快適に曲が作れる 高音質ヘッドホン

人気ヘッドホン7本の実力を徹底レビュー

人気ヘッドホン7本の実力を徹底レビュー

2016/03/14


現在は空前のヘッドホンブームと呼ばれており、各メーカーから様々なモデルが発売されており、宅録で質のいい作品を作るには、音楽制作に向いた特性を持っているモデルを選ぶ必要がある。そこで編集部では、比較的手に入れやすい価格設定で、音質に定評のある話題の7機種をセレクトし、WHITE JAMやDa-iCE、西島隆弘などの作品を手掛けているエンジニア、松岡 健氏に試奏を依頼して、その実力を検証してもらった。

試聴方法は、松岡氏が普段よく聴いている楽曲を、パソコンに16ビット/44.1kHzのオーディオファイルとして取り込み、「スタインバーグのマスタリングソフト「WaveLab 7」で再生して試聴と装着感をチェックした。

取材協力:スタジオ昭和基地
取材:平沢栄司/写真:桧川泰治


「密閉型」モデルと「開放型」モデルの違い


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密閉型

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開放型

ヘッドホンには大きく分けて「密閉型」と「開放型」があります。密閉型は、「クローズタイプ」とも言われ、音が外に漏れづらい仕組みになっています。ハウジング部分に音を逃がす穴が空いていないために、ドライバの音が逃げない構造になっており、音が耳にダイレクトに届きます。音質的な傾向は、ボーカルや楽器の音をダイレクトに聴くことができ、空気感をあまり感じさせないのが特徴です。また、左右の定位感がハッキリ聴き取れます。主な用途としては、構造的に音漏れが少ないので、マイク録音に向いています。ボーカル録りではヘッドホンからのオケの音漏れを気にせずに録音できます。ただし、音が直接耳に届く分、長時間使用すると耳が疲れやすくなります。

開放型は、別名「オープンエアータイプ」とも呼ばれ、外に音が漏れる仕組みになっています。構造はハウジング部分にドライバの音を逃がす穴が設けられており、空気感のある自然な音質が特徴です。音質的な傾向は、スピーカーを聴いているような自然な音質が特徴です。耳にも優しく、リスニングにも向いています。主な用途としては、長時間聴いても耳が疲れにくいことから、プロの世界ではミックスやマスタリングでの各パーツの音質補整から、楽曲全体のサウンドチェックなどで使われています。また、音漏れが録り音に影響しないエレアコやベース、シンセなどのライン録音でも使用でき、自然な音質でモニターすることが可能です。なお、両者の中間の構造を備えた「セミオープンタイプ」もあり、適度に音が漏れることにより自然な音質を実現します。



コスパ抜群の7モデルをエンジニアが徹底検証!

試奏:松岡 健(マツオカ ケン)

幼少の頃より、ギリシャ〜東京〜イギリス〜東京と渡り歩き、1999年にビクターエンタテインメント㈱ビクタースタジオに入社。様々なレコーディングに関わりながら、2009年に独立。2011年には、優れた録音作品に送られる、第18回日本プロ音楽録音賞・優秀賞をジャンク フジヤマのアルバム『JUNKWAVE』収録の「はじまりはクリスマス」で受賞した。

 

 

【密閉型/クローズタイプ】


サウンド・ウォーリア SW-HP10

オープンプライス(¥10,000前後)

色付けがなく、どの帯域もバランス良く聴こえる
正確にミックスをしたい人にオススメの1本

このモデルはイヤーパッドの形が独特ですね。でも、着けた際に違和感はなくて、密閉性も高かったです。小さいけどしっかりと装着できますし、軽いから長時間作業してもストレスはないと思います。

サウンドの印象はかなり良かったですね。どこかが出ているとか引っ込んでいるとか、そういった周波数的な色付けがなくて、どの帯域もバランス良く聴こえます。フラットな音質なので、リスニング用としては少し色気がないんですが、モニタリング用のヘッドホンとしてはかなり優秀だと思いました。

誇張がなくて原音をそのまま鳴らしてくれるので、自分のミックスを客観的に聴くことができるんですよ。各パートの分離が良くて定位や奥行きも見えやすいですし、エフェクトのパラメーターをイジッた時の音質の変化もわかりやすかったです。

価格もビックリするほど安いですし、ヘッドホンでミックスをしたいという初心者の方にはオススメですね。

●タイプ:密閉ダイナミック型
●ドライバ:外径φ40mm
●最大入力:100mW
●インピーダンス:40Ω
●周波数特性:20Hz〜20kHz
●コード:2.5m
●プラグ:ステレオミニ
●重量:280g(コード含む)
●付属品:標準フォーン変換アダプター、延長コード(2m)
 

問:城下工業(株)
TEL:0268-22-0612
http://www.shiroshita.com/


ヌー HX-1

オープンプライス(¥9,000前後)

ギターやボーカルの中低域が気持ちいい
ロックやポップスの制作に最適なモデル

 

