ルカ・スーリッチとステファン・ハウザーのチェロによるデュオ

2CELLOS、来日公演・ニューアルバム『スコア』についてインタビュー

2CELLOS、来日公演・ニューアルバム『スコア』についてインタビュー

2017/03/29

 

 


──最初からアコースティック・チェロでアルバムを作る予定だった?

ルカ:「こういったテーマの音楽に取り組むためには一番いい、ベストなチェロで演奏するべきだろうと思った。奥深く、豊潤な、美しい音色を奏でるためにはやはり楽器も一流のものが必要となってくるからね。
今回は、楽器に限らず、一流を揃えて制作に臨みたいと考えていた。オーケストラは、ロンドン交響楽団、スタジオは、ロンドンのエアースタジオ、チェロは最高峰の名器で、チェリストも一流(笑)、サウンドエンジアも最高クラスのピーター・コビン。彼は、数々のオーケストラによる映画音楽のレコーディングを成功させてきた素晴らしいエンジニアだ。エアースタジオにも慣れている。このように世界トップクラスの人達に囲まれてのレコーディングだったので、当然ながら楽器も最高峰のものを用意したかったんだ」

──名器を演奏した時の第一印象は?

ステファン:「それはそれは本当に素晴らしくて、僕達が普段演奏している自分のチェロと比べた時、さらに伝説の楽器のすごさを実感したよ。演奏した瞬間の反応に名器たるゆえんを大いに感じたよ」

──具体的にどこが素晴らしいのか、言葉で説明することは出来ますか?

ステファン:「クルマに喩えるとわかりやすいかもしれない。フェラーリを運転すると、一般的な自家用車とはダイナミズム、高級感、機能のレベルの違いを大いに感じるわけだけれど、それと同じかな。ハンドリングがとにかくいいんだ」

ルカ:「弾いた瞬間の反応がとにかくいい。演奏しやすいのはもちろんのこと、色鮮やかな音色をいろいろ奏でることが出来るんだよね」

──映画音楽というテーマは、どのように生まれたのか。

ルカ:「子供の頃から、僕は映画音楽の大ファンだった。いつかこのようなテーマでアルバムを制作したいと願っていた。今回は、根本的な制作の方法がこれまでとは違っていた。過去3作は、YouTubeで発表し続けた新曲を集めて、まるでコンピレーションのような感覚でアルバムを制作していた。それが今回は、初めてコンセプトを練るところから始まったアルバム制作だった。
そのコンセプトを練る段階で、これまでとは異なる僕らの繊細で、ロマンティックな演奏という面をみなさんにお見せしたいという風に考えた。僕達は、子供の頃からクラシックを学んできたけれど、いきなり純粋なクラシックのアルバムに方向転換してしまうと、これまでのリスナーにきっと「とっつきにくい」とか、「わかりにくい」という風に思われてしまうので、まずは映画音楽でロマンティックな演奏を聴いてもらうのがいいだろうと思った」

──坂本龍一のサントラに参加したり、前作でハンス・ジマーの楽曲を2曲取り上げたことなどが、映画音楽をテーマにする布石になったか?

ルカ:「言ったように子供の頃から映画音楽が好きだったので、「いつか映画音楽のアルバムを」という思いは、ずっとあった。それが今回実現したのは、これまでの実績、デビュー以来ずっと頑張ってきたので、ある程度の地位が確立されたことで、こうして世界的な一流オーケストラと共演できることになった。素敵なメロディーの楽曲を選曲するうえで、優秀なオーケストラとの共演は、必須だったから。
新作を制作するにあたり、究極の目標は「人々の心の琴線に触れるようなアルバムを作る」ことだった。だから、坂本龍一のサントラに参加したこととか、ハンス・ジマーの楽曲を前作で演奏したことは直接関係していない。ただ、言えることは正しいタイミングで、映画音楽のアルバムが作れたということだ」

──前3作からの大胆な方向転換、迷いとかはなかったか?

ステファン:「迷いも、戸惑いも全然なくて、僕らは、クラシカル・クロスオーヴァーの演奏家として、前3作とは異なる面、新たな面、それはロマンティックだったり、心癒される演奏だったりするわけだけれど、そういう長所があることも知って欲しいと思った。長年クラシックを学び、高度なテクニックをも身に付けているので、それを駆使した繊細で、情感豊かな演奏も聴いてもらいたいと思ったんだ」

──さて、具体的にどのような方法で選曲をされましたか?

ルカ:「候補曲のなかから、まず20曲に絞った。そこから最終的に収録の14曲(ボーナストラックを除く)になった。選曲する過程は、僕にとって旅のような経験になり、そのなかで新たな曲との出会いもあった。それらを含めると、あとアルバム2枚か、3枚は、映画音楽で作れるのではないかと思う。それも、このアルバムの成功によって決まってくると思うけれどね(笑)」

──その選曲について、映画の時代も幅広く、2人が生まれる前の映画からも選んでいますよね?

ルカ:「共通点は、どの作品も映画史に残る名画ということ。僕の場合、音楽から映画を知り、古い名画も時代を遡って観てきた。繰り返しになるけれど、僕は、幼い頃からクラシックを学ぶ一方で、映画音楽にも興味を持ち、よく聴いていた。映画音楽というのはクラシックと比べると、エモーショナルで、饒舌にストーリーを語っている。だからこそ感情移入がしやすく、そこに惹かれて、子供の頃から多くの映画音楽に親しんできた。もちろん映画も大好きだよ」

──14曲の選曲ポイントは?

ルカ:「基本は、音楽の素晴らしさ。それほど難しい話ではないんだ。純粋にチェロの音色を生かせるような、美しいメロディーの曲を選んだだけ。それがポイントさ」

──前回のサントリーホールで披露した『ガルリエルのオーボエ』は入っていないのはなぜ?

ステファン:「すでにコンサートで何回も演奏している曲なので、ファンの方には新しい曲を聴いてもらいたいと思ったから。それに僕らにとってもフレッシュな感覚が必要だったから、選ばなかったんだ」

──1曲目の『ゲーム・オブ・スローンズ』だけは、TVドラマの音楽ですよね?

ルカ:「選んだ理由はいくつかある。まずは、この音楽がチェロ用に書かれていること。もちろん音楽自体も素晴らしい。さらに、このドラマのロケ地が僕の父の出身地であるクロアチアのドブロヴニクだったこと。それがこのPVをドブロヴニクで撮影してみたい、というインスピレーションにもつながり、演奏することにした」
 

次のページ »

この記事の画像一覧

(全0枚) 大きなサイズで見る。

関連する記事

PAGE TOP