エンジニアの青野光政氏が特徴とEQの使い方のコツを解説!
500モジュールの魅力的なキャラクターをミックスで使える5種類のUADプラグイン
500モジュールの魅力的なキャラクターをミックスで使える5種類のUADプラグイン
2017/05/24
ユニバーサル・オーディオのDSPプラグイン「UAD-2」には、api500モジュールの名機と同じキャラクターを持つ、5種類のEQがあります。各モデルの特徴をよく知るエンジニアの青野光政氏に、それぞれの特徴とEQの使い方のコツを聞きました。
取材:井桁 学
写真:小貝和夫
EQを使う時は、すべての帯域を聴いて、必要な周波数だけにかけることが大切です。例えば、キックを単体で聴いて「ローが全然出ていない」と思っても、ベースと合わせてみるとすごく太い音になったりするのは、倍音構成がうまく融合しているからなんですよ。EQはそういった倍音構成を調整するために使うんです。
UADのEQは全体的に良く出来ていて、プリセットも多いので、どの音域に寄せたいかを考えて最適なプリセットを見つけるのがいいと思います。周波数帯域のパズルを組み合わせていくようなイメージで、操作してみましょう。
API 500 Series プラグインコレクション $299.00
- ▶550A 強くかけても歪みにくく、EQ臭い音にならない
API 500seriesプラグインコレクションに含まれる、15ポイントのEQと±12dBのゲインをコントロールできる3バンドのパラメトリックEQ。HFとLFバンドは個別に選択可能なピーキング/シェルビングモードに加え、125Hzのフィルターを装備している。
右が実機
この550Aは、倍音がキレイに出てくれる3バンドのパライコで、強めにかけてもEQくさい音にならないんです。僕はこれの実機を録りで使っていて、ミックスではUAD-2の550Aを使っています。ハードウェアとよく似た倍音を出してくれるので、結構な頻度で使いますね。そんなに歪まないところがいいんですよ。使う場面は曲によって違いますけど、10kHz以上がキレイに伸びるので、主に10kHzや12kHzをブーストしたり、400Hzあたりをカットしたりします。
パート的にはスネアやピアノ、アコギといった生楽器にオススメです。あと、マスタートラックにもかけたりします。ハイシェルフ/ローシェルフのボタンをオンにして使う方が、倍音がキレイに伸びますね。
- ▶560 狭いQ幅でキレイにカットできるグラフィックEQ
API 500seriesプラグインコレクションに含まれる、10バンドのグラフィックEQ。API独自のユニークなプロポーショナルEQ設計により、ブースト/カットレベルが低い時はフィルターの帯域幅を自動的に広げ、高い時は狭めるようになっている。直感的かつ音楽的な調整が可能だ。
右が実機
560も録りの段階では実機を使って、ミックスではUADのものを使っています。主にキックとか、ドラムに使うことが多いですね。実機と同じように、倍音の崩れはないんですけど、550Aよりは若干EQくさくて、倍音の潰れ方がちょっと多いですね。倍音をキレイな感じにしたければ550A、ちょっと潰したい時は560を使います。あと、グライコの560の方がQ幅が狭くて、いい感じで不要なところをカットできるんですよね。
例えば、キックは500Hzから125Hzあたりをカットしつつ、60Hzをブーストしたり、高域は1kHz、2kHz、4kHzあたりを上げるんですけど、やり過ぎると腰高な音になっちゃうので要注意です。4kHzや2kHzがアタックを司るポイントなので、そこを調整するといいですよ。
Tonelux Tilt EQ $99.00
- ▶ハイを上げるとローが下がるシーソータイプのEQ
apiブランドの元所有者であるエンジニアのポール・ウォルフが、2004年にトーンラックス社を設立して開発した独自技術「Tilt回路」を、ユニバーサル・オーディオがソフチューブと共同で再現したプラグイン。実機にはなかったLOUD機能やフィルター機能も搭載している。
写真は500シリーズになる以前の独自規格のモジュールMP1A。500シリーズでも操作子のレイアウトは基本的に同じで、パネルがやや幅広になった。赤線部分がTILT EQだ