見た目が丸くてかわいいし、低価格を感じさせないしっかりしたデザインがいいですね。業務用っぽくないので、リスニング用として外でも使えると思います。そこそこ重量はありますけど、着けてみると重さは感じないし、イヤーパッドの感触がいいので装着感は良好です。

音質面ですが、「DJ向き」と紹介されていたので、キックの50Hzあたりの低域が出ているのかと思ったら、もう少し上にいるベースのミッドやギターの中低域あたりが強く出る傾向でした。なので、ボーカルやギターを中心としたバンド系のサウンドは気持ち良く聴けますね。

バランス的には高域が少し丸くて中域が出ている密度の濃い音像で、若干の色付けがありつつも、それが逆に聴きやすさにつながっていると思います。高域がキツくない分、音量を上げられますし、長時間聴いても疲れにくいので、宅録で楽器を録音する時のモニタリングや、ロックやポップスのミックスにも向いていると思いました。

●タイプ:密閉ダイナミック型
●ドライバ:外径φ53mm
●最大入力:500mW
●インピーダンス:60Ω
●周波数特性:10Hz〜25kHz
●コード:着脱式=1m、3m
●プラグ:ステレオミニ
●重量:320g(コード含む)
●付属品:標準フォーン変換アダプター、キャリングポーチ


問:イースペック(株)
TEL:06-6636-0372
http://e-spec.co.jp/


Pioneer DJ HRM-7

オープンプライス(¥19,000前後)

キレイに伸びる高域と超低域が再生可能な
スッキリした音を持つモニタリング用ヘッドホン

 

ご覧の通り見た目はかなり大きいんですけど、実際に装着してみると意外と軽いんですよ。それと、左右からの締め付けが少ないので耳が痛くならないですし、長時間使っても疲れにくいと思います。低反発素材と高反発素材を組み合わせたというイヤーパッドは肌触りが独特で、耳をスッポリと覆ってくれるので遮音性はいいですね。

音質は、今回試聴した中では高域が一番キレイに出ていました。低域についてはサブウーファーの帯域まで出ているので、一般のモニタースピーカーの環境では聴こえないようなローをチェックするといった使い方もできそうです。パッドが厚めで耳と距離があるからか、音に圧迫感がないですし、エフェクトのチェックもしやすかったですね。

とてもスッキリした音なので、歌ものやロック系以外に、ジャズやフュージョンとかで、ハイハットとかの繊細な高域のニュアンスを確認するというような用途にも向いていると思います。

●タイプ:密閉ダイナミック型
●ドライバ:外径φ40mm
●最大入力:2,000 mW
●インピーダンス:45Ω
●周波数特性:5Hz〜40kHz
●コード:着脱式=1.2m、3m
●重量:330g(コード含まず)
●付属品:標準フォーン変換アダプター、交換用ベロア・イヤーパッド


問:Pioneer DJサポートセンター
TEL:0120-545-676
http://pioneerproaudio.com/


ヤマハ HPH-MT220

オープンプライス(¥25,000前後)

すべての帯域を正確に判断することができる
モニタリング用ヘッドホンの新定番

 

まずサイズが大きくて、存在感があります。重量もあるんですけど、装着すると不思議と重さは感じないですね。イヤーパッドが耳を包むタイプなので負担が少なくて、ヘッドバンドの締め付けもちょうどいいです。すべてのパーツの質感が高いのは、さすがはヤマハだと思いました。

音の傾向ですが、個人的にはスタジオ定番モデルとしておなじみなソニーMDR-CD900STの、物足りない部分を現代的に補っているような印象を受けました。中高域がカリッとしていて、スネアとかのアタックがしっかりと出ているんですよ。それでいて、低域や高域もしっかりと聴こえるので、バランスがとても良くて、すべての帯域を正確に判断することができました。それと、パートごとの分離も良くて、音がクッキリと見えるので、定位も判断しやすかったですね。

今回チェックしたモデルの中では値段はちょっと高めですが、これはオススメです。自分でも欲しいと思いました。

●タイプ:密閉ダイナミック型
●ドライバ:外径φ45mm
●最大入力:1,600mW
●インピーダンス:37Ω
●周波数特性:15Hz〜28kHz
●コード:1.2m
●重量:415g
●付属品:標準フォーン変換アダプター
 

問:(株)ヤマハミュージックジャパン プロオーディオ・インフォメーションセンター
TEL:0570-050-808
http://www.yamahaproaudio.com/japan/


ローランド RH-300

オープンプライス(¥16,800前後)

フラットでありつつも、高域と低域がよく出ている
シンセなどのデジタル楽器にも最適な音質

いかにもスタジオモニター用というデザインで安心感があって、着けてみると質感もいいですね。イヤーパッドが厚くて柔らかいのが特徴で、ヘッドバンドも余裕があってフィット感がいいからか、重さも気にならないですし、装着感は良好です。イヤーパッドの中に耳がスッポリと収まるタイプなので、長時間使っても耳が痛くならないと思います。

