オーディオファンだけでなく、音楽を作る人にも魅力的な製品

録音エンジニアが試す注目のUSB DAC LUXMAN DA-250

録音エンジニアが試す注目のUSB DAC LUXMAN DA-250

2016/02/10


環境の変化によって縮む音楽の作り手とリスナーの距離


最後に、間瀬氏自身がレコーディングした音源を再生した。アコースティックギター1本による至ってシンプルなサウンドだ。

間瀬:これはEarthworksのマイク1本で録音したもので、コンプもEQも何もかけていない192kHz/24bitの音源です。デモなんで適当にやっているんですが、その適当にやった感が出ている(笑)。 ギターがマイクから動いちゃっている部分も、そのまま表現されていますね。このようなオーディオ製品では、例えば弦や弓の擦れる音のようなあまり聴かれたくないノイズなどが目立って聴こえるのでは?と思っていましたが、そうではなく、スタジオで録った印象そのままで、スタジオで必要とされる音楽の要素として的確に表現されていますね。

間瀬&小嶋

小嶋:再生オーディオの場合、嫌な音も嫌な音のまま再生するという価値観と、何を再生しても気持ちよく聴かせる価値観と両方あります。それがハイレゾも含め環境が向上することによって、そのようなことを考えなくても、ただ純粋にいい音で再生して楽しむことが、実現できるようになってきたのかもしれません。

間瀬:そうですね、その表現が正しいのかもしれないですね。正直言って、そんな価値観の違いはどうでもいい部分じゃないですか(笑)。 もちろんこだわりは大事だけれど、重要なのはそこではないですね。環境が変化していくことによって、オーディオファンもすんなりと楽しめる、こちらもいい音をそのまま表現できる。お互いの音の意識や価値観がもっと近づいてくるように思えます。

野村:スタジオでは、ラジカセで再生されることを前提として制作するためのモニター環境が長らく続いていました。しかしながら、近年は優秀なオーディオ製品が以前に比べると低価格で登場してきたこと、またハイレゾの普及もあって、 いい音を耳にできるリスナーが大幅に増えました。このように環境が変化することによって、以前のように限定された音作りをしなくてもよくなり、音作りに対してあきらめなくてもよくなったかもしれません。リスナーが求める最高の音として、スタジオで再生される音というのがありますが、リスナーが求める音と、モニターとして求められる音の差異がだんだん無くなってきているようにも感じます。

ただ音がいいだけでなく、スタジオで求められる作業に十分耐えうる性能を持つDA-250


間瀬:僕のように、ハイエンドオーディオの音世界はスタジオが求める音とは全然違うものだと思っているエンジニアはたくさんいます。でも今回、聴かせていただいて、考えが変わりました。ただ音がいいだけじゃない、求められる作業に充分耐えうる性能をこの製品は持っていますね。これは普及して欲しい。各スタジオにこういった優れた製品を入れて欲しいですね。スタジオの人間だったら、聴いてもらえばそのことはすぐわかると思うし、僕もいつもの環境に持ち込んで鳴らしてみたいですよ。
そして、何も気にせず使い出したら一番で、こんなに便利なものはないですね。僕がPro Toolsに落とすときよくやるのは、アナログなどで一回、外に出して取り込んだりすることをわざわざやっていたりするのですが、これであれば余計なものを何も挟まずに作業できるので、マスター制作段階では最高の機材。出力もいろいろあって、音も素直に出てくれるし、ヘッドホンアンプの性能もいいし。今、マスタリング・スタジオが増えているので、そこで人気が出そうですね。みんないいボリューム・コントローラーを探していますからね。

野村:間瀬さんのようなプロのエンジニアに憧れているアマチュアの方たちにも、オススメできる製品でしょうか?

間瀬:いいと思いますよ。それこそ、打ち込みやEDMのような音楽であれば、PCとこれだけで完結してしまいますからね。制作段階から完成まで同じ環境で、かついい音でモニタリングできるのは何より最良なことですし。このようなオーディオ・インターフェイスとしての役割として考えるとDA-250は、オーディオのリスニング用としてだけでなく、よりよい音楽制作のための環境を充分に満足させる性能を持っていますね。
 

オーディオに求められる音、スタジオに求められる音。立場や考え方の違いにより、平行線だと思われてきたことが、実は今、非常に近づいていることがわかった今回の取材。「DA-250」のような製品が、両者の垣根を超えることによって、ますます、「音楽を聴くことを楽しむ」=「音楽を作ることを楽しむ」という理想的な世界を身近にしてくれるかもしれない。そういった意味でも、魅力的な製品といえるだろう。

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■LUXMAN「DA-250」

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価格:¥170,000(税別)
 

【主なスペック】
▼形式 :2チャンネルD/Aコンバーター
▼対応サンプリング周波数
・USB入力 (PCM) :32kHz、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHz (16、24、32bit)
・USB入力 (DSD) :2.82MHz、5.64MHz (1bit)
・OAX/OPT入力 :32kHz、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHz (16、20、24bit)
▼デジタル入力:USB1系統、COAX1系統、OPT2系統
▼アナログ入力:アンバランス1系統
▼デジタル出力:COAX1系統、OPT1系統
▼アナログ出力:アンバランス1系統、バランス1系統、ヘッドフォン1系統
▼ライン出力電圧/インピーダンス
・アンバランス:2.5V/300Ω
・バランス:2.5V/600Ω
▼ヘッドフォン出力:130mW + 130mW (600Ω)、400mW + 400mW (32Ω) 、 200mW + 200mW (16Ω)
▼周波数特性:2Hz~50kHz (+0 、-3.0dB)
▼全高調波歪率:0.001%
▼S/N比 (IHF-A) :118dB
▼電源電圧:AC100V (50 / 60Hz)
▼消費電力:19W (電気用品安全法の規定による)
▼外形寸法:364 (幅) ×81 (高さ) ×279 (奥行き) mm(奥行きは前面ノブ14mm、背面端子8mmを含む)
▼重量:5.4kg (本体) 、7.5kg (標準梱包)
▼付属品:リモコン (RD-24)、電源ケーブル (JPA-10000 : 極性マーク付)


メーカー詳細ページ
LUXMAN


■GENELEC「8030BPM」(機材協力:オタリテック)


価格:¥108,000(税込/1本)

 

【主なスペック】
▼入力フォーマット:アナログ
▼音圧レベル
・定格音圧(100 Hz ~ 3 kHz):≥ 100 dB SPL
・ミュージック・パワー:≥ 108 dB SPL @ 1m
▼ドライバー
・低域:130mm(5")
・高域:19mm(3/4")メタル・ドーム
▼クロスオーバー周波数:3kHz
▼周波数特性(フリーフィールド)
58 Hz ~ 20 kHz(± 2 dB)
▼アンプ出力 /ch
・低域:40W
・高域:40W
▼外形寸法(H × W × D):285 × 189 × 178 mm
(Iso-Pod使用時高さ:299mm)
▼重量:5.6 kg


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