「アンビソニックス方式」のVRマイクを搭載した注目のレコーダー

ズーム「H3-VR」を使って、J☆Dee'Zの360°のYouTube音楽動画を収録してみた!

ズーム「H3-VR」を使って、J☆Dee'Zの360°のYouTube音楽動画を収録してみた!

2018/12/14


J☆Dee'Zを担当しているソニー・ミュージックの灰野一平氏は、常に音楽制作関係の機材をチェックし、音に対して深いこだわりを持っているプロデューサーです。実際に収録に立ち合った際に、H3-VRのサウンドを聴いてもらい、さらに完成した動画を見てもらったうえで、プロの目線でH3-VRについての感想を語ってもらいました。

 

──現在、レコード会社では「VR映像/オーディオ」を、どういう風に捉えているのでしょうか?

灰野:ゲームやガールズグループのコンテンツを中心に、注目され始めているとは思いますが、音楽だけで考えると、例えばライブハウスとかでカメラを客席に置いて収録したとして、「周りのお客さんの顔を見てどうするの?」みたいに、個人的には少しいぶかしげに見ていたんですね。はたして相応しい用途が見つけられて、魅力的なコンテンツが作れるのかと。でも、今回J☆Dee'Zのパフォーマンスを収録してみて、すっかり印象が変わりましたし、PVとかの映像コンテンツにおけるVRの可能性を感じました。

──では、H3-VRで収録したサウンドを聴いての第一印象を教えてください。

灰野:予想以上に音がいいと思いました。マイクのユニットがいいのか、特に中低域が素晴らしかったです。この手の小型レコーダーって、高域だけがシャキッとしていてアタック感はよく録れるんですけど、中低域がペラペラなものも多いんですよ。でも、H3-VRは今回のような生のボーカルや楽器を録音しても安っぽい質感にならなくて、そこがすごくいいと思いました。それと、メンバーがマイクに近づいた時と、遠くに離れた時の音の変化がすごくリアルに録れていて、音質的には想像を超えていました。これが3万円台で買えるなんて安いですよね。

──確かに、マイクとの距離による音量の変化がリアルでした。

灰野:普通の2ミックスで、メインのボーカルの音量を下げて奥に置くと、非常に聴きづらいというか、ストレスが溜まるんですよ。でもH3-VRの場合は、映像と合わせて聴いたからかもしれないですけど、明らかにコーラスがメインボーカルより大きくなっている時も音がリアルなので、まったくストレスを感じないんです。メインボーカルが小さくなってもニュアンスがしっかり聴こえてくるので、聴いていても楽しいですね。ある意味、“空気ミックス”と言えばいいのか、DAWソフトとかで電気的にミックスした音にはない、遠くに行っても自然な空気感が残っているかというか……。「普通にステレオマイクで録った音よりも、はるかにリアリティを感じるのはなぜなんだ!?」って思いました(笑)。

──H3-VRをセットした位置に自分が行って、そこで両耳で聴いた状態の音が、そのまま全方位丸ごと録れているという感じですよね。

灰野:まさにそうですね。ここまでリアリティのあるサウンドは、これまでになかった気がします。DAWソフトのパンを振った時の作為的な質感とは、明らかに定位のリアリティが違うんですよ。しかもリバーブの偽物っぽい響きと違って、その場の空間の響きが自然に収録されているんですね。時間があったら普通のステレオマイクでも録音して、聴き比べてみたかったです。

──他にサウンド面で注目された点はありましたか?

灰野:定位が素晴らしくハッキリしている点は、本当にすごいと思いました。今回はアコギとカホンでしたけど、他の楽器を録るのにも良さそうですね。例えば、ドラムとベースを一緒に録ると、どうしても音がゴチャっとしてしまうんですけど、H3-VRだったら両方がクッキリ録れると思うんですよね。とにかくメンバーの左右や前後の動きとサウンドがリアルにリンクするのが、ものすごく面白いと思いました。

──ダイナミックレンジ的にはどう思われましたか?