音質はフラットな傾向ではありつつも、高域と低域がよく出ているなという印象を受けました。それほど音量を上げなくても音が元気に聴こえますね。シンセや打ち込みのドラムとかのデジタル楽器の電子音がナチュラルに聴こえるので、個人的にはダンスミュージックやヒップホップあたりの制作にも向いていると思いました。

あと、音量をかなり上げても耳が痛くならないんですよ。そういう意味ではギタリストがロック系の歪んだギターサウンドを大音量で鳴らしてレコーディングするのにもピッタリだと思います。

●タイプ:密閉ダイナミック型
●ドライバ:外径φ45mm
●最大入力:1,600mW
●インピーダンス:40Ω
●周波数特性:10Hz〜25kHz
●コード:3.4m
●プラグ:ステレオミニ
●重量:250g(コード、プラグ含まず)
●付属品:標準フォーン変換アダプター、キャリングポーチ


問:ローランド(株)お客様相談窓口
TEL:050-3101-2555
http://www.roland.co.jp

 

【開放型/オープンエアタイプ】


AKG K612 PRO

オープンプライス(¥17,000前後)

全帯域で色付けがない、
冷静に音が判断できるヘッドホン

 

市場予想価格が¥17,000前後と、AKGなのに安いのでビックリしました。でも、価格以上に質感が高くて、AKGらしく造りがしっかりしていますね。ハウジングがすごく大きいところもAKGらしいです。布製のイヤーパッドは肌にペタッとくっつかないタイプで、軽いうえに装着感もいいので、ストレスは感じませんでした。これなら長時間使っても疲れにくいと思います。

サウンドですが、AKGのヘッドホン特有の中高域のキレイな聴こえ方はそのまま受け継がれていながら、このモデルは下が出ていてバランスが良かったですね。中高域が強調された音が好きな人向きではなくて、全帯域で色付けがないので、冷静に音が判断できます。あと、音にイヤな圧迫感がないので、長時間ミックスをするのにはピッタリだと思います。それに、左右の広がりや前後の奥行きも見やすかったですね。これでミックスをすれば、おかしな音にはならないと思いました。

現在、密閉型のモデルを使っている人がこのモデルを追加すれば、音を判断する幅が確実に広がりますし、開放型の入門機種としてオススメしたいです。

●タイプ:オープンエアー型
●ドライバ:非公表
●最大許容入力:200mW
●インピーダンス:120Ω
●周波数特性:12Hz〜39.5kHz
●コード:3.5m ●プラグ:ステレオミニ
●重量:256g(コード含まず)
●付属品:標準フォーン変換アダプター


問:ヒビノ㈱ ヒビノプロオーディオセールスDiv.
TEL:03-5783-3110
http://www.hibino.co.jp/


オーディオテクニカ ATH-R70x

オープンプライス(¥31,000前後)

フラットながらもサブウーファーの帯域も
カバーするミックスに最適な音質

このモデルは非常に軽いですね。ハウジング部は蜂の巣状の細かい穴が空けられているので通気性が良く、独特の形状をしているヘッドバンドは頭部を軽く押さえてくれる感じで、イヤーパッドの感触も気持ちいいので装着感はいいと思います。

サウンドですが、開放型って普通は上の帯域が出ているスッキリした音っていうイメージですよね。でも、このモデルはそうでありながらも、ローがすごく出ていて、50Hz以下のサブウーファーの帯域まで聴こえるので、シャーデーのベースとかもちゃんと見えるんですよ。ハイが落ちているわけではなくて、あくまでもバランス的に下寄りっていうことで、基本的にはフラットな特性を持っています。

それと、サウンドの解像度が非常に高いので、ミックスでの定位や、フェーダーやエフェクトなどの細やかな音の変化は見やすいですね。あと、中域がとても良く再現されていて、ボーカルや楽器の音が前に出てきます。そういう意味でミックスに最適ですが、リスニング用途で使っても気持ちいいですね、いわゆる開放型にありがちな距離感が少なくて、いい意味で密閉型に近い印象も受けました。モニタリング用の開放型の音を聴いたことのない人は、ぜひ一度本機のサウンドを聴いてみるといいと思いますよ。

は、蜂の巣状の細かい穴が空けられているので通気性も良く、布製のイヤーパッドはサラサラした感触を持っているので、長時間使用しても汗でベタついたり蒸れることもないですね。

●タイプ:オープンエアー型
●ドライバ:外径φ45mm
●最大入力:1,000mW
●インピーダンス:120Ω
●周波数特性:5Hz〜40kHz
●コード:着脱式=3m(Y字型)
●プラグ:ステレオミニ
●重量:210g
●付属品:標準フォーン変換アダプター、キャリングポーチ


問:㈱オーディオテクニカ
TEL:03-6801-2080
http://www.audio-technica.com/monitorheadphones/jp

 


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