベコンになるくらい叩いてたこともあったね。
半田:JAZZあがりの方が多かったと思います。清司さんのダイナミックな音が受けていたんでしょうね。編曲家の馬飼野俊一先生も「田中君はタムの音が違うんだよ!」って常に仰ってましたけどね。ドラムはギターと違って音階が無いので、叩く場所とスナップ力の2つが大きく音を決めると思うんですけど、それでもしっかりその人の個々の音が出るのが一流と言われる方の共通点なんですよね。石川晶さんの音は石川さんの音がするし、ポンタさんの音はポンタさんの音がしてるし。だからドラムって不思議なんですよね。田中清司サウンドを作るコツと言うかセッティングのこだわりってあります?
田中:一番勉強したのはチューニングかな。スネアとタムのバランスが悪いとスネアを叩いた時にタムが共鳴しちゃうんで、自分はこのタムで良いと思ってもエンジニアから「スネア叩いた後にプーンって余韻が残るんですよね」って言われて。
半田:でちょっと変える?
田中:うん。でもその頃はまだよくわかんなくて、色々言われてはタムのチューニングを強めに高くすると共鳴が消えたりとか、その逆とかね。勉強になったね。
半田:70年代ってバスドラのフロントヘッドを外すのが流行ってた時期がありましたけど清司さん外してました?
田中:あるね。始めた頃ね。
半田:それは音質的なことよりも見た目的な?
田中:見た目じゃなくて、やっぱりバスドラのフロントヘッドを貼っちゃうと「ボーン」という余韻の方がでかくなっちゃうけど、前外せば「ストン、ストン」ってタイトになるのね。そういう意味では曲によって変えてたかな。あとは皮の真ん中に穴開けて、ミュートだけ布を皮寄りに当ててそこからマイクを入れてやるとか。
半田:スネアやタムのミュートは使っておられました?
田中:ミュートは使ってたね。後はちょっとティシュにガムテープ貼って倍音を無くすとかね。やっぱり曲に合わせて色々とやってたね。
半田:80年代後半って結構ドラムの音をデッドに録るのが流行ってきた時代だと思うんですね。その辺りは録音されてる曲を聴いても「あぁ、これミュートはしてるよね」っていう音が残されているのでやっぱりって感じですね。
あと、これは聞いとかなきゃいけない。「歌謡曲に生きた田中清司!」みたいになってますけどホントに好きな音楽ジャンルは何なんですか?プレイヤーとして自由にやっていいよって言われたら。
田中:やっぱり“自分の中のリズム”を叩いてるときじゃないかな。“自分の中のリズム”で“自分の中のメロディ”で“自分の中のサウンド”で。
半田:じゃあ何かを目指したりとか、誰かに憧れてとかはないんですか?
田中:最初はいろんな人のドラミングを聴いて、「あの人はこういうグルーブなんだ」っていうのはもの凄い勉強したね。けど最終的に、じゃあ自分はどういうリズム叩いてる時が心地いいのかって考えたら、さっきの“自分の中のリズム”が一番好きなんだなっていう、今はそういう心境だよね。
半田:でもそう思えるのって最高ですよね。結局自分が一番心地良いっていう精神状態でね。では最後に「今後ドラマーとして生きていこう」と思っている後輩のドラマーたちへ、これからどう頑張っていけば良いでしょうかね。
田中:今は上手い人いっぱいいるよね。だからもう自分の個性で生きて、自分の好きなサウンドを持ってたらそれをどんどん膨らませていくのが良いんじゃないかね。それがやっぱり一番楽しめるし。
半田:やっぱり楽しんでやることが大事ですか?
田中:そう、おっかなびっくりじゃなくて。そうするともうずっと続いていくしね。
半田:楽しくないと続かないですよね。新しい作品をまだ作り続けますか?
田中:もちろん。いつも「あっ、こういうグルーブいいな」って思いつくとつい練習台に行って、「ああ、こんな感じで叩くんだ」ってね、やってますよ。
半田:そうですか。じゃあ僕もまたオファーしますので是非叩いてください。今日はどうもありがとうございました。
田中:はい是非お願いします。(笑)ありがとうございました。
■田中清司ライブ情報
11月16日(金)18:30~
渋谷 Lantern
iZ-Qにて出演
詳細はwebサイトにて。
https://sites.google.com/site/lanternweb/schedule/liveschedule
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