500シリーズとしても発売されているトーンラックスのHA「MP5A」のTILT EQだけをプラグイン化したものです。TILT EQは、650Hzを基点としてブースト/カットするシーソータイプのEQなんです。つまり、650Hzを基点に、高域を上げれば低域が下がります。この650Hzが基点になることで、ブーストすると音が少しふくよかになるんです。
また、このプラグインには実機にはない「LOUD」ボタンが搭載されています。これをオンにすると、ブーストした時に650Hzの上と下がブーストされてドンシャリになり、カットすると650Hzだけが持ち上がってその上下がカットされます。6dBか12dBかを選ぶフィルターボタンもこのプラグイン特有のものです。歌とかベースに使うのがオススメですね。
Helios Type 69 EQ $199.00
- ▶中域をグッと押し出せるギターと相性のいいEQ
ロンドンのベーシング・ストリート・スタジオに設置されていた、ヘリオスType69をモデリングした3バンドのパッシブEQ。高域は10kHz(シェルフ)、低域は50Hzフィルターか周波数選択のピークEQ、中域は8つの周波数から選択するピーク/トラフEQを持つ。
実機
実機が500シリーズとしても発売されている「Helios Type 69 EQ」は、高域はカットとブースト、低域はピークブースト(60/100/200/300Hz)かローカット(50Hz)、ミッドは「PK」と「TR」を切り替える方式で、TRにするとカット、PKにするとブーストになります。
音質的には、ハイの倍音がキレイに出るところが特徴ですね。それとHeliosType 69 EQのいいところは、中域をグッと押し出せる点で、ギターとの相性がすごくいいんです。ギターに使うと、ギタリストにすごく喜ばれますね。エレキギター、特にUKもののサウンドを作りたい時にオススメです。設定は、ミッドを0.7~1.4kHzの間でブーストして、出過ぎたところにコンプレッサーをかけるのがオススメですね。
Maag EQ4 EQ $229.00
- ▶声の息遣いのニュアンスをコントロールできる
NTIEQ3の設計に深く関わっていたクリフ・マーグ氏が、2009年にEQ3をよみがえらせる形で開発した6バンドEQ「Maag EQ4」を再現したプラグイン。空気感の演出が可能な、5ポジションのAIRバンドコントロールが最大の特徴だ。
実機
僕は以前、「NTIEQ3」という5バンドEQを使っていて、Maag EQ4の実機は、そのEQ3が4バンドになったものなんです。実機は500シリーズとしても発売されていて、最大の特徴は声の息遣いを強調できる「AIRバンドコントール」が搭載されていることです。僕はこのツマミを多用しています。僕の場合、ボーカルに使うことが多くて、周波数帯域の設定はシンガーによりますけど、5kHzや10kHzに設定してAIR GAINを上げていきます。海外のエンジニアではスネアとかドラムにかけたりする人も多いですね。AIRバンドコントロールを使うことで、スネアの音色作りでスナッピーの「ピシ」っていうところや高域が出て、サウンドがハデ目な感じになるんです。あと、マスターにかけるエンジニアもいま
今Apolloラックモデルを買うと、最大$3500相当のUADプラグインが無償でもらえる
現在、Apolloラックモデル各製品を購入した人に向けて、UADプラグインを無償提供する「APOLLOドリームスタジオ」プロモーションが実施されている。期間は2017年6月30日までで、Apollo 16、Apollo 8、Apollo 8P、Apollo Firewireのいずれかを購入し、自身のアカウントに登録すると、Studer、Lexicon、AKG、Pultec、 Fairchild、TeletronixなどのUADプラグインを最大$3,500分無償で入手できる。本キャンペーンの詳細は、(株)フックアップのWebサイトで公開しているのでチェックしてほしい。
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