灰野:大きな音から小さい音まで、しっかり拾っていましたね。今回の曲は、最初にアコギのフィンガーアルペジオの小さい音から入るんですけど、決してボリュームを上げたくならないんですよ。音量が小さいソースに対しても、音像自体をしっかり捉えられているからそう思うんでしょうね。途中でピックを使ったストロークに変わった時の盛り上がりも、ちゃんと感じられましたし。

──普通、コーラスは固定マイクでその場で動かずに歌いますけど、今回のJ☆Dee'Zの場合は、ハモやウーアーコーラスを動きながら歌っているので、メンバーの動き通りにコーラスも左右に動くのが新鮮でした。

灰野:むちゃくちゃ面白いですよ! これは今までになかった感覚です。今回演奏した「Re:100万回の「I love you」」は、どのセクションでも必ずメンバーの誰かが歌っているというアレンジになっているんですね。なので、歌っているメンバーをスマホとかでスワイプして追いかけていけるのも楽しいですよね。実は今回、360°映像用に振り付けや動きを、新たに変更したんです。

──では、このH3-VRをどういう風に使うのがいいと思いますか?

灰野:とにかくその場の空気感がキレイに録れるので、特にアコースティックアレンジした楽曲の収録には向いていると思います。メンバーが円周上に等間隔に並んでプレイするのが基本ですけど、その際、エレアコやキーボードをリハスタのミキサーで混ぜて備え付けのスピーカーで鳴らすのではなくて、アンプを個々で用意して、各メンバーのそばで鳴らした方が、よりVRらしいサウンドが録れると思います。あと、YouTubeとかにアップする動画を一発撮りで収録するなら、VRオーディオは後から修正が効かないので、ひたすら練習あるのみですね。でも、うまく録れた時の感動は何物にも代え難いほど大きいので、ぜひ皆さんもH3-VRを使ってVR動画/オーディオの収録に挑戦してみてください。
 

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価格と主な仕様

ズーム「H3-VR」
オープンプライス(¥34,000前後)
 

【製品概要】
「H3-VR」 は、全方位の音を集音する「アンビソニックス方式」のVRマイクを搭載し、再生時に音像を回転させたり、楽器や人の声など、聴きたい音源がある特定方向のサウンドをステレオで再生できるレコーダーです。頭の向きに映像と音声が追従するヘッドトラッキング対応ビデオや、YouTubeの360º動画を作る際に最適で、最高24ビット/96kHzのハイレゾレコーディングに対応しています。
H3-VR
【スペック】
●記録メディア:microSD / microSDHC / microSDXC規格対応カード(Class 4以上) ●記録フォーマット:最高24ビット / 96kHz(アンビソニックスAフォーマット / Bフォーマット、ステレオ)、最高24ビット / 48kHz(バイノーラル) ●内蔵アンビソニックマイク:マッチング済み単一指向性コンデンサーマイク×4 ●最大入力音圧:120dB SPL ●出力:ラインアウト、ヘッドホン(共にステレオミニ) ●電源:単三乾電池、AC アダプター(スームAD-17)、USBバスパワー対応 ●外形寸法:76 (W)×78 (D)×123(H)mm ●重量:120g(本体のみ)

 
坂本昭人(サカモト アキヒト)
坂本昭人(サカモト アキヒト)
デジタルハリウッド大学助教/レコーディングエンジニア。ビクタースタジオ、Azabu West Studioを経て、デジタルハリウッド大学で教鞭を執りエンジニア活動も行なう。メジャーのJ-POPアーティストをはじめ、CM音楽やナレーションの録りやミックス、劇場版映画や企業動画のMA、赤坂ブリッツなどでのPAの他、坂本音響塾やVR音響の教育研究も手掛ける。

 
灰野一平 (ハイノ イッペイ)
灰野一平 (ハイノ イッペイ)
1996年にソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。その後、ディレクター/A&Rとして、本格派シンガーから国民的アイドルグループまで、様々なアーティストのレコーディングやボーカルディレクションを行なう。J☆Dee'Z以外にこれまで携わった主なアーティストは、中島美嘉、RSP、遊助、久保田利伸、JUJU、Little Glee Monster、欅坂46、土屋太鳳など多数。


 

J☆Dee'Z
J☆Dee'Z
(ジェイディーズ)

メンバー全員が2000年代生まれのボーカル&ダンスグループ。2014年9月24日メジャーデビュー。美しいハーモニーと、キレのあるダンスを両立させたパフォーマンスが高い評価を受けており、2018年3月には1stミニアルバム『あと1歩』をリリース。現在、TVアニメ「レイトン ミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~」のエンディングテーマとなった「明日も、世界は回るから。」と、LINE MUSICでリアルタイムランキング1位を飾った「Re:100万回の「I love you」」を収録した9枚目のシングルをリリース中。

◉最新シングル
「明日も、世界は回るから。
/Re:100万回の「I love you」」
ソニー・ミュージックレコーズ
SRCL-9973 11/21
 

 

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